電子契約のための電子署名管理規程とは?関連社内規程や定める際のポイント
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電子署名とは?
電子署名とは文書での契約書における印鑑による押印にあたるもので、契約に同意した契約者を明らかにすることや、契約書の内容を偽造・改ざんされないことなどを目的としています。
電子署名には印鑑による押印の代わりとなる電子証明書や、ある時点での契約の存在や改変が行われていないことを証明するタイムスタンプなどの技術が使われています。電子署名のこれらの機能によって契約に契約者本人が同意していることや、ある時点で契約が存在し、偽造や改ざんが行われていないことが証明可能です。
電子署名に関連する社内規程の例
電子署名に関連する社内規程の例は次のようなものです。
- 印章管理規程
- 電子署名管理規程
- 文書管理規程
印章管理規程
印章管理規程とは、押印処理を行う際のルールを定めた規定です。印章はわかりやすくいえばハンコのことで、ハンコを使って業務を行う際に、統一されたルールで業務を進めるために印章管理規程を定めます。
契約業務を行う際には、代表印・会社印・角印など多くのハンコを利用します。これらのハンコを扱う際のルールを決めておかなければ、無秩序に押印が行われ多くのトラブルが発生する原因になりかねません。
そのため印章管理規程を作成し、ハンコを管理・保管する方法、押印が認められるケースなどを明確に定める必要があります。電子署名と併用する際や移行する場合などには、この印象管理規定を見直す必要があります。
電子署名管理規程
電子署名管理規程は、押印に代わる電子データへの電子署名付与に関する運用ルールを定める規定です。
従来は印章管理規程で定められていたハンコの管理や押印方法が、電子署名に変わることで管理方法や運用方法が変わります。ハンコは物理的に存在するため、ハンコ自体の管理や保管の方法が定められていましたが、電子署名はデータとして存在するため、データの管理や運用の方法を定める必要があります。
電子署名管理規程で正しく電子署名を管理していなければ、万が一電子署名を使った電子契約に関して訴訟問題になった際、適切な電子署名の取り扱いをしていないことで不利な状況になる可能性もあるでしょう。
そのような事態にならないためにも、電子署名管理規程を設けて電子契約の運用ルールを遵守し、適切に電子署名を管理しなければなりません。
文書管理規程
文書管理規程は、業務で利用する文書の作成から管理、破棄などについて定める規定です。社内で作成する文書は当然として、取引先と取り交わした文書についてもルールを設定します。
従来はほぼすべての文書が紙で作成されていたため、紙の文書についての規定を定めていれば問題ありませんでした。しかし、電子契約が増えている昨今の事情に鑑みると、電子文書についての規定も文書管理規程には盛り込む必要があります。
データとして存在する文書の管理者とアクセス権限や管理の方法、保管する場所・期間や破棄するタイミングなど、紙の文書で行っていたことをデータ文書にも適用することが必要です。
今後ますます増加する電子文書に対応するために、なるべく早く電子文書に対応する文書管理規定にアップデートしましょう。
電子署名関連の社内規程を整備するべき理由
電子署名関連の社内規程を整備するべき理由には次のようなものがあります。
- 法令を遵守して業務を行うため
- 従業員の認識を統一するため
- 業務効率化を図るため
法令を遵守して業務を行うため
規定を整備することで、従業員は規定を守るだけで法令を遵守して業務ができます。
業務を行うにあたって、本来であればさまざまな法令を気にかけなければなりません。しかし、日常生活では触れることのない企業活動に特有の法令は、遵守しなければならないとわかっていてもすべてを正しく理解し、業務に落とし込むことは難しいです。
たとえば、保管を義務付けられた書類を勝手に処分してしまうことや、指示権限がない人に対して業務命令を出してしまうことなどはありがちな法令違反です。
そのため、規定さえ守っていれば法令が守れるような状況を作り、規定を遵守させることで無意識に法令を遵守しながら業務が行えるようになります。規定があることでこのような業務環境が整えられれば、従業員も安心して業務が行えるうえに、高いコンプライアンス意識のある企業として評価されるでしょう。
従業員の認識を統一するため
電子署名に関する規定を作成することで、電子契約に関する従業員の認識を統一できます。
個別で契約業務を行っているとどうしても各部門や部署で独自のルールや、業務の進め方がでてきてしまいます。それぞれの部署が独立して業務を行っていれば問題にならないケースもありますが、ほかの部署と関わったり新しい人が入ったりしたときには、明文化されていないルールや業務の進め方を伝えることは難しいでしょう。
不文律や暗黙の了解で進められている内容や業務の進め方も、必要なものは正しく規定に落とし込むことで、ルールを共有しやすくなり従業員同士の認識が統一しやすくなるでしょう。
業務効率化を図るため
規定が定められていれば、業務品質の標準化や業務効率化に役立ちます。
反対に規定がない状態で業務を進めると業務の進め方・使用するフォーマット・申請フローなど、それぞれがばらばらの状態で業務が進行するため、業務の統制が取れなくなり業務は非効率化します。
規定があれば規定にのっとり業務を遂行できるうえ、規定に反する業務は進行を止められるため、一定の水準を保ちつつ業務を効率化できるでしょう。業務担当が個別にフォーマットやフローを判断する手間もなくなるため、企業側だけではなく従業員の側にもメリットがあります。
電子署名管理規程を定める際のポイント
電子署名管理規程を定める際は、次のようなポイントがあります。
- 必要な項目を漏れなく記載する
- 官公庁のガイドラインをよく確認する
- 印章管理規程との違いを把握しておく
- 必要に応じてテンプレやサンプル文書を利用する
必要な項目を漏れなく記載する
電子署名管理規程には、法令遵守やトラブル回避のために次のような項目を漏れなく追加する必要があります。
- 規定の目的や定義(総則)
- 電子署名・証明書の管理責任者の定め
- 電子署名の登録・制定や改廃の手続き
- 利用する電子署名の種類
- 電子署名利用時の運用・稟議提出フロー
- 禁止事項
- 紛失や盗難、事故発生時の対応 など
これらの項目をベースとして、必要な項目を追加しながら現在の運用にマッチした電子署名管理規程を作成しましょう。
官公庁のガイドラインをよく確認する
電子署名管理規程を作成するときには、官公庁の電子契約に関連するガイドラインは丁寧に確認しておきましょう。官公庁から発表されるガイドラインは、わかりにくい法令をよりわかりやすく噛み砕いて説明してくれているため、ガイドラインをよく確認することで問題が発生しにくい電子署名管理規程がより便利に作成できます。
もちろん、関連の法令を確認することも忘れてはいけません。最終的に社労士や弁護士などに確認を依頼し、問題ないことを確認したうえで運用を開始しましょう。
印章管理規程との違いを把握しておく
電子署名管理規程は印章管理規程と似たものになりがちです。しかし、電子署名管理規程と印章管理規定には決定的な違いがあります。それは、物理的な印章が存在するかどうかです。印章管理規程では、物理的な印鑑の作成・管理や改印・廃印まで盛り込む必要があります。しかし、電子署名管理規程では、物理的な印鑑のようなものは存在しないため、その点で規定内容が大きく変わるため注意が必要です。
電子署名管理規程を作成する際に、内容が似通った印章管理規定をそのまま流用して作成することを検討する場合もあるでしょう。その際は、電子署名管理規程に特有のシステム利用に関する項目の追加や、印章不要な項目を削除することを忘れないようにしてください。
必要に応じてテンプレやサンプル文書を利用する
規定の文言や内容は企業によって異なりますが、規定に盛り込むべき必要な項目はそれぞれの企業で大きく変わらないケースが多いです。そのため、テンプレートやサンプル文書があれば、項目に関しては非常に便利に規定を作成できます。
Web上に規定のテンプレートや盛り込むべき項目を掲載しているところも多いため、信頼できる情報提供をしているところからダウンロードして規定を作りましょう。顧問弁護士や担当の社労士がいる場合は、彼らがテンプレートやサンプルの文書を持っていることもあるため一度相談してみることもよい選択肢です。
いちから規定を作ることは項目のヌケモレが発生したり、大きな労力がかかったりとデメリットが大きいです。できるだけ労力を減らして規定を作成できるようにテンプレやサンプル文書は上手に活用しましょう。
電子契約に関連する法律
電子契約に関する法律は多くあります。社内規定を考える際に重要な、代表的な次の2つの法律について簡単に解説します。
- 電子署名及び認証業務に関する法律(電子署名法)
- 電子帳簿保存法
より多くの電子契約に関する法律を知りたい方は、次の記事を参考にしてください。
電子署名及び認証業務に関する法律(電子署名法)
いわゆる電子署名及び認証業務に関する法律は一般に「電子署名法」といわれる法律で、電子署名そのものや、電子署名が付与された契約データの法的な扱いなどを定めた法律です。
近年流行している電子データで行う契約、いわゆる電子契約では押印処理が不可能です。電子印鑑で押印のようなものを付与しても、簡単に複製ができるためなりすましや改ざんの対策としては十分ではありません。
そこで登場したものが電子署名です。あらかじめ身分を証明する電子証明書を取得し、電子証明書とタイムスタンプを組み合わせて電子署名とすることで、紙の押印のような役割を果たします。
この一連の電子署名の法的な取り扱いや役割について定めた法律が電子署名法です。
電子帳簿保存法
電子帳簿保存法は電帳法ともよばれ、国税に関連する帳簿や書類の電子データ保存や、その取り扱いについて定めた法律です。電帳法は2022年に改正され、データ保存された書類の扱いが大きく変更されました。この改正により、2024年1月より原則電子取引のデータをデータのまま保存することの義務化や、タイムスタンプ要件や検索要件の緩和などが行われています。
電帳法の改正により、これまで紙で長期間保存しなければならず負担になっていた書類業務を効率化できる一方で、電子データの保存対応に追われる事業者も多いです。データ保存に対応するための宥恕期間が終了していることもあり、改正電帳法への対応は急務であるため、まだ対応できていない事業者は早急に対応しましょう。
電子署名は社内規程で管理して適切に運用しよう
電子署名を利用する際には電子署名法や電帳法など、関連する法令に気をつけながら運用しなければなりません。従業員が個別に法令を意識しながら業務を行うことは現実的ではないため、規定を作成することで運用方法や電子署名に対する認識の統一、業務効率化を図りましょう。
電子署名管理規程を定めるときには次のような点に注意が必要です。
- 必要な項目を漏れなく記載する
- 官公庁のガイドラインをよく確認する
- 印章管理規程との違いを把握しておく
- 必要に応じてテンプレやサンプル文書を利用する
これらの注意点に気をつけながら電子署名管理規程を作成することで、最終的な弁護士・社労士のチェックでの手戻りが少ない規定を作成できるでしょう。
電子署名は社内規程で管理をすることで適切に運用できます。正しい規定のもと電子署名を適切に利用し、契約業務の効率化を図りましょう。
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