IT資産管理ツールの市場規模は?拡大の背景とAI活用を視野に入れる今後の展開

近年、IT資産管理の重要性が増しています。
IT資産管理とは、企業内で利用されるコンピューターなどのハードウェア、アプリケーションなどのソフトウェア、周辺機器やネットワークインフラを含めたIT機器を資産として管理することをいいます。
なぜIT資産管理が注目されているのか、今後はどのような展開を見せるのかを解説していきます。
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IT資産管理ツールに求められる要素の変化
IT資産管理ツールが人気になった要因として、刻一刻と変化するIT機器の進化があり、それに起因する時代背景がツールの変化を要求していることが挙げられます。
IT資産管理ツールとは
2000年代初頭、企業における情報処理の重要性が高まり、効率化の追求が行われるようになると、それまで部署やチームで共有していたコンピューターは「ひとり1台」従業員個々に割り当てられるようになりました。
このため端末数が増加し、IT資産管理とともにPCライフサイクル管理やヘルプデスクの効率化が求められるようになり、IT資産管理ツールが登場し始めたのです。
この時点で重視されていたのは、ハードウェア/ソフトウェア情報の自動収集機能、端末のリモートコントロールなどです。
内部統制強化
2005年以降、個人情報保護法や日本版SOX法などが制定され、個人情報の漏えい防止とともに内部統制強化が企業に求められるようになります。
これをきっかけに、IT資産管理ツールには個々のPC操作ログの取得、持ち出し制限制御などの機能が実装されるようになりました。
内部統制を強化する方法として、ワークフローシステムの導入も挙げられます。

労務管理強化
2009年以降になるとリーマンショックによる不況の波が日本にも押し寄せてきます。
これによって多くの企業がコスト削減を迫られ、IT資産管理にも大きな影響をおよぼしました。
具体的にはIT資産に関わるコスト削減とともに、従業員の残業抑制に伴う労務管理が必須となり、操作ログを可視化することによってムダな残業を減らす、有償アプリケーションの稼働状況を分析してムダな資産を減らす方向にシフトします。
次の記事では、労務管理について詳しく解説しています。

ライセンス違反対策
ソフトウェアメーカーによる本格的なライセンス監査も開始され、SAM(ソフトウェア資産管理)が重視されるようになります。
IT資産管理ツールでもSAMに高度な対応を求められるようになり、ソフトウェア有償・無償棚卸機能や台帳作成機能などが実装されるようになりました。
内部不正対策
2014年には内部犯行による大規模情報流出事件が発生し、それまで不正行為の抑止効果が期待されていた操作ログの概念に変化が生じるとともに、スマートデバイスの持ち出し制御があらめて見直されます。
つまり、これまで制御が甘かったスマートデバイスの扱いを強化すると同時に、何かあったときのために操作ログを収集するのではなく、不正行為などを防止するために操作ログを活用する方向へとシフトされていくことになったのです。
IT資産管理ツールのエンドポイントマネジメント化
IT資産管理ツールは「IT資産管理」「ソフトウェア資産管理」「リモートコントロール」「ファイル配布」など、端末に係る情報取得と制御に重点をおいて進化してきました。
しかし、時代とともに「不正PC遮断」「アプリケーションID監査」「メール管理」「サーバー監視」「デバイス制御」「Webアクセス管理」「操作ログ管理」などの、内部不正対策が求められるようになりました。
外部脅威対策
さらに内部不正対策を行ううえで「Webアクセスを含むネットワーク管理」「マルウェア対策」を実践することがIT資産管理ツールに求めらています。
結果的にサイバー攻撃などの外部脅威への対策も必須となり、ますますエンドポイントマネジメントツールとしての性格が強くなっているのです。
次の記事では、マルウェア対策について詳しく解説しています。

ツールの統合と全体の最適化
現状では、包括的に機能を統合したIT資産管理ツールはそれほど多くはなく、さまざまなツールが用途に応じて個別に適用されている状態だといえるでしょう。
上述したようにIT資産管理の概念は大きく変化してきており、個別ツールの連携が取れていない場合、それぞれを活用してセキュリティを含む目的を達成することが難しくなります。
今後はバラバラに運用されているツールの統合をはかり、広い意味でのIT資産管理に最適化させていく環境整備が必要になります。
IT資産管理ツールの市場規模
PCやスマートデバイスの進化が著しく、それらの活用方法が多様化する現代では、一般的にもIT資産管理ツールに対する概念が変化しているといえます。
2013年に矢野経済研究所が発表したプレスリリースでは、2013年度における「IT資産管理ソリューション」の市場規模は約311億円と予測されていました。
しかし、2017年4月に同様の調査が行われた際には、このカテゴリーが「クライアント運用管理ツール」に変更されており、IT資産管理の概念が、広くエンドポイントとなるクライアント全般を管理する認識になっていることがわかります。
クライアント運用管理ツールの市場規模
それでは3年を経て、クライアント運用管理ツールの市場規模はどの程度成長しているのでしょうか。
下図は、2016年度までの実績および、2017年から2020年までの予測をもとに、クライアント運用管理ツールの市場規模をグラフ化したものです。
出典:矢野経済研究所 セキュリティウォッチ〜クライアント運用管理編
カテゴリー名変更が行われたため、2013年までの調査結果とは関連性がないようにも思えますが、2015年度実績が約396億円と、当時の予測とほぼ一致しており、2016年度には約427億円規模と、順調に拡大しているのがわかります。
今後の予測でも年8%前後での成長が見込まれており、堅調に市場規模が拡大する予測です。
IoT/ハイブリッドクラウドが拡大の要因
すでに解説したように、市場拡大の要因のひとつにはIoT進展による管理デバイスの多様化と急増があり、これに伴う内部不正要因や外部脅威リスクを排除したい、という企業の思惑が大きく影響していると思われます。
それに関連し、クラウド環境でツールを提供するサービスが大きく普及したことで、部署単位、チーム単位でそれらを独自に導入するケースも増加しており、ぜい弱性をついたセキュリティリスクを回避するため、これらを正確に把握・管理する必要性が高まってきていることも考えられます。
IT資産管理ツールの今後の展開
今後も堅調な市場拡大が見込まれるIT資産管理ツールですが、これまでも時代の要求に応じて進化を遂げてきた歴史があり、その時々に応じた柔軟な対応が続けられていくことが予想されます。
現時点でIT資産管理ツールに求められ、実装と進化が予測されている機能を紹介します。
サイバーセキュリティ対策
エンドポイントマネジメントツールとして、統合的な機能を実装しつつあるIT資産管理ツールでは、現在もっとも注目されているのが外部脅威対策、サイバーセキュリティ対策です。
これは、企業が今後3年間で強化していきたいと考える、IT投資項目アンケートでも一目瞭然です。
出典:矢野経済研究所 セキュリティウォッチ〜クライアント運用管理編
これに加え、従来はサーバを標的とすることの多かったサイバー攻撃が、ユーザーデバイスを標的としたものにシフトしつつあることが挙げられます。
こうしたサイバー攻撃は年々巧妙化しており、一般的なセキュリティソフトウェアでは防御できないケースが増加しています。
次の記事では、サイバーセキュリティ対策について詳しく解説しています。

AIの活用へ
ベンダーはサイバーセキュリティ対策にAIの活用を視野にいれ、開発を進めています。
その活用方法も「攻撃を早期発見して被害を最少化する」方向と「攻撃そのものを防止する」方向に別れており、いずれも自己学習型の異常検知技術が適用されています。
これらがさらなる市場拡大につながることも予測されており、完成度次第では成長率の大幅アップも期待できるでしょう。
また、IT資産管理ツール本来の機能である、IT資産最適化にもAIの活用が検討されており、開発が進められています。
おすすめIT資産管理ツール・サービス7選
おすすめのIT資産管理ツール・サービスを紹介します。
POLキッティングサービス - ペネトレイト・オブ・リミット株式会社
- 役職や業務内容に応じて、柔軟な個別設定が可能
- 社内に作業場所は確保不要、届いた端末をすぐに利用できる
- 3,000台規模の作業実績を持つ、信頼性の高いサービス
POLキッティングサービスは、安全性と利便性の高さが特徴のモバイル端末専用の設定代行サービスです。
キッティング作業は専用スペースで行なわれ、希望する設定が完了した状態で端末は納品されます。ベテランの作業員が設定を行うため、設定ミスが原因の情報漏えいをはじめとした、さまざまなリスクを最低限に抑えられます。
e-Survey+ - 株式会社ニッポンダイナミックシステムズ
e-Survey+は、コストシミュレーションなどの企画・調達から、導入・展開、ソフトウェアの利用許可の有無確認やライセンス違反の確認などの運用・保守、資産の撤去・廃棄まで、IT資産のライフサイクルのすべてを徹底的にサポートするIT資産管理ツールです。
社内にある個人情報や、サーバまたはPCで保有している情報資産を分類分けして管理することにより、セキュリティレベルを高め、情報資産の価値、リスクグループ管理、資産の持ち出し状況を把握します。
そして正確な情報資産台帳によりリスクアセスメントの精度を向上させます。
部門ごとで管理者や、情報の変更を行わず管理情報の閲覧のみをさせたい使用者へ権限を与えることでシステム管理者の負荷を軽減します。
iTAssetEye - NTTテクノクロス株式会社
- 複数のインベントリ収集ツールと連携可能
- ITリスクを19種類のアラートで通知
- AIを活用した台帳作成
iTAssetEyeは、内部統制と業務効率化を実現するIT資産管理ツールです。今まで管理担当者が行っていた未知のソフトウェア名の検索や管理を、AIがサポートするので管理担当者の負担を大幅に軽減します。
また、台帳情報とインベントリ情報を突き合わせ、是正すべきIT資産リスクを管理者や利用者に通知する機能を搭載。「ライセンス超過利用」や「保守期限切れ」など、19種類のアラートで常に正しい状態でIT資産を管理し続けられます。
Freshservice - OrangeOne株式会社
- 資産のライフサイクルを画面1つでトラッキング
- 一目で全イベントのタイムラインがわかる
- 資産の更新や購入の最新状況を把握
Freshserviceは、ITILに準拠したサービスデスクをクラウドでまとめて簡素化できるIT資産管理ツールです。
調達・保守・減価償却・廃棄など、あらゆる段階から組織内のすべての資産ステータスを把握し、資産ライフサイクル管理で正確な情報を取得できます。アクティビティログで資産に関する全イベントを表示し、過去から現在に至るまでの使用状況をトラッキング可能です。IT資産の今後発生する保証またはライセンスの有効期限を確実に把握し、手軽に事前の更新と購入を行えます。
Assetment Neo - 株式会社アセットメント
Assetment Neoは、IT機器の資産管理に必要な機能と、バーコードやRFIDを活用して棚卸し業務を1/5まで効率化するIT資産管理ツールです。
購入時の未納品一覧、キッティング未対応一覧、在庫一覧、移動・貸出時の申請・承認処理、履歴/期限管理のほか、部門ごとの月ごと利用料金の自動計算に対応し、バーコードやRFID、スマートフォンを活用した棚卸しで大幅な業務効率向上を実現し、IT資産の現物管理を強力にサポートします。
AssetViewなどのソフトウェアと連携することにより、さらに効率的なIT資産管理も可能となります。
Windows10入替ソリューション - ヤマトシステム開発株式会社 ITオペレーティングカンパニー(PCLC)
IT資産運用最適化サービスは、ライフサイクルマネジメントにおける「企画・設計」「導入」「運用」「撤去・更新」の4つの各フェーズを状況・要望に応じてトータルでご提供するアウトソーシングサービスです。
「機器管理」「ライセンス管理」「契約管理」など、ライフサイクルにかかわる情報を一元管理できるクラウドサービス「PCLC-Web」を活用し、顧客とキッティングセンター間の「キッティング作業依頼」「作業進捗報告」を行います。
そのため、機器の動きと情報(ライセンス、所在情報)が自動連携され、差異が発生しがちな各種台帳の更新漏れを未然に防ぎます。
Ivanti - 株式会社ジャパンコンピューターサービス
- いかなる状況でも社内PCと同じ環境で端末を管理
- 社外でもセキュアな環境で安心して端末が利用可能に
- ソフトウェアやパッチの配信にかかる工数を大幅削減
Ivantiは、IT資産やセキュリティ管理の負担を最小限にするIT資産管理ツールです。散在する国内や海外拠点のIT資産情報を、総合的に管理できます。
導入後はインターネットに接続してさえいれば、あらゆる端末環境で安心して利用可能です。独自の配信技術により、ソフトウェアやパッチの配布にかかる工数の大幅削減も実現します。
その他、おすすめのIT資産管理のクラウドサービスはこちら。

情報化社会で重要度の増すIT資産管理ツール
デジタルトランスフォーメーションが進展する中で、多様な働き方を実現する働き方改革も推進されており、IT機器の活用も多様化しています。
このような状況でさまざまなリスクを回避し、安全なデータ管理を行っていくためにも、IT資産管理ツールが果たす役割はますます重要度を増しており、それが市場規模拡大傾向にも表れているといえるでしょう。
それと同時に、IT資産管理の持つ意味合いも変化しており、目的を明確にしたうえで包括的な見地に立ったツール選定を行うことが重要だといえます。
また、情報資産におけるIT資産管理ツール導入の重要性については次の記事で詳しく解説しています。

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