顧客管理をExcelからCRMへ移行すべき8つの理由、手順・ステップを解説
Excelでの顧客管理は、長く使われてきた手法です。しかし、データベースの作成やフォームの作成、集計などに時間がかかり、改善する必要性を感じている方もいます。
最近は便利な顧客管理システムが多数リリースされ、データ管理はもちろん、分析や検索においても手軽に使えるものが増えています。
ボクシルでは、Excelで管理するよりも、効率的かつ運用しやすい顧客管理システム(CRM)に移行すべき理由と手順を解説します。
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Excelで顧客管理するメリット
まずは、Excelで顧客管理するメリットをおさらいします。
導入コストがほぼ不要
Excelで顧客管理を行う最大のメリットは、導入コストがほぼかからないことです。Microsoft Officeが導入されているPCを使えば、追加のソフトウェア購入やサブスクリプション料金が不要です。
低コストで始められる点は、スタートアップや小規模事業者にとって利点となります。
編集がしやすい
Excelは、データの入力や編集機能がついたツールです。顧客情報の更新が頻繁である場合も、セルへの直接入力や既存データの修正が簡単にできます。
また、自由に行や列を増やせるため、追加したい項目が増えた際も対応可能です。フィルタリングやソート機能を使うと、必要な情報を迅速に見つけ出せます。
とくに、顧客管理を始めたばかりの段階では、項目の増減がつきものです。管理する顧客数が少ない場合、Excelは効果的な方法といえます。
汎用的で誰でも使える
Excelは、ビジネスの現場で広く利用されているため、多くのユーザーが基本操作に慣れています。顧客管理システム導入時と比べて、スタッフ教育の時間を減らせる可能性があるため、教育にかかる時間やコストを節約したい方におすすめです。
直感的でわかりやすい
Excelのデータは、縦と横の二次元の表形式です。そのため、ひと目で情報を確認できます。最低限の情報管理だけであれば利用可能です。
また、色分けや条件付き書式を用いると、顧客の状態やカテゴリーごとで視覚的な強調を表示できる点も強みです。工夫次第で、いくらでもわかりやすく表示できます。
シートの自由度が高い
Excelでは、シート内でのレイアウトや構造を自由に設計できます。事業の特性や管理したい情報の種類に応じて、カスタマイズされた顧客管理シートを作成できることも魅力です。
さまざまな種類のシートを、作成する企業に向いています。
VBAやマクロによる自動化ができる
Excelの強力な機能の一つに、VBAやマクロを使用した作業の自動化があります。顧客データの入力や更新作業を自動化することで、繰り返し行う分析をマクロで一括実行できるようになります。
そのため、作業効率を大幅に向上させたい方におすすめです。
Excelで顧客管理するデメリット
Excelにはメリットが存在する反面、デメリットも存在します。
共有が困難
Excelで顧客管理する場合、データファイルが特定のパソコンに保存されているため、チーム内で情報共有する際に手間です。
Excelの場合、ファイルをメールで送信したり、共有ドライブにアップロードしたりする必要があります。最新の情報が常に共有されているとは限らないため、確かめるのも手間です。
仮に、営業チームが顧客情報をExcelで管理していた場合、メンバーが外出先で顧客情報を更新したいと思っても、Excelのファイルにアクセスできなければ更新もできません。そのため、リモートアクセスや複数人での同時編集は難しいです。
最近では、テレワークやリモートワークが推進されたことにより、オフィス以外で働く機会が増えました。そのため、顧客データに社外からアクセスしなくてはならないケースもあり、オフラインでの操作だと不便に感じている方も増えています。
データの紐付けが難しい
入力作業によるデータ管理だけであればExcelでも十分ですが、いくつかのデータを紐づけることは困難です。仮に、データを紐付けられる仕組みができてもデータが増えるにつれて管理が複雑になります。
そのため、入力に時間がかかりヒューマンエラーの原因になる可能性があります。いくつものデータを紐付けて、一つのシートに見える化したくてもExcelでは限界です。
情報が増えるとシートが重くなる
Excelのデータは、情報を蓄積すればするほどシートが重くなるため、動作が遅くなります。ちょっとしたデータ管理であれば問題ないものの、長期的にデータを蓄積し続ける場合、Excelでの管理は不向きです。
とくに、画像やグラフを多用するとファイルが重くなりがちです。最終的には、ファイルの操作性が著しく低下し、データの検索や更新作業の効率が悪くなる可能性があります。
人によって入力方法や表記に差がある
Excelでの顧客管理の方法は、さまざまです。入力者によってデータの入力方法や表記が異なることもあります。
たとえば、顧客の住所を入力する際に、「東京都」と入力する方もいれば、「東京」と略して書く方もいます。また、住所の表記でも「1丁目2番地3号」や「1-2-3」、「霞ヶ関」や「霞が関」など、表記の仕方はさまざまです。
さらに、郵便番号や電話番号などの数字も「半角と全角どちらで入力するのか」「ハイフンの有無」など、さまざまな記載パターンがあります。表記の違いは、後でデータを検索や分析する際に正確な結果を得られず、作業の手間になります。
どのシートが最新のものかわからなくなる
ファイルの共有や更新が頻繁な場合、どのシートが最新の情報か特定することが難しいです。重要な情報が失われたり、古いデータにもとづいて意思決定したりするリスクが高まります。
複数の担当者で1つのシートを編集をしていた場合、別の担当者がデータを上書きしてしまい、情報が書き換えられてしまう可能性もあるため要注意です。
セキュリティへのリスクがある
Excelファイルはパスワードでの保護も可能ですが、専門的なCRMシステムと比べるとセキュリティ機能が限定的です。メールの添付ファイルを誤送信したり、外部のUSBドライブにコピーされて情報漏えいしたりする可能性が高まります。
とくに、機密性の高い顧客情報を扱った場合、流出すると企業に損失を与える恐れがあるため、不正アクセスやデータ漏えいのリスクから守らなくてはいけません。
データが破損してしまう可能性もある
Excelのデータを誤って上書きしたり、ウイルスの感染によってデータが破損したりするリスクも0ではありません。重要なデータが失われると、企業に大きな損失を与えます。
使いやすさと見やすさがシートの制作者に依存する
Excelシートの使いやすさや見やすさは、作成者のスキルやデザインセンスによって左右されがちです。とくに、ほかの方が理解しにくい複雑な計算式やマクロを使用しているシートの場合、共有しないといけないため修正や更新時の手間が増える可能性があります。
テンプレートやガイドラインがない場合、計算式やマクロを理解できる人が限られます。属人化して業務効率の低下につながるため危険です。
データ分析・活用のハードルが高い
Excelでは基本的な数値の集計やグラフ作成は可能ですが、大量のデータを扱う場合や細かく分析したい場合は、機能が足らなくなることもあります。
また、データベースとしての機能は限定的で、高度なデータ分析を行う際は別のツールが必要です。
CRMで顧客管理をするメリット
「顧客数が増えてきた」「データが見にくい」など、Excelで不便を感じるようになったときに検討したいのが、CRMです。CRMとは、顧客データを効率的に管理できるシステムのことです。
こちらの記事では、CRMについてくわしく解説しています。
顧客データの一元管理が可能
CRMを利用すれば、Excelでは実現できなかった顧客データの一元管理が可能です。顧客の情報をすべて紐付けると、必要なデータをすぐに利用できます。
さらにCRMはExcelと比較して、より多くの情報を詳細に管理できます。「案件別での管理、複数の連絡先情報、複雑な取引履歴、コミュニケーションの記録」など、ニーズに応じて情報を柔軟に管理できる点もメリットです。
クラウドで共有できる
CRMをクラウドで利用すれば、社内全員が最新の情報を確認し、すぐに共有できます。メンバーがデータを更新しても、すぐに確認できるため社内業務の効率化におすすめです。
Webやアプリを通して利用できるCRMツールの場合、出張先でも確認や入力が可能です。テレワーク中の社員も利用できるため、職場環境の整備に役立ちます。
分析ができるようになる
CRMに情報を蓄積し続けると、効率よく顧客の利用金額や購入履歴などの情報を調べられます。蓄積されたデータをもとに、今後の対策について分析が可能です。
データ処理の知識がない状態で分析したり、データの共有も簡単にできたりするため、データ収集や分析にかかっていた時間を減らせます。コア業務に注力できれば、さらに業務効率化を進められます。
他のツールとも連携しやすくなる
CRMには、メールマーケティングツールやSNS、ERPシステムなど、ほかのビジネスツールとの連携機能をもつケースも多いです。そのため、顧客データを活用したマーケティング活動や営業活動を効率よく進められます。
たとえば、メールマーケティングツール機能があると、CRMから直接メールマーケティングキャンペーンの実施が可能です。キャンペーンの効果をリアルタイムで分析し、改善策を講じるまでのプロセスを実行できます。
セキュリティレベルが向上する
CRMは、高度なセキュリティ機能を備えていることも特徴です。データの暗号化、アクセス権限の管理、定期的なセキュリティアップデートなどにより、顧客情報の不正アクセスや漏えいから守れます。
たとえば、顧客情報を扱う従業員にのみアクセス権を与えたり、外部からの不正アクセスを防ぐための多要素認証を設定したりする機能などが挙げられます。Excelでの実現が難しかった、セキュリティ対策を実施できる点も強みです。
顧客満足度の向上にもつながる
CRMで顧客情報を適切に管理して、迅速かつ適切に対応すると顧客満足度向上につながります。たとえば、CRMに保管されている過去の購入履歴や問い合わせ履歴を参考にすれば、顧客が求めているサービスや商品を提供しやすくなります。
顧客がニーズを理解されていると感じれば、自社に対して良い印象をもってくれる可能性が高くなるためおすすめです。
CRMで顧客管理するデメリット
CRMの導入にはメリットが多い一方、デメリットもあります。
導入・維持コストがかかる
Excelとは異なり、CRMは導入にコストがかかります。導入時の初期費用や月額使用料などが、負担に感じる企業があることも事実です。
費用を抑えたい場合は、比較的低コストで使えるクラウド版のCRMツールをおすすめします。無料版やデモを試しながら、業務改善に役立つか検討してみることが大切です。
効果が見えにくい
CRMは、すぐに売り上げが倍増するものではありません。短期間での効果が期待できないため、コストパフォーマンスの良し悪しを判断しにくい場合もあります。
自社にあっているシステムがない場合もある
CRMを導入してみて、自社のルールに大きな変更を加えなくてはならない状況や、管理方法に適したシステムを見つけられないケースがあります。ミスマッチを防ぐには、業務ルールを見直したり、改善点をチェックしたりすることが大切です。
導入サポートがついているツールもあるため、チェックしてみましょう。
ExcelからCRMへ移行すべき8つの理由
ExcelとCRMのメリットとデメリットを見てきました。CRMの導入を検討する場合は、最適な方法を選ぶ必要があります。顧客管理をExcelからCRMへ移行すべき理由は、次のとおりです。
- 顧客情報の集中管理
- リスクの軽減
- Excelでは案件管理ができない
- データ量による効率の低下
- マーケティングできる
- 顧客対応の迅速化
- 自動化と効率化
- 成長に合わせたスケーラビリティ
顧客情報の集中管理
情報がまとまっていないバラバラな状態では、実践的に利用することが難しく、顧客に対して適切なアプローチを逃す恐れがあります。CRMで顧客管理すれば、すべての情報を集中管理できるため、個人情報の紐づけが可能です。
CRMの導入で、顧客情報を集中管理していないことで発生していた問題が、解決できる可能性があります。
リスクの軽減
クラウド上に情報をまとめると、情報にアクセスできる権限を個別に管理できます。誰がいつ利用したのか調べられるため、内部者の情報漏えいリスクを軽減させたい企業におすすめです。
また、Excelでは誤操作によるデータ損失の可能性がありますが、CRMでは損失リスクは低くなります。
Excelでは案件管理ができない
案件管理では、「顧客情報や案件の概要、商品選定、進捗状況」など、さまざまな確度から顧客の現状を分析する必要があります。そのため、プロジェクトや業務をいくつかの段階にわけて管理するExcelでは難しいです。
しかし、CRMは蓄積した情報をもとに案件管理やリマインダー機能による管理が可能です。そのため、効率よく大量の情報を管理できます。案件情報の精度や全社共有、リアルタイム更新など、案件管理における強みをもっていることがCRMの特徴です。
データ量による効率の低下
Excelはデータ容量が大きくなればなるほど、表示に時間がかかってしまい、作業スピードが落ちてしまいます。一方、CRMのデータはオンライン上に保存されるため、デバイスの容量に依存せずに使用可能です。
Excelと比べてCRMの方がデータ容量は軽くなるため、ストレスなく快適な環境で利用したい方に向いています。
マーケティングできる
情報をすべてクラウド化し一元管理することで、「組織として」顧客情報を共有可能です。データをもとに、今後の戦略や現在の課題を抽出できるため、マーケティングにも利用できます。
顧客対応の迅速化
CRMは、顧客からの問い合わせや要望に対して迅速に対応できる機能を備えています。たとえば、顧客からの連絡履歴をリアルタイムで確認できる機能を活用すれば、問い合わせに迅速かつ適切な回答が可能です。
Excelのままでは、リアルタイムでの情報共有や対応の迅速化は難しいでしょう。
自動化と効率化
CRMは、ルーチンワークの自動化にも貢献します。たとえば、顧客への定期的なフォローアップメールの送信、リードの自動スコアリング、営業に関するアクティビティの自動追跡など、手動だと時間がかかる作業を自動化できます。
Excelでは自動化の実現が難しいため、業務の効率化を図りたい企業にとってCRMは有効です。
成長に合わせたスケーラビリティ
ビジネスが成長するにつれて、顧客情報の量も増えて管理は複雑になります。CRMシステムはスケーラビリティに優れているため、ビジネスの成長に合わせて拡張できます。
Excelの場合、データ量が増えると管理の手間がかかり性能も低下します。しかし、CRMの場合はデータ量が増えても性能は低下しません。
それでも、CRM導入に踏み切れない、Excelで顧客管理したい方は次の記事でExcelのテンプレートを探してみてください。
ExcelからCRMへの移行手順
CRMのメリットはわかっているものの、これまでExcelを利用していた方にとって、CRMに移行するのは、時間やコスト面でハードルを感じる方もいると思います。
ExcelからCRMへの移行手順を具体的に解説します。実行可能か見極めるヒントにしてみてください。
CRMのメリットを周知する
具体的なメリットを社員に周知すると、CRMを取り入れる土壌ができます。この際、案件管理における課題を聞き取ることが大切です。
CRMは顧客情報をまとめるだけではなく、今後の経営に活かしたりサービスの向上につなげたりできます。これまで、Excelで実施してきた顧客リスト作成への意識を変えることがポイントです。
顧客データのチェック
顧客データの管理方法を確認し、浮き彫りになった課題やCRM導入で期待できる改善策を検討します。同時に、Excel上の顧客データを精査して重複や古い情報を削除する作業(データクレンジング)を行うことも重要です。
システムの検討
課題や期待する改善点が明確化したら、実際にCRMを検討します。CRMといってもさまざまです。「課題にあっているか」「コストで問題ないか」などを精査しながら、システムを選びます。
ある程度システムが絞れたら、無料トライアルやデモなどを利用して、使い心地を確認することが大切です。
こちらの記事ではCRMを比較しているため、参考にしてみてください。
従業員のトレーニング
CRMシステムの導入効果は、ユーザーの理解度や使い心地によって左右されます。そのため、移行前には従業員向けのトレーニングを実施し、新システムの機能や操作方法をしっかりと理解させることが重要です。
トレーニング実施時は、「実践的な内容が実行できるか」「リソースは割けるか」などの確認が大切です。
CRMで顧客管理する際の注意点
CRMは、顧客情報の一元管理や営業活動の効率化に役立つツールです。しかし、効果的に活用するためには、いくつか注意すべきポイントがあります。
情報の入力・更新を徹底する
CRMは、正確な顧客情報があってこそ効果を発揮します。そのため、現場での情報入力が徹底されていないと、導入しても意味がありません。
担当者によって入力の粒度が異なったり情報の更新が滞ったりすると、データの信頼性が損なわれ、誤ったアプローチや機会損失につながります。運用ルールを明確にして、入力や更新の習慣を根付かせることが大切です。
部門間の情報共有・連携を意識する
CRMを導入しても、営業部門だけが活用してマーケティングやカスタマーサポートとの連携が不十分だと、効果が限定的になります。
顧客情報は企業全体で共有、活用することが前提です。部署を超えた情報連携や、定期的なミーティングの場を設けることで、CRMの持つ本来の価値を最大化できます。
運用目的や活用範囲を明確にする
CRMの機能は、ツールによってさまざまです。目的を明確にしないまま導入すると、どこから手を付けていいかわからず、結局使われなくなるリスクがあります。
「顧客の情報管理」「営業の進捗管理」「既存顧客へのアプローチ強化」など、活用目的と範囲を事前に決めておくことで、現場への定着や効果的な運用がスムーズに進められます。
CRM導入で効率的な顧客管理を
これまでExcelで顧客管理してきた方の多くは、「もっと〇〇に管理できたらいいのに」と感じたことがあるのではないでしょうか。
最初は導入までのハードルを感じてしまい、導入をためらう方もいます。そんなときは、無料のトライアルやデモなどを利用して、導入のイメージを掴んでみてください。
ここで解説したCRM導入のメリットや導入のステップを参考に、CRMで効率的な顧客管理をはじめてみてください。
次の記事ではCRMを導入した企業の事例を紹介しています。導入の参考にしてみてください。
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