電子領収書とは?紙から切り替える際のポイントや注意点
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電子領収書とは
電子領収書とは、デジタル上で扱われる領収書全般を指します。紙から電子データへと変換した領収書や、PDFで交付された領収書、ECサイトからダウンロードした領収書などが該当します。
本来、領収書は紙での保管が義務付けられていました。しかし、インターネットの普及やデジタル技術の進化により、現在では電子データでの保管が認められています。電子領収書を電子データとして保管することで、ペーパーレス化やコスト削減につながります。
電子領収書を発行するメリット
電子領収書を発行するメリットは次のとおりです。
- 印紙税などのコスト削減につながる
- 領収書の情報を即座に取り出せる
- 紙の保管スペースを削減できる
- DX化やデジタル化のきっかけが生まれる
印紙税などのコスト削減につながる
本来、紙の領収書を発行する際は、一定の取引金額を超えると収入印紙が必要ですが、電子領収書であれば不要になります。そのため、電子領収書の発行により印紙税を削減可能なことがメリットです。
印紙税は取引金額により200円から2,000円までの幅があります。領収書一枚単位で見ると削減できる金額は少ないものの、日々の取引で大量の書類を処理しなければならない場合、けっして軽視はできません。
また、紙の印刷代や封筒代、発送費を削減できるのもメリットです。領収書管理にかかる経費を最小限に抑えることで、財務体質の健全化やコア業務に対する予算拡充につながります。
領収書の情報を即座に取り出せる
領収書がデータ化されると、必要な情報を即座に取り出せることもメリットです。
たとえば、電子領収書を扱う場合は専用のシステムを導入するのが一般的です。すると、情報の検索性が向上したり、スマートフォンで必要な情報にアクセスできたりと、利便性が高まります。また、内部監査や税務監査で特定の領収書を提出しなければならない場合でも、即座に対応できます。
紙の保管スペースを削減できる
ペーパーレス化を実現できれば、紙の保管スペースがほとんどいりません。そのため、余ったスペースを有効活用できます。仮にオフィス縮小の選択肢を採用するなら、固定費の削減や機能性向上にもつながります。あるいはデッドスペースをフリーアドレスやコミュニケーションスペース、個人用ロッカーとして活用するのも一案です。
DX化やデジタル化のきっかけが生まれる
領収書を電子化するだけでDXやデジタル化を実現できるわけではありませんが、きっかけが生まれるのは確かです。電子領収書の導入に伴い、旧システムを大幅に刷新するのも良いでしょう。
徐々にDX化やデジタル化を進めることで、業務プロセスの効率化や業務負荷の軽減といった効果が期待できます。また、システムの刷新によってデータのやり取りがスムーズになれば、部門間連携の促進にも効果的です。
電子領収書を発行・管理する際の注意点
電子領収書にはさまざまなメリットがある反面、次のような注意点も存在します。
- 普段から利用している印鑑では対応できない
- 要件を満たさないと罰則が課されることも
普段から利用している印鑑では対応できない
電子領収書は書面とは根本的な形式が異なるため、普段から利用している印鑑は利用できません。電子領収書を利用する際は、電子印鑑や電子署名が必要です。
そのため、電子印鑑を作成したり電子署名に必要な仕組みを整えたりと、準備に手間やコストが発生します。電子署名に必要な仕組みは電子契約システムに搭載されていますが、導入コストや運用コストが大きな負担となっては本末転倒です。
電子領収書を発行・管理する際は、課題や要件を明確にしたうえで、手間やコストがどの程度増えるのかを検討しましょう。ただし、新たなシステムが定着すれば、業務効率化やコスト削減につながるケースもあるため、中長期的な視点で考えることが大切です。
要件を満たさないと罰則が課されることも
電子領収書を保管する際は、電子帳簿保存法の要件を満たす必要がありますが、管理方法次第では罰則が課される恐れがあります。電子帳簿保存法は2022年に改正され、罰則規定が強化されているので注意が必要です。
電子帳簿保存法に対応するには、保存したデータに対する検索性の付与や、ディスプレイやプリンターといった見読可能装置の備え付けなどの対策が欠かせません。そのため、改正電子帳簿保存法の要点をよく理解したうえで、適切な対応を心がけましょう。
紙から電子領収書へと切り替える際のポイント
紙から電子領収書へと切り替える場合、社内体制やシステムの大がかりな変更を余儀なくされるケースも考えられます。そのため、運用時のポイントを押さえて、早めに対策を行うことが大切です。
業務フロー変更を見据えて社内体制を整備する
従来、紙で行っていた業務をデジタル化すると業務フローが大きく変化します。たとえば、書面のスキャンやPDF化、システムへのデータ入力といった業務が増える一方で、手書きでの書類作成やアナログな承認作業などが不要になることが想定されます。
そのため、業務フローを見直したうえで適切な社内体制を構築しましょう。業務フローを見直すには、現状業務の棚卸しを実施します。業務の棚卸しにあたり、ボトルネックを特定して無駄のある業務を改善することも重要です。
データの検索性や出力環境を確保する
電子領収書を適切に管理するには、データの検索性や出力環境を確保しなければなりません。
データの検索性が向上すれば、資料収集作業の効率性が高まるほか、税務署から特定資料の提示を求められた場合でも速やかに対応できます。また、税務署の担当者が必要な情報を即座に参照できるよう、ディスプレイやプリンターなどを用意することも大切です。
改ざん防止につながる対策を考える
電子領収書は、情報へのアクセスが容易な点から、データを改ざんされるリスクを伴います。そのため、データを保存する際の改ざん防止策が不可欠です。電子帳簿保存法では、データの改ざんを防ぐ対策や取り組みを、「真実性の確保」と表現しています。
具体的な対策方法としては、データを送受信する際に利用されるタイムスタンプがあげられます。タイムスタンプが付与された時刻に書類が存在していた事実を証明できるのが利点です。また、データを修正する際、変更履歴が残る、あるいは訂正や削除を制限できるシステムを導入する方法もあります。
電子領収書の発行方法
電子領収書を発行する際はさまざまな手段を検討できますが、経費精算や帳簿更新の機会が多い場合は電子契約システムを導入するのがおすすめです。
電子契約システムとは、インターネット上で契約を締結できるツールです。電子署名や電子証明書、タイムスタンプなど、電子契約に必要な機能がそろっています。
また、契約管理以外にも電子領収書の発行や一元管理、外部システムとの連携に対応した製品も存在します。そのため、領収書管理の効率化やデータの有効活用など、さまざまなメリットが期待できるでしょう。
電子契約システムの選び方やおすすめ製品に関しては、こちらの記事で詳しく解説しています。
電子領収書を効率的に管理できる運用体制を築こう
電子領収書を仕組みを導入すると、コスト削減や検索性の向上など、さまざまなメリットが生まれます。また、企業で扱う数多くの帳票類のなかで、比較的電子化に対応しやすいのも特徴です。
そのため、DX化やデジタル化のきっかけとして、領収書の電子化を進めるのも良いでしょう。スモールスタートで導入できるからこそ失敗のリスクも抑えられます。そのためにも、電子契約システムの導入や運用体制の整備など、早い段階から準備を行うのがおすすめです。