電子帳簿保存法とは?2024年の改正点や3つの区分
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電子帳簿保存法とは
電子帳簿保存法とは、税務関係の帳簿や書類をデータとして保存する際の、ルールや要件がまとめられた法律です。税務関係の帳簿や書類は原則として紙で保存しなければなりませんが、電子帳簿保存法の要件を満たすことでデータ保存が認められます。
電子帳簿保存法は1998年に制定され、これまでに何度も改正されてきました。2005年のスキャナ保存制度の開始や、2016年に実施されたデジタルカメラ・スマートフォンのデータ保存への対応などが代表的です。2022年の改正では検索性やタイムスタンプの要件が緩和され、よりわかりやすい法律へと進化しています。
そして、 2023年12月31日をもって電子帳簿保存法の宥恕措置が終了し、2024年1月1日より電子取引の電子データ保存が完全義務化されました。
電子帳簿保存法の区分
電子帳簿保存法には3つの区分が存在します。
- 電子帳簿等保存
- スキャナ保存
- 電子取引データ保存
それぞれ対象となる書類や保存要件が異なるため、要点を押さえることが大切です。区分ごとの特徴を詳しく解説します。
電子帳簿等保存
電子帳簿等保存では、会計ソフトや文書管理システムなどの専用システムで作成した帳簿書類のデータ保存が認められています。主な対象範囲である決算や納税に関係する帳簿書類は次のとおりです。
- 仕訳帳
- 総勘定元帳
- 貸借対照表
保存要件は、「その他の電子帳簿」と「優良な電子帳簿」の2種類に分かれます。システム関係書類の備え付けや見読可能性の確保など、特定の要件を満たすと優良な電子帳簿として認められ、過少申告加算税の軽減や青色申告特別控除額の増額などの恩恵を得られます。
スキャナ保存
スキャナ保存では、紙の書類をスキャンして電子化する際の要件が定められています。国税関係書類のうち、請求書や領収書、納品書といった取引関係書類が主な対象範囲です。
要件を満たすには、データ読み取り時に一定水準以上の解像度を維持したり、帳簿との相互関連性を保持したりする必要があります。また、利用しているシステムによってはタイムスタンプも必要です。
電子取引データ保存
電子取引データ保存では、電子取引データの保存方法や要件が定められています。対象となるのは、取引関係書類のなかでも電子的に授受したもののみです。そのため、郵送などで受け取った紙の書類は対象に含まれません。
注意すべきは、スキャナ保存への対応は任意なのに対し、電子取引データ保存への対応は義務化されている点です。タイムスタンプの付与や検索機能の確保など、要件を満たしたうえで電子取引データを保存する必要があります。
電子帳簿保存法の対象書類
電子帳簿保存法では、すべての帳簿書類が対象になるわけではなく、一定の範囲が定められています。自社で扱っている帳簿書類が、どの対象範囲に含まれるかを確認しましょう。
対象となる帳簿書類
電子帳簿保存法の対象書類は、国税関係帳簿と決算関係書類、取引関係書類の3つに分かれます。分野ごとの代表的な書類は次のとおりです。
- 国税関係帳簿:仕訳帳・総勘定元帳・売上台帳・現金出納帳など
- 決算関係書類:貸借対照表・損益計算書・棚卸表
- 取引関係書類:見積書・発注書・納品書・契約書など
電子帳簿保存法は上記のように、幅広い形式の帳簿書類に対応しています。
対象とならない帳簿書類
対象となる書類がある一方で、対象とならない書類も存在します。電子帳簿保存法の対象となるのは、あくまでデジタル上で一貫して作成・授受された国税関係の帳簿書類のみです。
そのため、たとえば手書きで作成した主要簿や補助簿、請求書などは対象に含まれません。対象外の帳簿書類はスキャナ保存を行うとしても、必ず紙の原本を保管する必要があります。
電子帳簿保存法の保存要件
電子帳簿保存法をもとに帳簿書類をデータ保存するには、電子帳簿等保存やスキャナ保存といった類型ごとの要件を理解することが大切です。電子帳簿等保存・スキャナ保存・電子取引データ保存の3つに分けて、それぞれの要件を解説します。
電子帳簿等保存の要件
電子帳簿等保存の要件は、優良な電子帳簿とその他の電子帳簿によって差があります。優良な電子帳簿として認められるには、次のすべての要件を満たさなければなりません。
- 概要書や仕様書といったシステム関係書類を備え付ける
- 保存場所にディスプレイやプリンターなどの出力環境を用意する
- 税務職員のデータダウンロードの要求に応じられる環境を用意する
- 記録事項の訂正・削除の事実を確認できるシステムを利用する
- 業務処理期間経過後のデータ入力の事実を確認できるシステムを利用する
- 電子化した帳簿と関連する帳簿の記録事項に相互関連性がある
- 保存したデータの検索性を確保する
一方、その他の電子帳簿に関しては上記のうち1~3の要件を満たすだけで済みます。
スキャナ保存の要件
スキャナ保存では、契約書や納品書をはじめとする重要書類と、発注書や見積書などの一般書類で要件がやや異なります。ただし、いずれの場合にしても次の要件は必ず満たさなければなりません。
- 早期入力方式または業務処理サイクル方式によって期間内に入力する
- 200dpi相当以上の解像度を確保する
- 読み取り時の赤・緑・青色の各階調が256階調以上である
- 14インチ以上のカラーディスプレイやカラープリンターを備え付ける
- 速やかにデータを出力できる環境を用意する
- 概要書や仕様書といったシステム関係書類を備え付ける
- 入力期間内にタイムスタンプを付与する
- データの訂正・削除の事実を確認できる、または訂正・削除が不可能なシステムを利用する
- 保存したデータの検索性を確保する
重要書類と一般書類で要件が異なるのは、帳簿との相互関連性にあたる部分です。重要書類をスキャナ保存する際は、スキャナデータと関連する帳簿の記録事項に相互関連性を持たせる必要があります。一方、一般書類では相互関連性の処理が不要です。
電子取引データ保存の要件
電子取引データ保存では、真実性と可視性の2つの要件を満たさなければなりません。
真実性を確保するには、データの発行や授受の際にタイムスタンプを付与する、データの訂正・削除に関する事務処理規定を設けるといった方法が用いられます。一方、可視性を確保する場合、システム関係書類や操作マニュアルの備え付け、検索機能の確保など、複数の要件をすべて満たす必要があります。
電子帳簿保存法の改正ポイント
電子帳簿保存法に対応するには、基礎知識に加え改正時のポイントを理解することが重要です。なかでも2022年に行われた改正では、押さえるべき要素が多くあります。2022年の改正ポイントは次のとおりです。
- 電子取引データの保存が義務化
- 検索要件が緩和
- スキャナ保存の要件が簡素化
電子取引データの保存が義務化
電子帳簿法の3類型のうち、電子取引データ保存が義務化されました。電子取引の書類に関して、法改正前は紙での印刷・保存が認められていましたが、現在は必ずデータとして保存しなければなりません。
たとえば、電子メールの添付書類や請求書発行システム経由で取得した請求書、ECサイトからダウンロードした領収書などが該当します。データとして保存する際も、真実性と可視性の2つの要件を満たす必要があるので注意が必要です。
検索要件が緩和
改正電子帳簿保存法では、3類型のすべての範囲で検索要件が緩和されています。
電子帳簿等保存に関しては、以前まで必要だった検索要件を満たす必要がありません。検索要件が重要になるのは、優良な電子帳簿として認定を受ける場合のみです。
スキャナ保存と電子取引データ保存では、検索要件を満たす必要があるものの、必要な項目が簡素化されています。日付や金額で検索できる、範囲を指定できるなどの限定的な条件のみで済みます。
スキャナ保存の要件が簡素化
スキャナ保存の要件が簡素化されたのもポイントです。
法改正前はデータスキャンからタイムスタンプを付与するまで、3営業日の期限が定められていました。しかし、現在は最長2か月と7営業日以内に延長されています。
また、一般書類において、スキャナデータと帳簿との相互関連性を保持しなければならない要件が撤廃されました。相互関連性を持たせる必要があるのは重要書類に限られます。
電子帳簿保存法に対応する際の注意点
電子帳簿保存法に対応するに際して、いくつか注意点が存在します。要点を押さえたうえで、事前に必要な対策を講じましょう。
帳簿や書類の紙での管理が難しくなる
2022年の法改正により、電子取引に使った書類のデータ保存が義務化されました。現在は義務化の対象が電子取引データ保存の領域のみに限定されていますが、DXやデジタル化がさらに普及すれば、帳簿や書類の紙での管理がいっそう難しくなることも考えられます。
そのため、この機会にDXやデジタル化につながるシステムを整備するのも方法の一つです。帳簿書類をデータ管理できるシステムにはさまざまな種類がありますが、取り急ぎ現在の法体制に対応するなら、電子契約システムが向いています。
電子契約システムには、電子署名や電子証明書、タイムスタンプなど、電子帳簿保存法に対応しやすい幅広い機能が搭載されています。電子契約システムの仕組みや機能、選び方など、こちらの記事で詳しく解説しているので参考にしてください。
不正行為にはペナルティが課される
電子帳簿保存法で不正行為が発見された場合、ペナルティが課される点に注意が必要です。
データの保存にあたり隠蔽や仮装が発覚し、その行為によって申告漏れが生じると重加算税が10%分加重されます。2022年の法改正では、さまざまな要件が緩和されて利便性が向上しましたが、罰則が強化されている点にも注意しなければなりません。
電子帳簿保存法に対応するための体制を整えよう
電子帳簿保存法は対象となる帳簿書類の範囲が広く、どのような企業でも対応が必要です。そのため、電子帳簿保存法の要件や改正ポイントをしっかりと押さえる必要があります。そのうえで次のような形で社内体制を整えましょう。
- 電子データとして保存する必要のある帳簿書類の数や種類を把握する
- データの保存方法や保存場所を決める
- 現状の業務フローを棚卸しして、新たな運用ルールやワークフローを確立する
- 保存要件を満たすため、システムの導入や備品の購入などを検討する
電子帳簿保存法に対応すれば、ペーパーレス化や業務効率化などの恩恵が生まれます。もちろん対応するためには手間もかかりますが、メリットを意識して対応方法を検討することをおすすめします。