建設業界で電子契約システムは活用できる?法律やシステムを含めて解説
電子契約システムには多くの種類があり「どれを選べばいいか」迷いますよね。後から知ったサービスの方が適していることもよくあります。導入の失敗を避けるためにも、まずは各サービスの資料をBOXILでまとめて用意しましょう。
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建設業界でも利用可能!電子契約システムの立ち位置と法解釈
建築業界では、もともと書面契約が義務付けられていました。しかし2001年の建設業法改正により、電子契約書の使用が可能になりました。
建設業界では紙媒体での契約が多かったものの、業務効率の高さやコスト削減の観点から、徐々に建設業者の間で普及しつつあります。国土交通省も電子契約を推進していることから、注目が集まっているといえます。
建築業界における電子契約システムの立ち位置と法解釈については、次のとおりです。
2001年建設業法改正で電子契約が可能に
2000年、IT書面一括法が施行されました。
民間の商取引における書面の交付が義務付けられている関係法律50本について、相手方の承諾があれば書面に記載すべき事項を電磁的措置により行うことを可能にする法律です。
これによって、各商取引に関する法律が見直されて2001年4月1日から改正建設業法が施行されました。それまで書面の交付が必要とされていた建設請負契約は、この改正により電子契約の締結が可能になりました。
建設業法とは1949年に制定された法律で、建設工事の適正な施工を確保、発注者に対する保護、建設業界の健全な発達促進を目的としています。
建設業における契約は民法や商法などの一般的な法律が適用されるだけではなく、建設業法の適用も受けるのが特徴です。
請負契約が電子契約可能な根拠となる条文
建設業法第19条には、次のように記載されています。
建設工事の請負契約の当事者は、前条の趣旨に従つて、契約の締結に際して次に掲げる事項を書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付しなければならない。
※出典:e-GOV法令検索「建設業法第19条」(2025年12月4日閲覧)
よって基本的に請負契約は書面を交付し、署名または記名押印をしなければなりません。しかし、同第3項では次のように定められています。
建設工事の請負契約の当事者は、(中略)当該契約の相手方の承諾を得て、電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であつて、当該各項の規定による措置に準ずるものとして国土交通省令で定めるものを講ずることができる。この場合において、当該国土交通省令で定める措置を講じた者は、当該各項の規定による措置を講じたものとみなす。
※出典:e-GOV法令検索「建設業法第19条第3項」(2025年12月4日閲覧)
この文言により、リフォームも含めた建設業の請負契約の電子契約が可能になりました。ここでいう「電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術」とは、コンピューターやインターネットなどを指します。
これらの技術を活用している電子契約システムであれば、建設業法によって規制されている建設工事の請負契約も電子契約の締結が可能です。
公共工事の契約ではすでに電子契約システムを活用
公共工事の入札や契約においては、すでに電子契約システムが実用化されています。国土交通省は2018年8月から「電子契約システム GECS」の試行運用を開始しています。
電子入札システムで公共工事・コンサルタント業務を落札した事業者が、電子契約で契約から支払いまでの一連の手続きが行えるような仕組みを構築しています。
電子契約システムが利用可能な建設業関係の契約形態
電子契約システムは定期借家契約といった一部の例外を除けば、ほとんどすべての建設業において締結しうる契約に適用可能です。
代表的な契約として、業務委託契約を含む次の契約類型が挙げられます。それぞれの電子契約化について、詳しく解説します。
- 請負契約
- 売買契約
- 賃貸借契約
- 保証契約
- 発注書、発注請書
請負契約
冒頭で説明したとおり、2001年の建設業法改正において建設工事の請負契約の電子契約が可能となりました。請負契約には収入印紙も必要なので、電子契約化によってコスト削減効果も期待できます。
とくに下請け・元請けなど、複数の工事業者が絡む工事に携わることの多い建設業者は、電子契約システムを導入することで、請負契約を迅速に、かつコストを削減して締結できるようになります。
売買契約
建設資材の発注では売買契約を締結する場合もありますが、これらの売買契約は電子契約に移行可能です。また、建設業に絡む売買としては不動産売買も想定されます。
従来であれば賃貸借契約や土地・建物の売買契約は、重要事項説明書をはじめとする書面が必要とされていたため、規制により完全電子化は難しいとされてきました。
しかし、2022年5月に施行された宅地建物取引業法の改正により、不動産売買における重要事項説明も電子化が可能となりました。
賃貸借契約
賃貸借契約は、物の貸し借りに関する契約です。建設業においては重機の貸し借りの際に用いられることが多く、広い意味では土地や賃貸物件の契約が関係する可能性もあります。
こちらも基本的には電子契約で締結が可能です。しかし定期借地契約や定期建物賃貸借契約のように、電子化できない賃貸借契約の類型も存在します。
保証契約
物件や土地の賃貸借、あるいは銀行融資などに際して保証人を設定する場合には、保証契約を締結しなければなりません。
保証契約については民法第446条に規定されています。同第3項では「保証契約がその内容を記録した電磁的記録によってされたときは、その保証契約は、書面によってされたものとみなして、前項の規定を適用する。」としています。
※出典:e-GOV法令検索「民法第446条第3項」(2025年12月4日閲覧)
このことから、保証契約についても電子契約が可能であると解釈できます。
発注書、発注請書
従来の発注書であれば契約書として課税文書の対象となるので、収入印紙を必要とする場合がありました。また、発注書だけではなく発注請書も発行する場合は、発注書ではなく発注請書の方に収入印紙を貼る必要があります。
いずれにしても、発注書または発注請書の契約書類については、金額に応じて収入印紙を貼らなければならない可能性があります。
しかし、発注書や発注請書も電子契約化が可能です。そのため必要に応じて、電子契約システムを導入してコスト削減を図るのがおすすめです。
建設業の電子契約システムの選び方
建設業で電子契約システムを導入する際は、業界特有の契約形態や運用環境を踏まえた選定が欠かせません。システム選びの際にチェックすべきポイントを紹介します。
電子契約システムの機能を詳しく知りたい場合は、こちらの記事を参考にしてください。
法令に準拠しているか
電子契約は法的に有効であることが前提です。そのため、システムが電子帳簿保存法や電子契約に関するガイドラインに準拠しているかは重要な判断基準です。
法令準拠かどうかは、運営会社が公的な基準に対応しているかや、システム上で見読性・原本性・本人性の要件を満たせる設計かを確認しましょう。
電子署名に対応しているか
電子契約においては、電子サインと電子署名が混同されがちですが、両者は仕組みも法的効力も異なります。電子サインは電子署名に比べて簡易的なもので、本人性の担保は仕組みによって異なります。
一方、電子署名は電子証明書を活用し、契約者の本人性と改ざん防止を強力に保証する技術です。
建設業界では高額かつ長期にわたる契約が多く、契約内容の真正性が強く求められます。そのため、電子サインよりも法的効力の高い電子署名を採用しているシステムを選ぶ方が安全です。
システムを選定する際は、どのような形式の署名に対応しているかを確認しましょう。とくに、認定認証局の電子証明書を用いた当事者型や立会人型の電子署名を採用しているかがポイントです。
また、署名ログやタイムスタンプの取得機能があるかどうかも、証拠力を担保するうえで重要なチェック項目です。
既存システムと連携できるか
建設業務では既存の業務管理システムや会計システムとの連携が求められることが多く、電子契約システムが単体で完結しないケースもあります。
API連携の有無や、クラウドストレージ・ワークフローシステムとの互換性があるかを確認し、業務フローに無理なく組み込めるかを見極めましょう。
建設業で活用できる電子契約システムおすすめ4選
建設業で活用できる電子契約は数多ありますが、なかでも建設業法に適合していると認められた電子契約システムを紹介します。
- 電子署名法に準拠したクラウド型電子契約サービス
- ISMS、SOC2を含めた数多くのセキュリティ項目をチェック
- 100以上の外部システムと連携可能
クラウドサインは、弁護士が監修した電子署名法に準拠しているクラウド型電子契約サービスです。
グレーゾーン解消制度により、建設請負契約にも使用可能なことが示されています。ISMS、SOC2など数多くのセキュリティ基準を設定しており、厳重なセキュリティが期待できます。
またkintone、Slack、Sansan、LINE WORKSなど、100以上の外部サービスとも連携可能です。ベンチャー企業から大手企業まで250万社以上※が使用しています。
※出典:弁護士ドットコム「クラウドサイン | 国内シェアNo.1の電子契約サービス」(2025年12月4日閲覧)
- 建設業界の請負契約をはじめとした各種契約の電子化に対応
- 契約や取引に関連する書類を電子化し一元管理
- 出来高請求といった実績ベースでの電子取引にも対応
DocYouは、グレーゾーン解消制度にもとづいた照会で、建設業法施行規則第十三条の四第二項に規定する技術的基準を満たすと回答を得られた※電子契約サービスです。
PDFやWord、Excelなどのファイル形式に対応しており、設計図をはじめとした各種データの電子化と一元管理が可能です。発注元発行の書類に対し、受注先で出来高請求金額を記入後、発注元が同意するといった電子取引も可能です。
※出典:日鉄日立システムソリューションズ「建設業界への電子契約サービスのご提供」(2025年12月4日閲覧)
- 紙と電子の契約書を一元管理
- 当事者型署名、立会人型署名など、豊富な署名方法に対応
- 有人のテクニカルサポートデスクを無料で利用可能
WAN-Signは、グレーゾーン解消制度を活用し、国土交通省より建設業法における適法性が確認された電子契約サービスです。他社の電子契約サービスで署名した電子データも格納できるシステムで、特許を取得しています。
電子契約の締結や契約管理、ユーザー管理などの機能を標準搭載しており、金融機関や官公庁の求めるセキュリティレベルにも対応しています。日本語はもちろん英語にも対応し、通知メールと管理画面を切り替え可能です。
サインタイム - サインタイム株式会社
- 公式サイトで利用料に応じた料金を確認できるため安心
- ユーザー数無制限で追加費用を気にせず使える
- 毎月の無料送信枠があり、書類送信コストを削減
サインタイムは、インターネット上で各種書類の「同意」や「署名」を行い、記録をクラウドで一元管理、活用できる電子契約サービスです。
締結時間の短縮、紙代や印紙代などのコスト削減、ペーパーレス化を実現します。
隠れたコストがなく、電子契約書類数に応じた料金を公式サイトで確認できるため、コスト面で安心です。ユーザー数や総務大臣認定タイムスタンプが使い放題であり、毎月の無料送信枠で書類送信コストを効率化できます。
見積書や工事請負契約書などの電子化に対応し、基幹システムとのAPI連携による効率化も可能です。
上記で紹介したサービス以外の電子契約システムについて知りたい方は、次の記事を参考にしてください。無料トライアルが可能なシステムも多数紹介しています。
建設業界における契約業務の課題
建設業界では、プロジェクトの遂行や取引先との関係構築において、多くの契約を締結し管理する必要があります。それにあたって契約業務にまつわるさまざまな課題が発生します。
普段の業務で解決すべき課題はどれか、確認してみましょう。
契約締結の遅延
建設プロジェクトでは、多数の関係者との間で複数の契約を締結する必要があります。しかし、従来の紙ベースの契約プロセスでは、書類作成や郵送、押印、返送などに多くの時間がかかり、契約締結の遅延が生じやすくなります。
この遅延は、プロジェクトの開始や進行に影響を与え、全体のスケジュールの遅延を招くおそれがあります。また、急を要する変更契約や追加契約の場合、この遅延はより深刻な問題となりえます。
契約締結の遅延は、工事の進捗に直接影響を与えます。それだけでなく、資材の調達や人員の配置にも支障をきたし、結果としてプロジェクト全体のコスト増加につながる可能性がある要素です。
契約書の紛失や損傷
建設現場では、多くの契約書や関連文書が紙ベースで管理されています。これらの文書は雨・埃・高温といった現場の厳しい環境条件にさらされることも多く、紛失や損傷のリスクが高まります。
契約書の紛失や損傷は、法的トラブルや紛争時の証拠不足につながる可能性があり、企業にとって大きなリスクとなります。また、紛失した契約書の再発行や損傷した文書の修復には、多くの時間と労力がかかります。
さらに、長期プロジェクトの場合には契約書の保管期間が長くなるため、適切な保管場所の確保も課題です。
契約内容の変更管理の困難さ
建設プロジェクトでは、工事の進行に伴い、設計変更や追加工事などを含む契約内容の変更が頻繁に発生します。紙ベースの契約管理では、これらの変更を迅速かつ正確に反映することが困難です。
変更箇所の特定や修正内容の周知、署名の再取得など、多くの手順が必要となり、ミスや漏れが発生しやすくなります。
また、変更履歴の管理も煩雑になり、どの版が最新かの判断が難しくなる場合もあります。
これらの問題は、関係者間の認識の齟齬を生み、トラブルの原因となりかねません。さらに、複数の現場や多数の下請け業者が関わる大規模プロジェクトでは、この問題がより顕在化し、プロジェクト全体の進行に大きな影響を及ぼす可能性があります。
コンプライアンス対応の負担
建設業界では、建設業法や下請法など、さまざまな法規制に準拠する必要があります。これらの法規制は、契約内容や契約プロセスにも影響を与えるため、常に最新の法令に準拠した契約管理が必要です。
しかし、紙ベースの契約管理では法改正に伴う契約書の一括更新や、コンプライアンス状況の確認が困難です。また、監査対応や行政への報告時に必要な書類の準備にも、多大な時間と労力がかかります。
さらに、長期保存が必要な契約書の管理や、アクセス権限の管理なども課題となります。こうしたコンプライアンス対応の負担は、担当者の業務効率を低下させるだけでなく、法令違反のリスクを高める要因となり得ます。
複数の関係者間での情報共有の困難さ
建設プロジェクトでは、発注者や元請け、下請け、資材供給業者などの多数の関係者が関与します。これらの関係者間で契約情報を正確かつ迅速に共有することは、プロジェクトの円滑な進行に不可欠です。
しかし、紙ベースの契約管理では、この情報共有が非常に困難です。契約書のコピーを関係者全員に配布する手間、最新版の管理、変更内容の周知など、多くの課題が存在します。また、地理的に離れた場所にいる関係者との情報共有はさらに困難です。
これらの問題は、情報の行き違いや認識の相違を生み、プロジェクトの遅延やトラブルの原因となる可能性があります。さらに、機密情報の管理や、必要な情報のみを特定の関係者と共有するといった細かな対応も難しくなります。
建設業界の課題を電子契約システムで解決できる理由
建設業界では、「契約締結が遅延してしまう」「契約書を紛失してしまう」など契約業務に関する課題があります。しかし、電子契約システムを導入することで、これらの課題は解消できます。
契約業務の課題が解決できる理由を、電子契約システムの機能や詳細とともに説明します。
迅速な契約締結プロセスによる遅延解消
電子契約システムは、契約締結プロセスを大幅に迅速化できるシステムです。従来の紙ベースの契約では、書類の作成や郵送、押印、返送に多くの時間を要しました。
一方、電子契約システムでは、これらの作業をオンライン上で迅速に行えます。
契約書の作成から署名まですべてがデジタル環境で完結するため、地理的な制約も解消されます。たとえば、急な設計変更や追加工事の契約も関係者間で即座に締結できます。
また、承認ワークフロー機能により、複数の承認者がいる場合でも自動で次の承認者に通知が送られ、承認プロセスが滞ることなく進行します。
これにより、契約締結の遅延によるプロジェクトの遅れやコスト増加を防げます。
クラウドベースの安全な文書管理による紛失・損傷リスクの低減
電子契約システムは、クラウドベースの安全な文書管理機能を提供し、契約書の紛失や損傷のリスクを大幅に低減できます。
すべての契約書がデジタル形式で保存されるため、物理的な保管場所の確保や環境条件の管理が不要です。
さらに、自動バックアップ機能によりデータの消失リスクを最小限に抑えられ、高度な暗号化技術やアクセス権限管理により機密情報の漏えいも防止できます。
また、検索機能を使用することで、必要な契約書を瞬時に見つけ出せるようになり、紛失による業務の遅延も防げます。
長期保存が必要な契約書も、デジタル形式で劣化することなく保管できるため、法的要件やコンプライアンスへの対応も容易になります。
バージョン管理機能による変更管理の効率化
電子契約システムのバージョン管理機能は、契約内容の変更管理を効率化する仕組みです。
システム上で契約書の修正を行うと自動的に変更履歴が記録され、最新版と過去のバージョンを容易に比較できます。
これにより、どの箇所が変更されたかといった情報だけではなく、誰がいつ変更したかも正確に追跡可能です。
また、変更箇所のハイライト表示や差分表示機能により、修正内容を関係者全員が簡単に確認できます。
さらに、変更承認のワークフローを設定することで、すべての関係者が最新の変更内容を確認し、承認したことを記録に残せます。
これらの機能により変更管理の透明性が向上し、関係者間の認識の齟齬やそれに伴うトラブルの防止につながります。
常に最新の法令に準拠したシステムでコンプライアンス対応の簡素化
電子契約システムは、法令準拠機能を通じてコンプライアンス対応を大幅に簡素化します。システムに最新の法令情報が反映されるため、常に法令に準拠した契約書の作成が可能です。
たとえば、建設業法や下請法にもとづく必要事項が自動的にテンプレートに組み込まれ、法令違反のリスクを低減できます。
また、電子署名法に準拠した署名プロセスにより、契約の法的有効性が確保されます。
このように電子契約システムを活用すれば、コンプライアンス対応の負担が軽減され、法令遵守の確実性を高められます。
リアルタイムの情報共有機能による関係者間のコミュニケーション円滑化
電子契約システムのリアルタイム情報共有機能は、複数の関係者間のコミュニケーションを円滑にします。
クラウドベースのシステムであれば、すべての関係者が最新の契約情報にリアルタイムでアクセス可能です。
契約内容に変更が生じた場合は、自動通知機能により関係者全員に即座に情報が共有されます。
また、アクセス権限管理機能により、特定の情報を特定の関係者のみと共有したいといった要望にも対応可能です。
地理的に離れた場所にいる関係者とも、同じ情報を同時に共有できるため、情報の齟齬や遅延による問題を防げます。
これらの機能により、プロジェクトの透明性が向上し、スムーズな進行が期待できます。
電子契約システムの導入時の注意点
建設業で電子契約システムを導入する際の注意点を、よくある失敗やデメリットなどの観点から解説します。
「見読性・原本性・本人性」を満たしている必要がある
建設業では、契約金額が大きくなる傾向にあるため、発注者を保護する目的で電子契約にも「見読性・原本性・本人性」といった3つの要件を課しています。導入する際はこの3つを満たし、法的効力をもっていることが重要です。
どれかひとつでも抜けてしまうと、法律や規制に違反する可能性があるため、電子契約システムの導入時にはしっかりと確認しましょう。
見読性
見読性とは、わかりやすくいえば「契約書がいつでも読める状態にある」ことです。契約後にディスプレイでいつでも契約書の内容を確認できたり、データを印刷できたりと、発注者の都合で契約書を確認できることが重要になります。
また契約には複数の関係者が存在することから、アクセスの管理や読み出し不能・破壊などのトラブルを未然に防ぐシステムが必要です。
見読性を確認する際は、パソコン画面と書面のいずれでも契約書の内容を明瞭に確認できるかどうかを確認してください。
原本性
原本性とは、わかりやすくいえば「契約書が本物であり、改ざんされていない」ことです。署名が本人のもので、なりすましがなく、内容も改ざんされておらず、コピーではないと推定できることが欠かせません。
しかし冒頭でも紹介したように、デジタル化された書面は、なりすましや改ざんが行われやすいことが指摘されています。そのため、システムとしては公開鍵暗号方式や、タイムスタンプなどを活用することで、原本性を証明します。
公開鍵暗号方式とは、契約書のデータを送受信する際にセキュリティを高める手法のことです。送信の際にデータ暗号化を行うために「公開鍵」を使い、暗号化された契約書を閲覧するために「秘密鍵」で復号します。
原本性に関しては、公開鍵暗号方式を採用していることと、第三者機関による電子証明書に対応していることが重要です。
本人性
本人性とは、わかりやすくいえば「電子署名が本人のものであることを証明する」ことです。本人性は電子署名の本人確認方法として「当事者型」か「立会人型」の2種類があります。
当事者型とは、第三者機関である認証局が本人確認を行う方法です。立会人型は、クラウド上で電子署名を行ってもらう方法や、当人のメールアドレスに送付したリンクをクリックしてもらう方法などがあります。
建設業においても、これはどちらでも問題ないため、自社に適した方法を選びましょう。
業務フローの見直しと最適化が必要
電子契約システムの導入は、単なるツールの変更ではなく、業務プロセス全体の変革を意味します。既存の紙ベースの契約プロセスを直接電子化しても、最大の効果は得られません。
そのため、導入前に現在の業務フローを詳細に分析し、電子契約システムの特性を活かした新しいプロセスを設計する必要があります。
たとえば、承認フローの簡素化や並行作業の導入、自動化可能な作業の特定などを検討しましょう。また、従来のやり方に慣れた従業員や、変更を好まない管理職から反対される可能性もあるため、丁寧な説明や段階的な導入も心がけましょう。
もちろん、新しい業務フローの効果を定期的に検証し、必要に応じて調整することも重要です。
建設現場での利用を考慮する必要がある
建設業界の特性上、契約書の確認や署名が現場で必要となることも多々あります。そのため、電子契約システムを導入する際は、オフィスだけでなく建設現場での使用を前提とした機能のあるシステムを選択することが重要です。
まず、モバイル対応は不可欠です。スマートフォンやタブレットで快適に操作できるインターフェースのあるシステムを選びましょう。
また、建設現場ではインターネット接続が不安定な場合もあるため、オフライン機能の有無も確認が必要です。これらの機能がないと、現場での契約業務に支障をきたし、結果として電子契約システム導入の十分な効果が得られないおそれがあります。
業界特有の大容量ファイルが存在する
建設業界の契約では、一般的な契約書以外に、詳細な設計図面や高解像度の現場写真など、大容量のファイルを頻繁に扱います。そのため、電子契約システムを選ぶ際には、これらの大容量ファイルの取り扱いに対応しているかどうかも慎重に確認する必要があります。
まず、システムが許容するファイルサイズの上限が、通常の文書よりも大きな容量に設定されているかを確認しましょう。また、CADファイルのように、建設業界特有のファイル形式に対応しているかどうかも重要なポイントです。
さらに、大容量のファイルでもスムーズにプレビュー表示できる機能があるかどうかも確認しておく必要があります。
これらの点を考慮せずにシステムを選択してしまうと、重要な図面や写真を契約書に添付できないといった問題が発生し、結果として紙の契約書と併用せざるを得なくなる可能性があります。
建設業における電子契約システム導入のメリット
建設業は下請け・元請け業者との契約や、土地や資材の売買などに関わる契約といった一般的な契約書だけではなく、建築確認をはじめとするさまざまな行政手続きを含めて、書類業務が発生します。
これらの書類業務を電子契約システムに置き換えることによるメリットは、主に次のとおりです。
- 収入印紙のコスト削減になる
- プロジェクト進捗の可視化と管理の効率化が進む
- モバイルワークが促進される
- 品質管理と安全性の向上に貢献する
それぞれについて詳しく説明します。
収入印紙のコスト削減になる
紙の書類であれば収入印紙の貼り付けが必要な契約であっても、電子契約であれば収入印紙は必要ありません。よって、契約を紙から電子契約に変えるだけで、収入印紙分のコスト削減効果が期待できます。
建設業で収入印紙が必要になる契約としては、不動産譲渡契約、建設工事請負契約などが挙げられます。
また、建設業に関係なく事業一般に、金銭消費貸借契約や領収書などにも金額によっては収入印紙を貼り付けなければなりません。積み重ねると結果として大きなコスト負担となる場合があります。電子契約に移行することで、大幅なコスト減が期待できるかもしれません。
プロジェクト進捗の可視化と管理の効率化が進む
電子契約システムの導入により、契約状況がリアルタイムで把握できるようになり、プロジェクト全体の進捗管理が容易になります。
たとえば、資材調達契約や下請け契約の締結状況、設計変更の承認状況などを一元管理することで、施工管理技士やプロジェクトマネージャーは全体の進捗を瞬時に把握可能です。
また、契約の締結や承認にかかる時間を短縮できるため、工程の遅れを最小限に抑えられます。さらに、契約状況と実際の工事進捗を連動させることで、より精度の高い工程管理が実現します。
これにより、リソースの適切な配分や工期遅延のリスク低減につながり、プロジェクト全体の効率化と成功率の向上が期待できます。
モバイルワークが促進される
電子契約システムの導入は、建設業界におけるモバイルワークの促進と働き方改革の実現にも大きく貢献します。
現場担当者がオフィスに戻ることなく、現場から直接契約書の確認や承認を行えるようになるため、移動時間の削減と業務効率の向上が図れます。また、時間や場所の制約なく契約業務が行えるため、柔軟な働き方が可能です。
こうした取り組みは、長時間労働の是正やワークライフバランスの改善にもつながります。さらに、遠隔地の現場管理も容易になるため、地方の工事案件でも都市部の優秀な人材を活用しやすくなります。
品質管理と安全性の向上に貢献する
電子契約システムの導入は、建設プロジェクトの品質管理と安全性の向上にも貢献する要素となります。
契約書や仕様書がデジタル化され、常に最新版にアクセスできることで、誤った情報にもとづく作業や手戻りのリスクが大幅に減少します。また、変更履歴が明確に記録されるため、設計変更や仕様変更の経緯を正確に追跡できます。
これにより、品質に関する問題が発生した際の原因究明や責任の所在の明確化が容易になります。安全面では、最新の安全基準や作業手順を含む契約書や添付文書を、現場の作業員がリアルタイムで確認できるため、安全管理の徹底につながります。
さらに、電子署名による確認プロセスを経ることで、重要な安全指示の伝達や理解の確認が確実に行えるようになり、事故リスクの低減につながります。
電子契約のメリットや概要をさらに詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてください。
電子契約とグレーゾーン解消制度
基本的には有効だと考えられる電子契約ですが、裁判になったときに有効な契約として認められるのか、どのような要件を満たせば真正性が高いとみなされるのかなど未確定の論点はいくつかあります。実際の判例も依然として少なく、制度としては手探りの状態です。
そのためいくつかのベンダーが、自社の提供する電子契約システムが建設請負契約において有効なのかを、グレーゾーン解消制度を活用して確認しています。
グレーゾーン解消制度とは?
グレーゾーン解消制度とは、産業競争力強化法にもとづき、事業者が現行の規制範囲が不明確な場合、具体的な事業計画に即して、あらかじめ規制適用の有無を官庁に確認できる制度のことです。
官庁の見解が裁判になったときに直接認められるわけではないものの、グレーゾーン解消制度を活用して適用の有無に関する官庁の見解がわかれば、一定の安心感をもって安心して事業を行えます。
建設業の電子契約のグレーゾーン
建設業において電子契約が認められうるのは、建設業法第19条第3項のとおりです。
また、第3項で記載されている基準はさらに詳しく建設業法施行規則第13条の4で示されていますが、具体的にどのシステムがこの基準に適合しているかは明確でありませんでした。
建設業請負契約に有効な電子契約システム
本記事で紹介した次のサービスは、グレーゾーン解消制度を活用して、建設業法施行規則第13条の4に技術的に適合することを確認しています。建設業界で導入を検討する際は、こちらの情報も参考にしながら比較・検討しましょう。
※1出典:弁護士ドットコム「建設業法グレーゾーン解消制度による電子契約の適法性確認—建設工事請負契約の電子化がさらなる規制緩和 | クラウドサイン」(2025年12月4日閲覧)
※2出典:NXワンビシアーカイブズ「電子契約サービス『WAN-Sign』が『グレーゾーン解消制度』を活用し、建設業法における適法性を確認いたしました|お知らせ|データ・ソリューション事業|株式会社NXワンビシアーカイブズ」(2025年12月4日閲覧)
※3出典:日鉄日立システムソリューションズ「建設業界への電子契約サービスのご提供」(2025年12月4日閲覧)
建設業も電子契約システム活用で業務効率化を
建設業のように、ひとつの工事でも多くの協力事業者やサプライヤーが関わりうる事業の場合、それに伴う契約書の枚数も膨大になります。
契約書の数が増えると収入印紙代や保管のためのコストが発生するだけでなく、契約に時間がかかったり、書類の紛失リスクがあったりと、事業の安定した遂行を妨げる要因となるおそれがあります。
しかし電子契約システムを使用することにより、収入印紙代や保管、契約書郵送などのコストの削減が可能です。加えて、書類紛失リスクを軽減し、契約書の検索作業も速やかに行えるようになります。
ルールの整備やマニュアルづくりは必要になりますが、それ以上のメリットが見込めます。
業務効率化、生産性向上に取り組もうとしている建設事業者は、ぜひ電子契約システムの導入を検討しましょう。
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