ロイヤルカスタマーとは?優良顧客との違い - 育成は指標「NPS」にて
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ロイヤルカスタマーとは
ロイヤルカスタマーとは、ある企業ブランドや製品・サービスに対して高い忠誠心をもつ顧客のことです。少子高齢化による人口減少傾向も相まって、顧客の離脱率や解約率を抑え満足感を高める手法、つまりロイヤルカスタマーを増やすことが主流となりつつあります。
ロイヤルカスタマーは定期購入や継続購入によって、企業の利益に貢献する重要な存在です。ロイヤルカスタマーを維持するのにかかるコストは、新規顧客の獲得にかかるコストの割合のうち20%ほどであるとの見解もあります。いわゆるパレートの法則がそれにあたります。
また、ブランドや製品のファンになった顧客の声は、多くのキャッチコピーよりも説得力があるものです。つまりわずかなコストでロイヤルカスタマーを維持することは、効果の高いマーケティングを行っている状態と同じといえます。
ロイヤルカスタマーと優良顧客は異なる
多大な利益をもたらすロイヤルカスタマーの存在は、多くの企業から重要視され、維持や育成に多くの工夫と努力が注がれるようになりました。
これらの企業が「ロイヤルカスタマー」として定義しているのは、主に次の3点の特徴をもった顧客です。
- 繰り返し製品・サービスを購入してくれる
- 競合他社に流れない
- 第三者に製品やサービスをすすめてくれる
単なる「優良顧客」は離脱しやすい
では収益性の高い顧客とは、なにを意味するのでしょうか。それはあるブランド・製品を使い始めて以来、繰り返し継続してそれを購入し、大きな利益を企業にもたらす「優良顧客」のことです。
収益性の高い顧客は忠誠心も高い、が定説とされているものの、もしかすると優良顧客は、次のような理由で製品を使い続けているだけかもしれません。
- 長期契約で縛られており、辞めるタイミングを逃している
- 解約の仕組みが困難で、惰性で使い続けている
- ほかに代替になる商品やサービスが見当たらず、仕方なく使っている
たとえば、携帯電話の契約はこれらにほとんどに当てはまり、満足して利用している顧客は、実はそれほど多くないと考えられます。
こうした顧客は優良顧客ではあるものの、ほかに魅力的な製品・サービスが登場する、競合他社が魅力的なキャンペーンを打ち出すなどすれば、簡単に離脱します。
「ロイヤルカスタマー」は収益性と忠誠心が高い
こうした離脱の危険性が高い優良顧客がもたらす利益は、どれだけ大きくとも悪い売上といえるものです。このような顧客が優良顧客の大部分を占めていれば、離脱された際のインパクトは大きく、企業に与える損失は計り知れないでしょう。
では、真のロイヤルカスタマーとは、どのような顧客のことを指すのでしょうか。
それは、高い収益性をもつ優良顧客として企業に大きな利益をもたらしつつ、カスタマーロイヤルティ(顧客ロイヤルティ)も高い顧客です。カスタマーロイヤルティとは、特定の企業やブランドに対する愛着や信頼の度合いのことです。
真のロイヤルカスタマーは、ブランドや製品・サービスに対し「深い愛着と高い信頼(忠誠心)」をもつため、競合他社がどのような手を打ってもそう簡単には離脱しません。そのため、この収益性とカスタマーロイヤルティのどちらが欠けてもロイヤルカスタマーとはいえないのです。
ロイヤルカスタマーを増やすメリット
ではあらためて、ロイヤルカスタマーを増やすことで、企業にどのようなメリットがあるのかを整理し、詳しく紹介します。
LTVが高く経営が安定する
LTVは「Life Time Value」の略で、日本語では「顧客生涯価値」と訳されます。顧客との取引を始めてから終了するまでの間に、どれだけ利益を得られるかを算出したものです。
前述したように、ロイヤルカスタマーは愛着や信頼の度合いが高いため、簡単には乗り換えたりしません。そのため、1度ロイヤルカスタマーになれば、長期にわたって安定した利益が得られて経営が安定し、LTVも高くなります。
新規顧客の獲得機会が増える
ロイヤルカスタマーは、口コミやSNS、紹介で商品やブランドを宣伝し新たな顧客を呼び込んでくれます。自分がいいと思っているものを親しい人や世間に広めることで、同じようにいい体験をしてほしいからです。
また、親しい人からの口コミは信頼性が高いため、他人の口コミよりも訴求力が強く新たな顧客になりやすい点も大きなメリットです。広告宣伝のように大きなコストをかける必要もないため、効率的に営業ができるでしょう。
商品・サービス改善のフィードバックが得られる
ロイヤルカスタマーは愛着や忠誠心が高いからこそ、商品・サービスに対して建設的なフィードバックを提供してくれます。企業としても商品・サービスの改善は顧客の維持や、新規顧客を呼び込むために必要であるため、ロイヤルカスタマーは重要な存在となるでしょう。
また、ロイヤルカスタマーはマーケティング調査やアンケート調査にも積極的に参加してくれる傾向にあるため、データを集めやすいこともメリットです。
ロイヤルカスタマーの判断指標「NPS」
優良顧客であるかどうかの判断は、LTVによるセグメント分類を基準として判断できるかもしれません。しかし、企業に対する「深い愛情と忠誠心」はどのように判断したらいいでしょうか。
これを判断する指標として注目されているのが、「NPS」です。
NPS(Net Promoter Score)とは
NPSは「Net Promoter Score」の略称であり、日本語では「推奨者の正味比率」と訳されます。NPSは顧客が企業に対してどの程度の信頼や愛着を感じているか、を判断するのに最適な指標であり、多くの企業で採用が進んでいます。
具体的には、特定のブランド・製品・サービスに対し、「友人や同僚に勧める可能性を0〜10点で評価してください」と質問し、答えてもらうだけです。回答の結果は、イラストのように9〜10点の顧客を「推奨者」、7〜8点の顧客を「中立者」、6点以下の顧客を「批判者」として分類して判断します。
顧客のロイヤリティを判断するだけであれば、質問に答えてもらうだけで十分です。しかし、通常は「なぜこの点数をつけたのか」を同時に答えてもらうようにし、改善に役立てていきます。
NPSと満足度調査の違い
NPSが注目されるようになった理由は、「顧客満足度調査」より、実態に即したロイヤリティが判断できるからです。
理由としてはNPSの質問内容が、顧客に対して「友人や同僚」への責任を感じさせる、重い内容であることが考えられています。
たとえば、満足度調査の場合、満足してはいないものの不満がなければ「満足している」ことになるかもしれません。
しかし満足していると答えた顧客でも、友人や同僚に勧められるかの問いには、よりシビアな評価を下す傾向があり、本来の意味での満足度やロイヤリティを正確に判断できるのです。
このNPSはフレッド・ライクヘルド氏が考案し、アメリカのフォーチュン500の4割近い企業が、なんらかの形で取り入れている指標だといわれています。
ロイヤルカスタマーの創出・育成方法
次に、NPSやLTVを使ってどのようにロイヤルカスタマーの創出・育成を行うのか、方法やポイントについて紹介します。
ロイヤルカスタマーの分類と定義
まずはロイヤルカスタマーを探し出し、自社にとってのロイヤルカスタマーとはなにか、定義づけを行います。NPSの結果と顧客の収益性 = LTVを組み合わせ、マトリクスを作成してセグメント分類することで、真のロイヤルカスタマーを探しましょう。
下に示したマトリクスのイラストは、横軸をNPSに、縦軸を収益性 = LTVとして作成したものです。
真のロイヤルカスタマーは、このマトリクスのイラストを見ると、右上の層であることがわかります。
このように、顧客の特性ごとにセグメント分類することで、それぞれの層に対してどのような施策を行えばいいのか、具体的な方法が浮かび上がってくるのです。
組織を横断した取り組み
実際に施策を行うなかで重要なのは、組織を横断した原因の分析と取り組みです。たとえば最重点課題といえる「離脱候補者層」や、「ロイヤルカスタマー候補者層」には、ロイヤリティが不足しています。一方でNPSが高まらないのは、マーケティングや営業だけの責任とはいえません。
たとえば、NPSが低い理由にカスタマーサポートの対応や、製品やサービス自体に対する不満があるかもしれません。
なぜNPSが低いのかを、低い点数をつけた理由から分析し、組織を横断して改善に取り組めるような体制づくりを行いましょう。
顧客との接触機会増加とフィードバック
NPSが低い理由はもしかすると、カスタマーサポートをはじめとした顧客との接点機会自体が少ないためかもしれません。ロイヤルカスタマーを育成するには、「あなたを大切にしている」とメッセージを継続的に伝えることが重要です。
また、顧客の情報収集手段が多様化しリアルタイム性が重視される現代では、旧来の電話サポートだけでは顧客との関係性は築きにくく、記録もしにくいためフィードバックが得られません。
そのため、メルマガの配信やLINEの活用といった多彩なチャネルを活用し、顧客との接点機会を増やすことが重要であり、現代では必須の対応です。さまざまな角度から顧客の興味を引き、信頼度や購入頻度を高めましょう。
アンバサダーへの取り組み
ロイヤルカスタマーの絶対条件に、第三者へ製品・サービスをおすすめする「エバンジェリスト」としての役割があります。
これを一歩進め、顧客自身が積極的に製品・サービスをアピールできる体制づくり、「アンバサダー」への取り組みを行うことも有効です。
アンバサダーは日本語で「大使」の意味があり、さまざまな企画に参加して、口コミで製品やサービスのよさを広めていく役割を担います。意味合いは違いますが、地方都市のPR大使をタレントが担当するようなものでしょうか。
製品やサービスの内容に応じて、顧客自身が参加している意識をもてるような企画が実行できれば、ロイヤリティ向上に大きく役立つだけでなく、広報活動もスムーズに進むでしょう。
ロイヤルカスタマー育成に役立つマーケティング手法
ロイヤルカスタマー育成によく活用されるマーケティング手法としては、CRMやCEMなどが挙げられます。それぞれの手法について詳しく紹介します。
CRM
CRMは「Customer Relationship Management」の略で、日本語では「顧客関係管理」を意味します。顧客情報を管理・分析し、顧客ごとに最適な関係性を構築することで、ロイヤリティを高める施策です。
顧客の購入履歴や年齢、性別といった属性ごとに顧客を分類し、それぞれの特性にあったメールや
DMを送ってアプローチを行います。基本的に長期間にわたってゆっくりと関係性を構築するため、すぐに結果は出ませんが、ロイヤルカスタマーの育成には適した手法です。
また、膨大な顧客情報の管理や分類はアナログやExcelでは難しいため、基本的にはCRMシステムを使って管理を行います。
CEM
CEMとは「Customer Experience Management」の略で、日本語では「顧客経験価値管理」を意味します。よりよい経験を提供し、他社との差別化を図ってロイヤリティを高める手法です。CRMとの違いは、顧客の予想を上回る感動やサプライズ体験を提供する点です。
他社にない付加価値を提供することで、愛着真や信頼度の向上を目指します。データ管理の面では、買い物をしている際の顧客の感情をメインとして分析するのが特徴で、顧客目線に立って潜在的なニーズの掘り起こしが行えます。
ロイヤルカスタマー育成の成功事例
最後にロイヤルカスタマー育成の戦略を考えるうえで参考になるよう、ロイヤルカスタマー育成によって顧客の囲い込みに成功した、スターバックスとスノーピークの事例を紹介します。
スターバックスコーヒージャパン株式会社
スタバの愛称で親しまれるスターバックスコーヒージャパンでは、2017年からカスタマーロイヤルティプログラム「スターバックス リワード」を提供しています。スターバックスでは「スターバックス リワード」を、よりよい体験を届けるためのロイヤルティプログラムと位置付けました。
ポイントは「Star」と表現され、購入額54円(税込)ごとにStar1つが集められ、Reward eTicketと交換できます。Reward eTicketは、上限700円(税抜)で好きなドリンクやフード、コーヒー豆などと引き換えられます。
さらに、会員特典として「マイストアパスポート」や「モバイルオーダー&ペイ」も実装しました。マイストアパスポートとは、コーヒー豆を購入すると、サイトの画面にパッケージを模したデジタルスタンプが表示される機能です。
このようにデジタルシフトとプログラムの拡充を行ったことで、スターバックス リワードは開始当初150万人だった会員数を、750万人まで増やすことに成功しました。
事例詳細:会員数750万人の「スターバックス リワード」に学ぶ、ロイヤルティプログラムを通じたCX向上
株式会社スノーピーク
アウトドア用品のリーディングカンパニーであるスノーピークでは、1998年からユーザーと社員がともに参加するキャンプイベント「Snow Peak Way」を、全国で開催しています。
累計参加者数は12万人にものぼり、商品に関する意見を聞いたり、プライベートな話で盛り上がったりと、企業とユーザーの関係性を深めています。参加したユーザーの声をもとに開発された商品もあるそうです。
2000年からはインターネット掲示板を開設、2015年には交流の場をFacebookに移し、12万人を超える巨大なコミュニティへと成長させました。グループ内では、ユーザー同士で積極的に意見が交わされています。
さらに、2018年ではコミュニティを知らないユーザーとも交流できるよう、ECサイトを改善しました。スノーピークのECサイトでは、ユーザーの口コミがみられるのはもちろん、口コミへの返信が可能で、気軽に質問も行えます。
また、Instagramを通じて自身のキャンプスタイルが投稿可能です。結果、ECサイトの売上のうち、約20%がこれらのユーザー生成コンテンツ経由になり、ファン形成やECの売上自体の伸長にも大きく貢献しました。
事例詳細:熱烈ファンが集まるスノーピークに学ぶ、EC売上拡大の秘訣とUGC活用法
ロイヤルカスタマー育成には企業全体で取り組む
カスタマーサポートに問い合わせたものの、まったくコンタクトが取れず、つながっても適切な対応が受けられずに、ガッカリした経験がある方もいるでしょう。同様に、どれだけサポートが洗練されていても、サービス内容や製品自体に満足できなければ、ロイヤリティが高まるはずもありません。
多様化が進み、瞬時に情報が手に入る現代では、「いいものを作ってさえいれば売れる」は間違いであり、時代に取り残された考えとなりつつあります。「いいものを作る・提供する」はもはや最低条件であり、それを長く深く愛用してもらうため、顧客と良好な関係を築き、ロイヤリティを高めなければならないのです。
これを実現させるためには、企業全体が一体となり、顧客ロイヤリティを高めていくよう取り組んでいく必要があるでしょう。
ロイヤルカスタマーを維持するためのアフターフォローについては、次の記事を参考にしてください。
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