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電子契約に関する法律一覧!有効性や法的効力をわかりやすく解説

最終更新日:(記事の情報は現在から31日前のものです)
電子契約システムの法的効力を担保する「民法」や「民事訴訟法」といった一般的な契約に関する法律に加え、「電子署名法」や「電子帳簿保存法」といった関係する法律と、政府の動向などを解説していきます。

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電子契約とは

電子契約とは、紙を使わずパソコンやスマートフォンで契約書を作成し、契約を締結する方法をいいます。一般的な紙ベースの契約書のように「ハンコ」や「直筆のサイン」は必要なく、オンライン上で契約書のやり取りを行います。締結が完了した契約書は電子データとしてクラウドやパソコン内のハードディスクに保管されるのが特徴です。

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電子契約の法的有効性

結論からいうと、電子契約にも法的有効性はあります。そもそも「契約」は、紙や電子に関わらず、当事者同士の合意があった時点で成立します。いわゆる「口約束」でも法的には契約締結が可能です。しかし、それではトラブルに発展する可能性が高いため、紙や電子上で証拠を残すことでリスクを回避します。

しかし、紙と比べて電子契約には物理的な証拠がありません。したがって「電子署名」や「タイムスタンプ」といった仕組みを使って契約の証拠を担保し、紙の契約書と同等の効力をもたせる必要があります。

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電子契約にまつわる法律一覧

民法や電子署名法、民事訴訟法など、電子契約に関わる法律はさまざまです。それぞれの法律について詳しく解説します。

民法

民法には、「契約とはどういったものなのか」「何をもって契約が締結されるのか」といった内容が記されています。具体例として、民法第522条の文章を紹介します。

第五百二十二条 契約は、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示(以下「申込み」という。)に対して相手方が承諾をしたときに成立する。 2 契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない。 (承諾の期間の定めのある申込み)

※引用:e-GOV 法令検索「民法(明治二十九年法律第八十九号)」(2024年9月19日閲覧)

上記は、「合意があった時点で契約は成立する」「書面がなくても契約とみなされる」といった意味です。

電子署名法

電子署名法には、電子契約書の証拠をもたせるために必要な「電子署名」に関する内容が規定されています。

第三条電磁的記録であって情報を表すために作成されたもの(公務員が職務上作成したものを除く。)は、当該電磁的記録に記録された情報について本人による電子署名(これを行うために必要な符号及び物件を適正に管理することにより、本人だけが行うことができることとなるものに限る。)が行われているときは、真正に成立したものと推定する。

※引用:e-GOV 法令検索「電子署名及び認証業務に関する法律(平成十二年法律第百二号)」(2024年9月19日閲覧)

「電磁的記録」とは、電子契約の内容を保存する電子ファイルを指します。このファイルに電子署名が行われていれば契約が成立する、といった意味です。ただし、法的効力を得るためには、契約の「本人性」と「非改ざん性」の証明が必要となります。

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民事訴訟法

民事訴訟法とは、個人や法人のあいだで発生した民事トラブルの解決を目的とした裁判手続きです。電子契約に関するトラブルを解決するためにも、民事訴訟法の内容を押さえておく必要があります。とくに押さえておきたいのは第228条です。

第二百二十八条文書は、その成立が真正であることを証明しなければならない

※引用:e-GOV 法令検索「民事訴訟法(平成八年法律第百九号)」(2024年9月19日閲覧)

4 私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する。

※引用:e-GOV 法令検索「民事訴訟法(平成八年法律第百九号)」(2024年9月19日閲覧)

「文書自体が真正(本物)であり、かつ契約が成立していることを証明しなければならない」と書かれています。文書が真正(本物)かどうかは、第4項にて「本人または代理人による署名または押印がある」ことで判断します。つまり、電子契約における「電子署名」のことです。

電子帳簿保存法

電子帳簿保存法とは、国税関係の帳簿や書類を電子データとして保存することを認める法律です。電子契約書も、この「電子帳簿保存法」に該当し、法令にしたがってデータを保存しなければなりません。2022年1月の法改正では、事前承認手続きの廃止・電子取引における、書面による保存の廃止・電子保存義務化の2年宥恕(ゆうじょ)処置といった条項が変更されました。

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IT書面一括法

IT書面一括法とは、交付や提出が求められる書類において、一定の条件を満たすことで電子的手段を認める法律のことです。2001年4月に電子署名法と同時に施行された法律で、正式名称を「書面の交付等に関する情報通信の技術の利用のための関係法律の整備に関する法律」といいます。

この法律によって、電子契約を含む電子取引が促進されるようになりました。なかでも建設業界によい影響を与えたといわれています。

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e-文書法

e-文書法は、商法や税法などにおいて「紙での保管」が義務付けられていた書類に対して電子データ保存を認める法律です。電子帳簿保存法と類似していますが、電子帳簿保存法は国税関連の書類に特化しているのに対して、e-文書法は帳票や契約書など全般を対象にしているため対象範囲が広い点で異なります。e-文書法について詳しくは次の記事をご覧ください。

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印紙税法

印紙税法とは、契約書や領収書など特定の文書について課税する旨を定めた法律です。印紙税法の中で電子契約が無税である旨は定められていませんが、印紙税法3条には次のように定められています。

別表第一の課税物件の欄に掲げる文書〜中略〜の作成者は、その作成した課税文書につき、印紙税を納める義務がある。

※引用:e-GOV 法令検索「印紙税法(昭和四十二年法律第二十三号)」(2024年9月19日閲覧)

また、印紙税法基本通達44条では次のように記載されています。

法に規定する課税文書の「作成」とは、単なる課税文書の調製行為をいうのでなく、課税文書となるべき用紙等に課税事項を記載し、これを当該文書の目的に従って行使することをいう。

※引用:国税庁「印紙税法基本通達 第7節 作成者等 第44条」(2024年9月19日閲覧)

用紙に課税事項を記載しない電子契約は、課税文書に該当しないため、印紙税は必要ないとされています。

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電子契約の利用者を保護する法律について

電子契約に関する法律には、電子契約の有効性に関する法律のほかに利用者を保護する法律も存在します。法律名と内容とまとめたので、次の表をご覧ください。

法律名 内容
電子契約法 電子商取引(インターネットを通じた取引)において消費者を救済するための法律。たとえば、消費者の操作ミスに対する予防措置を事業者が講じていなければ契約を取り消せる、といった内容が記されている。
借地借家法 土地や建物の貸し借りするにあたって、その期間や権利、更新などについて定めた法律。2022年5月18日の法改正によって電子契約が可能となった。
宅地建物取引業法 宅地や建物の取引や、購入者の利益や流通の円滑化に関するルールについて定めた法律。2022年5月18日に施行された改正法によって、相手の承諾を条件として電子契約での締結が可能となった。
特定商取引法 事業者の違法・悪質な勧誘行為等を防止し、いわゆるクーリングオフといった消費者の利益を守る民事ルールが定められた法律。2023年6月1日の法改正により、消費者から事前の承諾を得ることで電子契約が可能となった。
下請法 親事業者が下請事業者に対して地位を乱用しないようにし、下請事業者の立場を守る法律。事前に同意を得られている場合、電子契約を利用できる。
労働基準法 労働者の適切な身分や権利を守る法律。以前までは書面交付にて雇用契約が結ばれていたが2019年4月1日より、電子通信(FAXや電子メール、電子契約システム)による交付も可能となった。
建設業法 建設業者の資質向上や建設工事請負契約に関するルールを定めた法律。工事請負契約に関しては書面による締結を原則とするが、相手の承諾があれば電子契約による締結が可能。

電子契約を導入するメリット

電子契約を導入するメリットとして次のものがあげられます。

  • 契約締結までのリードタイム短縮
  • 書類の保管・管理の工数削減
  • 事務作業やコストの軽減
  • テレワークとの相性がよい
  • 契約の更新漏れの防止
  • コンプライアンス強化

契約締結までのリードタイム短縮

紙契約だと契約書の作成や製本、郵送に時間がかかりますが、電子契約であればオンラインで押印や署名が可能です。その結果、契約締結までのリードタイムが短縮につながります。スピードが重要なビジネスの現場において、電子契約を導入するのは大きなメリットです。

書類の保管・管理の工数削減

紙の契約書の場合、ファイリングや倉庫の施錠など物理的な手間が多く発生します。「保管するスペースがない」といった問題も起こるでしょう。その点電子契約では、契約書データをクラウドで保管可能。保管や管理の工数が大幅に削減されます。

事務作業やコストの軽減

電子契約の導入によって、紙契約で発生していた次のような事務作業やコストを削減可能です。

  • 印刷・製本の手間
  • 収入印紙を貼り付ける作業
  • 宛名書きや封入、郵送の手間
  • 印刷やインク代、収入印紙のコスト

電子契約では、システム上で契約書を作成し、オンラインで相手に送付するだけです。これまで発生していた事務作業の手間やコストのほとんどを削減できます。

テレワークとの相性がよい

電子契約では、テレワークやフレックスタイムなど、オフィスにいない状況でも契約書のやり取りが可能です。手書きでのサインや押印が必要ないため、「印鑑を押すためだけに出勤する」といった無駄も省けます。

契約の更新漏れの防止

紙の契約書を大量に管理していると、「更新漏れ」が起こりやすくなります。更新期限を逃すことで取引先に迷惑をかけてしまうこともあるでしょう。その点電子契約では、システム内で契約期限を管理可能です。アラートで期限を知らせてくれるサービスもあります。

コンプライアンス強化

電子契約の導入によって、企業における法令遵守を示す「コンプライアンス」の強化が可能です。紙の契約書では、書類の偽造や改ざんのリスクがあり、コンプライアンスに懸念が残ります。その点電子契約では、「電子署名」や「タイムスタンプ」によって本人性、時系列の正確性を担保できます。

電子契約を導入する際の注意点やデメリット

電子契約には多くのメリットがある反面デメリットもあります。とくに次の点には注意しましょう。

  • 契約内容に応じた法的要件の理解が必要
  • 取引先の合意と協力が必要
  • 社内の業務フローを見直す必要がある
  • セキュリティリスクを否定できない
  • 無権代理のリスク低減に向けた対策が必要

契約内容に応じた法的要件の理解が必要

電子契約が法的に認められているとはいえ、すべての契約タイプが電子契約で適切に扱われるわけではありません。電子化できない書類の例は次のとおりです。

電子化できない書類の例 該当する法律
事業用借地権設定契約書 借地借家法(事業用定期借地権等)第二十三条
3 前二項に規定する借地権の設定を目的とする契約は、公正証書によってしなければならない。
引用:e-Gov法令検索「借地借家法」(2024年9月19日閲覧)
※2022年5月18日の法改正で電子契約締結が認められたのは「一般定期借地」のみで、「事業用定期借地」は依然として公正証書が必要
任意後見契約 任意後見契約に関する法律 第三条
任意後見契約は、法務省令で定める様式の公正証書によってしなければならない。
引用:e-Gov法令検索「任意後見契約に関する法律」(2024年9月19日閲覧)
農地の賃貸借契約書 農地法 第二十一条
農地又は採草放牧地の賃貸借契約については、当事者は、書面によりその存続期間、借賃等の額及び支払条件その他その契約並びにこれに付随する契約の内容を明らかにしなければならない。
引用:e-Gov法令検索「農地法」(2024年9月19日閲覧)

近年、電子契約に関わる法改正が進んでおり、以前は電子契約が認めれていなかった領域も一定条件を満たすことで認められるようになっています。たとえば、過去に紙の契約書が必要とされていた借地借家法や下請法の適用領域においても、現在は一部の案件で電子契約が認められるようになっています。ただし、すべての契約が電子化できるわけではないため、案件ごとに電子契約が可能かどうか、また電子契約を行うための要件(電子署名やタイムスタンプの有効性など)を最新の法改正情報とともに確認しておきましょう。

取引先の合意と協力が必要

電子契約も紙契約と同じように、取引先との合意が必要です。取引先が電子契約システムに対して懐疑的だったり、ITツールに対してネガティブに思っていたりするケースもあるでしょう。その場合、電子契約に切り替えるメリットや法的効力などをわかりやすく説明し、協力を仰ぐことが大切です。

社内の業務フローを見直す必要がある

電子契約はスピーディーに契約を結べますが、紙から電子に切り替えるわけなので、社内の業務フローを大きく変えなければなりません。契約から締結までのプロセスを見直したり、従業員がシステムを使えるようになるための教育が必要だったりします。なかにはITツールに抵抗のある従業員もいるので、社内への周知も必要です。

セキュリティリスクを否定できない

電子契約においては、改ざんや情報漏えい、破損といったリスクが考えられます。セキュリティがぜい弱だと安全性のリスクが高まるため、次のような対策がされたシステムを選びましょう。

  • ログイン時の多要素認証
  • 細かいアクセス権限の設定
  • タイムスタンプの付与
  • 電子印鑑・電子署名
  • 改訂履歴の記録

紙の契約書とは違ったセキュリティ対策が求められるため、管理担当者のセキュリティ意識を高めておきましょう。

無権代理のリスク低減に向けた対策が必要

無権代理とは、契約者としての権限をもっていないにもかかわらず、本人の代理として契約を行うことです。契約無効といったトラブルにつながる危険性があるため、電子契約を導入する際は、無権代理を防ぐための対策が必要です。

たとえば、ICカードといったモノ要素による認証「当事者署名型」であれば無権代理を回避できます。しかし電子契約システムでは契約画面へのURLが付いたメールを送付して、アクセスしてもらう「事業者署名型(指図型・立会人型)」が一般的です。

この方法では、メールアドレスの所有者がそもそも契約者としての権限を与えられておらず、後々無権代理として契約無効にされる危険性があります。しかし、次の対策によってリスクの低減は可能です。

  • 契約権限があるかを事前に書面で確認
  • 事前登録フォームへの情報登録
  • 契約書に契約権限に関する条項を盛り込む
  • 一定以上の役職者のみで締結する

事前登録フォームでは、契約権限がある人物の役職や氏名、メールアドレスなどを登録してもらう方法で、管理しやすいのがポイントです。また契約書に契約権限に関して異議申し立てや損害を与えない旨の記載によって真正性も補充できます。

さらに、表見代理を主張しやすい部長や課長職以上で締結するようルールを定めるのもおすすめです。代表取締役だけで契約を行うと無権代理を防ぎやすくなります。

電子契約システムを導入で契約をスムーズに進めよう

電子契約も紙契約と同じように法的効力をもちますが、本物であることを証明するための「電子署名」が必要です。法的効力は、民法や民事訴訟法、電子署名法、電子帳簿保存法などで法的効力が担保されています。

契約自体を滞りなく進めたり、契約にあたって当事者間でトラブルが発生した際、スムーズに対応したりするためにも、法律の内容を理解しておくことが大切です。

ただし、なかには電子契約ができない契約書もあるので注意が必要です。電子契約に移行したい書類を電子化しても問題ないか確認し、スムーズな電子契約を行いましょう。

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