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通勤費の課税・非課税や控除の基準を交通機関ごとに解説!

最終更新日:(記事の情報は現在から693日前のものです)
給与の計算において欠かせないのが経費の1つとなる通勤費の精算。通勤費支給の基準は会社によって異なりますが、課税・非課税の基準は国によって定められています。本記事ではわかりづらい通勤費の課税や控除について解説します。

通勤費とは

通勤費とは、自宅から会社に通勤するために給与とともに支給される通勤手当のことです。通勤方法は電車やバス、自転車など従業員によって異なりますが、方法に応じて精算されます。

交通費との違い

交通費は、社員が営業・出張などを目的として移動した際に発生した費用のことを言います。たとえば、出張時の新幹線代、営業先へ出向く際の費用は交通費になります。

一般的に通勤費は手当として給与と合わせて支給されますが、交通費は社員が立て替えた金額をあとから精算する違いもあります。

通勤費を定める方法

通勤費のルールは基本的に社内の規則で定められます。

通勤費は公共交通機関を利用して通勤する場合は定期代、自動車通勤の場合はガソリン代に分かれるのが一般的です。パートのように月の勤務日数が少ない場合、出勤日数の往復の運賃を日割り計算する場合もあります。

通勤費は、どの企業でも必ず支給されるわけではありません。法定の福利厚生ではないため、通勤費が支給されない企業もあります。定める方法に特別の決まりはなく、支給方法や計算方法はそれぞれの企業に委ねられています。

交通機関ごとの非課税限度額

一般的に、従業員が手当を受け取ると「所得」とみなされ、金額に応じて所得税が発生します。しかし、通勤費は基本的には経費として計上されるので、課税の対象にはなりません。しかし、法定の非課税上限を超えてしまうと課税対象となります。

そのような交通機関ごとの非課税の限度額を紹介します。

電車・バスの場合

電車やバスの通勤の場合、非課税の限度額は月15万円です。もっとも経済的かつ合理的な経路および方法で通勤した場合の通勤費が非課税額として認められます。

ただし「経済的かつ合理的」とするだけでは基準が曖昧になりやすいため、インターネット検索のように確認する手段を規則で明確に定めましょう。とくに端的かつ明快なのは定期代です。多くの会社では1か月の定期代を通勤費として定義しています。

※出典:国税庁「通勤手当の非課税限度額の引上げについて」(2022年12月1日閲覧)

新幹線の場合

新幹線を利用した場合も非課税の限度額は月15万円です。ただし、グリーン車の利用は合理的でないとして認められておらず、グリーン券の料金は課税対象になります。

※出典:国税庁「通勤手当の非課税限度額の引上げについて」(2022年12月13日閲覧)

タクシー通勤・運転手付き通勤の場合

タクシー通勤や運転手付き通勤は合理的な経路であると認められていません。ただし、運転手を会社で雇っている場合には運転手の給与は経費で精算されます。

ただし緊急業務が発生して出勤を命じ、タクシー代を支給する場合は非課税です。その場合、内容は請求書に明確に記載することが求められています。

引用:国税庁「緊急業務のために出社する従業員に支給するタクシー代等

車通勤の場合

車で通勤する場合には、最大31,600円までの上限が距離によって規定されます。下記が非課税となる範囲です。

片道の通勤距離 1か月当たりの限度額
2km未満 全額課税
2km以上10km未満 4,200円
10km以上15km未満 7,100円
15km以上25km未満 12,900円
25km以上35km未満 18,700円
35km以上45km未満 24,400円
45km以上55km未満 28,000円
55km以上 31,600円

片道5kmで5,000円を会社が支給しているとすると、「5,000-4,200=800円」が課税の対象になります。また、図の非課税範囲を超えている場合は、通勤費を支給した月の給与に超過金額を上乗せしたうえで源泉徴収を行います。

引用:国税庁「マイカー・自転車通勤者の通勤手当

自転車通勤の場合

自転車通勤もマイカーと同様、一定限度額まで非課税になります。限度額については、次の通りです。

片道の通勤距離 1か月当たりの限度額
2km未満 全額課税
2km以上10km未満 4,200円
10km以上15km未満 7,100円
15km以上25km未満 12,900円
25km以上35km未満 18,700円
35km以上45km未満 24,400円
45km以上55km未満 28,000円
55km以上 31,600円

引用:国税庁「マイカー・自転車通勤者の通勤手当

徒歩通勤は課税対象になる

交通機関を使わず徒歩のみで通勤している従業員に対して通勤手当を支給する企業もありますが、その際は課税対象になります。

複数の交通手段を組み合わせて通勤する場合

車と電車を組み合わせて利用している場合のように、複数の交通手段を組み合わせて利用しているときには、交通機関の通勤定期代と、距離に応じた車の非課税限度の合計が非課税額になります。組み合わせると15万円を超える場合は課税対象になります。

引用:国税庁「電車・バス通勤者の通勤手当

通勤費(通勤手当)の具体例

通勤費の具体的な例を、電車や車の使用や通勤にかかる距離で場合分けして解説します。

例1:電車+徒歩

電車+徒歩の場合、もっとも合理的な方法であれば、電車賃は非課税通勤手当として処理されます。

【通勤内容】

  • 自宅からA駅まで徒歩
  • A駅からB駅まで電車(定期券15,000円)
  • B駅から会社まで徒歩
  • 通勤手当として15,000円(月)を支給

【課税内容】

  • 課税通勤手当:0円
  • 非課税通勤手当:15,000円

【仕訳】

借方 金額 貸方 金額
給与 15,000円 現金預金 15,000円

例2:会社まで車通勤で2km未満

続いて、会社まで車通勤で2km未満のケースです。先ほどお伝えしたように、2km未満だと課税対象となるため注意が必要です。

【通勤内容】

  • 自宅→会社まで車(1.5km)
  • 通勤手当として3,000円を支給

【課税内容】

  • 課税通勤手当:3,000円
  • 非課税通勤手当:0円

【仕訳】

借方 金額 貸方 金額
給与 3,000円 現金預金 3,000円

例3:会社まで車通勤で2km以上10km未満

会社まで車通勤で2km以上10km未満のケースです。この場合、4,200円までが非課税対象となります。

【通勤内容】

  • 自宅→会社まで車(7km)
  • 通勤手当として5,000円を支給

【課税内容】

  • 課税通勤手当:800円
  • 非課税通勤手当:4,200円

【仕訳】

借方 金額 貸方 金額
給与 5,000円 現金預金 5,000円

通勤費の不正受給にあたるケース

通勤費の支給では、不正受給に注意しましょう。通勤費を受け取りながら定期券を買わない、経路が変更になったのに申請していないなどは不正受給にあたる事例も存在しています。

定期を買わない

定期代の支給を受けているのに定期を購入せず、実際はマイカーや自転車、徒歩で通勤している場合は不正受給にあたります。電車通勤と偽って、支出していない代金を不正に受け取る行為です。

申請したとおりに通勤するものの、定期を購入しない場合もあります。SuicaのようなICカードを購入したり、その都度購入したりする場合です。テレワークが増え、その都度交通費を支払った方が定期代よりも支出が減ることもあるでしょう。

そのような行為への対応は、就業規則により異なります。通勤手当は定期券代の実費弁済とする規定がある場合、定期券を購入しなければ規則違反となる可能性もあるでしょう。

申請した方法以外での通勤

申請したルートとは異なる方法で通勤している場合も、不正受給とみなされます。

ただし、経路変更を忘れている場合もあります。そのような場合は過払いとなった金額を返金してもらい、注意すればよいでしょう。故意に申請しない場合は、不正受給として対処しなければなりません。

通勤費の不正受給は横領でない

通勤費の不正受給は、業務上横領にはあたりません。横領とは会社から預かって管理している金品を自分のものにする行為で、通勤費を不正に受け取る行為は該当しません。

横領となるのは、会社から金銭の管理を任されている経理の担当がその金銭を着服するような場合です。

しかし、不正受給は詐欺罪になる可能性があります。積極的に嘘の経路を申請して通勤費を受け取ることは、会社を欺く行為といえるからです。会社が意思に反して、その通勤費を交付したこと自体が損害になると考えられます。

実際にあった判例

通勤費の不正受給では、懲戒解雇の有効性を争う裁判がいくつも行われています。公共交通機関を利用すると嘘の申請をして通勤費を受け取っていた従業員を懲戒解雇した判例があります。

懲戒解雇を有効とした判例もありますが、それらは行為の悪質性や不正に受給した通勤費の金額、受け取っていた期間などが考慮されています。

明確な証拠がない、あるいは不正受給の金額が少ないとして解雇を不当とする判決も多いのが実情です。

裁判では、不正受給を懲戒事由に該当するとしながらも懲戒処分は相当性を欠くとしたものが多く、不正受給に対する懲戒処分の重さが問題となっています。

不正受給と考える場合は確実に証拠となるものを集め、妥当な処分を検討していく必要があるでしょう。

通勤費の注意点

通勤費に消費税は原則発生しない

原則、通勤費において消費税は発生しません。なぜなら通勤費(通勤手当)の消費税は、基本的には課税仕入れとなるからです。

課税仕入れとは、事業に必要なものを購入したときに、支出から消費税の控除を受けられるしくみです。通勤費は、社員が会社に来るための電車の定期代や車のガソリン代として支払っている費用のため、原則消費税が発生しないのです。

引用:国税庁「通勤手当、住居手当

通勤手当は社会保険料の計算に含まれる

所得税の計算において、非課税扱いとされているのが通勤手当です。一方で、社会保険料においては算定方式である「標準報酬月額」で通勤手当が含まれるので、注意する必要があります。

標準報酬月額は年収とは異なるもので、4月から6月の3か月間の通勤手当を含む給与の支給額平均に基づいて決定される金額です。

標準報酬月額は給料以外の各種手当も含んだ総支給額であるからです。そのため、毎月の通勤手当の金額次第で、社会保険料の負担が大きくなってしまうケースもあります。

課税通勤手当は給与に含めて計算する

課税通勤手当は年末調整の対象です。非課税限度額を上回る通勤費の支給を受けている場合は、年末調整で103万円の年収を計算する際、課税対象分を含めて計算しなければなりません。パートやアルバイトで配偶者控除を受ける従業員がいる場合には注意が必要です。

テレワーク中の通勤費は実態次第

テレワークによって在宅勤務になった場合、通勤手当の課税幾分は勤務の実態次第から判断します。たとえば勤務地が自宅だと課税対象になりますが、必要に応じて出社した際の通勤費を実費精算する場合は非課税と判断できるでしょう。

会計ソフトを導入して通勤費の管理は楽々

通勤費にはさまざまなルールがあり、法改正によって変わることも多いです。とくに課税・非課税の枠についての計算は、手間がかかる上に不測のミスが起こる可能性もあります。

会計ソフトを導入すれば、手間のかかる作業が不要になるうえに法改正も逃さずに対応できます。ぜひ会計ソフトの導入も検討してみましょう。

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