労働派遣契約は電子化が可能!メリットや注意点
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- 労働派遣契約電子化の概要
- 2021年1月1日より電子化が解禁
- 労働派遣契約が電子化可能になった背景
- 電子化に関連する法令
- 派遣契約を電子化するメリット
- 契約書作成の手間やコストを削減できる
- 契約書管理が簡便になる
- リモートワークでも対応できる
- セキュリティリスクが小さくなる
- 労働派遣契約を電子化するときの注意点
- 取引先も電子契約の利用に同意しなければならない
- 電子化には労働者の同意や確認が必要な場合がある
- 通知書の内容自体はこれまで同様の記載が必要
- 電子契約システムによる労働派遣契約電子化の手順
- 契約業務の課題や導入の目的を明確にする
- 課題を解決できる電子契約システムを比較する
- 社内での導入検討を進める
- システム導入によるフローの整備
- 社内外への電子契約システム導入の周知
- 労働派遣契約は電子化して効率化を図ろう
労働派遣契約電子化の概要
労働派遣契約とは、派遣元である労働者の派遣会社が、派遣先である企業に労働者を派遣する際に締結しなければならない契約です。2021年1月に電子化が解禁され、多くの企業が労働者の派遣個別契約を書面による契約から電子契約に切り替えています。
電子化の背景には派遣業務の膨大な手間の軽減や、企業のデジタル化への対応などさまざまな原因があります。
2021年1月1日より電子化が解禁
2021年1月1日より、労働派遣契約の電子化が認められました。
従来の労働派遣契約では、いわゆる労働派遣法の第二十一条3項と第二十六条※により、労働者を派遣するときの契約内容については書面で残さなければならないと定められていました。よって、労働者を派遣する際に行う派遣契約は紙ベースの契約書で締結することが一般的で、派遣元・派遣先・労働者に大きな負担がかかるものでした。
しかし、労働派遣法や民間企業の文書の電磁記録について定めたe-文書省令の改正により、労働派遣契約も電子化ができるようになりました。
※参考:e-Gov法令検索「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律施行規則(昭和六十一年労働省令第二十号)」(2024年9月30日参照)
労働派遣契約が電子化可能になった背景
労働派遣契約の電子化が可能になった背景として、企業と労働者の負担軽減やデジタル化促進があります。労働派遣契約が電子化されるまでは、次のような負担が企業と労働者それぞれにかかっていました。
- 派遣元企業は書面作成の紙代やインク代、郵送費などのコストがかかる
- 派遣先では労働者の数だけ書面を保管しなければならず、広い保管スペースを必要とする
- 派遣先・派遣元企業それぞれで書面対応が必要でリモートワークに対応できない
- 労働者は書面契約にかかる長いリードタイムを待たなければならない
このような企業と労働者それぞれにかかる負担の軽減を目的として、電子化が解禁されました。
電子化に関連する法令
労働派遣契約の電子化に関連する法令として、次のようなものがあります。契約を電子化する場合にはこれらの法令を遵守して電子化を行いましょう。
法令 | 正式名称 | 概要 |
---|---|---|
労働派遣法 | 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律 | 労働者の権利や雇用の安定その他福祉などを守ることを目的とした法律 |
e-文書法 | 次の2つの法律の総称 ・民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律 ・民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律 |
さまざまな法律によって保管を義務付けられている書類について、書面ではなく電子化したデータで保存することについて定めた法律 |
e-文書省令 | 各省庁の所管する法令の規定に基づく民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する省令 | e-文書法に基づいて、各省庁所管の書類について電子保存の範囲や要件を定めた法律 |
派遣契約を電子化するメリット
派遣契約を電子化するメリットには次のようなものがあります。
- 契約書作成の手間やコストを削減できる
- 契約書管理が簡便になる
- リモートワークでも対応できる
- セキュリティリスクが小さくなる
契約書作成の手間やコストを削減できる
契約書作成の手間やコストを削減できることは、派遣契約を電子化する大きなメリットです。
派遣契約書の締結期間の定めが短期だと契約の更新が何度も必要になるため、契約書作成の手間やコストも大きくかかるようになります。また、書面による契約の場合、紙で契約書を用意するための費用や、郵送にかかる費用も大きいです。
しかし、労働派遣契約を電子化すれば契約書の複製が簡単になり契約書作成の手間が削減できるうえに、契約書を郵送する手間も費用も不要です。契約業務を効率化して空いた時間を他の業務に使えるため、メリットが大きいと感じられるでしょう。
契約書管理が簡便になる
契約書を電子化すると管理も簡便になります。紙の契約書は管理のスペースを多く取るうえに検索性が悪く、誰の書類がどこに保存されているかを探すだけでも大きな労力がかかります。必要な書類を探すだけなのに余計な時間がかかり、業務効率の低下を招いている企業も多いでしょう。
一方、契約書を電子化すれば管理スペースは不要になるうえ、検索性が非常に高いです。必要な書類を一覧で表示したり、閲覧したい書類をすぐに閲覧できたりするため、管理が簡便になり業務効率化が進みます。
業務効率化とともに紙の契約書管理に利用していたスペースの費用も削減できるため、電子化のメリットは大きいといえます。
リモートワークでも対応できる
契約書を紙の書面から電子化することで、リモートワークにも対応できるようになります。
従来の紙による契約書業務では、派遣元・派遣先の企業、派遣される労働者がそれぞれ紙の契約書を作成したり受領したりする必要があったため、書類業務のためだけにオフィスに出向く手間がありました。
しかし、書面を電子化することで、従業員も派遣される労働者も自宅にいながら書類の送付や受領ができるため、それぞれがリモートワークで対応できます。書面による作業が必要な部署とそうではない部署で出社格差があった企業も格差が是正されるため、労働派遣契約書の電子化により従業員間の不公平感も解消されるでしょう。
セキュリティリスクが小さくなる
電子化された契約書なら、紙の契約書の課題であった持ち出しや不正なコピーなどのセキュリティリスクを小さくします。紙の契約書は、契約書を持ち出した人やコピーした人の履歴を追うことが難しく、契約書に対して誰がどのようなことを行ったか把握できません。また、契約書をオフィスから外部に持ち出すことにより、常に紛失や盗難のリスクがあります。
電子化された契約書であれば、閲覧や修正などの履歴が追えるうえ、印刷やダウンロードに制限もかけられるシステムもあるため、紙の契約書の懸念であったリスクを最小限にできます。紙の契約書の紛失や盗難のリスクに悩んでいる方は、契約書の電子化で悩みを解決できるでしょう。
労働派遣契約を電子化するときの注意点
労働派遣契約を電子化するときには、次のような注意点があります。
- 取引先も電子契約の利用に同意しなければならない
- 電子化には労働者の同意や確認が必要な場合がある
- 通知書の内容自体はこれまで同様の記載が必要
取引先も電子契約の利用に同意しなければならない
契約書を電子化する場合は、取引先も電子契約の利用に同意していなければなりません。派遣元・派遣先企業のどちらかが電子契約を導入したとしても、契約の相手方が電子契約の導入に同意していない場合、紙の契約書による契約締結が必要です。
電子契約にはメリットが多いものの、従来の紙による契約が必要と勘違いしていたり、新しいシステム導入に不安を覚えていたりすると、電子契約に踏み切れないケースもあります。このような企業とは電子契約が難しく、紙と電子契約のそれぞれを使い分けながら労働派遣契約を締結していかなければなりません。
相手方と交渉して電子契約を利用してもらうことも1つの手段ですが、交渉の手間や時間を惜しんで、紙の契約書をそのまま利用する企業も少なくないでしょう。いずれにせよ、契約相手の企業の同意なしに電子契約は導入できないため、電子契約の導入時には契約相手の同意を得ながら契約書の電子化を進めましょう。
電子化には労働者の同意や確認が必要な場合がある
契約書の電子化には、相手方企業だけではなく労働者の同意や確認が必要な場合もあります。
労働派遣契約自体は派遣元と派遣先の企業で締結されるものです。しかし、労働条件を派遣される労働者に通知する労働条件通知書は、電子化の際に労働者の希望と同意が必要です。さらに、労働者が労働条件通知書を受け取り、内容を確認したことを確実に把握するため、労働者から条件に同意した旨の返信も必ず受け取らなければなりません。
これらの確認をせずに労働者の同意なく通知書を電子化した場合、使用者としての義務を怠っていると判断されてしまう可能性もあるため注意しましょう。
通知書の内容自体はこれまで同様の記載が必要
契約書や通知書を電子化しても、これまでの記載内容に変化がないことにも注意が必要です。契約書の電子化は紙の契約書を電子化できるだけであり、記載の内容は紙の契約書に記載していたものと変わりません。労働派遣法にのっとり、業務内容や賃金、契約期間やその他就業条件などを契約書や通知書に記載する必要があります。
契約書の電子化は書類作成のフォーマットが紙から電子データに変更になるだけで、記載する基本的な内容自体にはとくに変更がありません。電子化しても労働派遣法を守り、紙の契約書と同様の内容を記載する必要があると覚えておきましょう。
電子契約システムによる労働派遣契約電子化の手順
電子契約システムによる労働派遣契約を電子化するためには、次の手順を踏む必要があります。
- 契約業務の課題や導入の目的を明確にする
- 課題を解決できる電子契約システムを比較する
- 社内での導入検討を進める
- システム導入によるフローの整備
- 社内外への電子契約システム導入の周知
契約業務の課題や導入の目的を明確にする
電子契約システムを導入する際は、最初に導入時の課題や導入する目的を明確にしなければなりません。電子契約システムは非常に多く存在し、課題や目的が絞れていなければどのようなシステムを導入すべきか決定できないためです。
労働派遣契約業務に携わる多くの人の意見を集約し、広く課題を集めましょう。課題が集まったら、集まった課題の中でボトルネックとなっているものをいくつかピックアップして、その課題解決を目的とすれば、導入の準備は完了です。
課題を解決できる電子契約システムを比較する
システム導入により解決したい課題と目的を明確にできたら、課題を解決できる電子契約システムを比較します。
契約書の作成と郵送に時間とコストがかかっている場合、テンプレートが充実したシステムや共有機能が強いシステムが向いています。上長の外出が多く承認が滞りがちなことや、リモートワークに対応できないことに不満が多いなら、システム上で申請・承認作業ができるシステムを選ぶべきです。
現在抱えている課題によって採用するべきシステムが異なるため、課題を明確にしたうえで課題解決に役立つシステムを選定しましょう。
社内での導入検討を進める
導入するシステムの比較と同時に、社内での導入検討も進めておくと効率的にシステム導入を進められます。現在抱えている課題とそれを解決できるシステムを社内で検討し、コストや効果のバランスも考えつつ社内承認を通せるようなシステムを選定しなければなりません。
なお、コスト面で導入が難しい場合、現在契約業務にかかっているコストと比較して検討することが効果的です。電子契約システムのメリットには紙代や印刷代、郵送代や収入印紙代などの直接的コストを削減するメリットがあり、導入時にコストがかかるとしても契約業務全体のコストは小さくなることもあるためです。
直接的なコストメリットに加えて、契約業務の効率化による残業代の削減や管理スペースにかかる費用の削減など、間接的なコストメリットも考慮して社内での導入検討を進めましょう。
システム導入によるフローの整備
システムの導入が決定したらフローの整備が必要です。
申請から承認のフローを自由に設定できるだけではなく、1人の申請者に対して複数の承認ルートを構築できるシステムもあります。既存の紙の契約書による回覧ルートでは実現しにくかった複数人による承認も、システムの導入によって実現可能になるケースも多いです。
また、労働派遣契約は通常の企業間の契約と異なり、派遣労働者への回覧も必要なケースがあります。社内と契約先企業だけではなく、労働者にも回覧することをふまえてフローを今一度整備しましょう。
社内外への電子契約システム導入の周知
フローの整備も完了し、システム導入の準備が整った段階で社内外に電子契約システムの導入と労働派遣契約、それに伴う必要書類の電子化について周知します。取引先企業と電子化について調整し、労働者にも今後は電子化した契約書で契約を進めたい旨を説明しなければなりません。
取引先企業や労働者から同意が得られない場合には、紙による個別対応が必要なケースもあるため、すべての契約において電子化ができなかった場合も想定して、移行期間中は紙による業務フローも残しておきましょう。
これらの導入手順を問題なくクリアすることで、労働派遣契約の電子化は完了します。あとは、運用する中でより改善できるポイントを見つけつつさらなる効率化を目指しましょう。
労働派遣契約は電子化して効率化を図ろう
派遣元・派遣先・労働者に多くの負担があった紙による契約書から、電子化された契約書に変更することで労働派遣業務は大きく効率化が図れます。契約の電子化によるメリットは効率化以外にもコスト削減やセキュリティリスクの軽減があります。
ただし、取引先企業や派遣労働者の同意が必要な点や、労働派遣契約書や通知書には紙の契約書を運用時と同様の記載が必要な点など、注意点も多いため気をつけましょう。
本記事で紹介した適切な手順を踏んで電子化を行えば問題なく労働派遣契約の電子化は可能です。労働派遣契約の電子化を成功させて、契約業務を効率化しましょう。
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