ハロー効果とは?人事用語の意味と事例、面接・人事評価に使える心理学
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ハロー効果とは
ハロー効果(halo effect)とは、人物やモノの一つの特徴に影響されて、全体の評価が歪められてしまう現象を指します。 社会心理学の用語で、わかりやすくたとえると「見た目が良いとすべてがよく見えてしまう」といった現象のことです。
ハローとは聖人の頭上に描かれることの多い「後光」を意味しており、後光が強調されることで、対象そのものが見えなくなり、正しい判断ができなくなる様子になぞらえています。
心理学では直感や先入観など「認知バイアス」の一つとされ、印象と実態に乖離がない場合は「真のハロー」、乖離がある場合は「ハローエラー」と呼ばれます。
ビジネスシーンでは人事評価や面接などで「ハロー効果」の言葉を聞くことが多いでしょう。ビジネスの現場では、乖離のある「ハローエラー」を指してハロー効果と呼ぶことが一般的です。
ピグマリオン効果との違い
ハロー効果と似た用語に「ピグマリオン効果」があります。ピグマリオン効果とは、他者からの期待によって成果に影響の出る現象のことです。
ギリシア神話の王「ピグマリオン」が、自身が思い焦がれた女性を彫像とし、その彫像が実際に人間となり2人が結ばれた神話になぞらえています。いわば「思いが形になる」といった意味合いです。期待をかけられることで本人が成長し、努力につながるという意味で使われます。
ハロー効果は「あなたはできる人だ」と誤って認識するのに対し、ピグマリオン効果は「あなたならきっとできる」と期待をかけることで、本人が「できるようになるために努力する」といった違いがあります。
ホーン効果との違い
ハロー効果と間違えやすい用語に「ホーン効果」もあります。ホーン効果とは、対象となる人物やモノの「悪いところ」だけ見てしまい、評価全体がマイナス方向に働く現象のことです。
たとえば、珍しい髪型や服装なだけで、「非道徳的だ」「頭が悪い」などと判断し、その人全体を否定的に評価してしまう、といった現象があげられます。
ハロー効果は、モノや人物の特徴に引っ張られて全体が歪んで見えることをいいますが、ポジティブ面、ネガティブ面どちらにも作用します。対してホーン効果は「ネガティブ面」のみに作用するのが特徴です。
ハロー効果の種類
ハロー効果は特定の部分によって全体が歪んで見えることをいいますが、「ポジティブ」と「ネガティブ」の両方に作用します。2つのハロー効果について解説します。
ポジティブ・ハロー効果
ポジティブ・ハロー効果は、ハローエラーが「ポジティブ」「肯定的」に働いたときの効果を指します。たとえば、ルックスの第一印象が良いだけで、性格も含めて人物すべてがよく見える、といった現象です。
ポジティブ・ハロー効果が作用すると、少しの欠点では相手のことを嫌いにならず、良い関係を継続しやすくなります。企業においてはマーケティングや人事評価にも活用されています。
ネガティブ・ハロー効果
対してネガティブ・ハロー効果は、ハローエラーが「ネガティブ」「否定的」に働いたときの効果をいいます。たとえば、成績の悪い生徒がいて、「テストの点数が悪い」を理由に、きっと素行も悪いんだろうと判断する、といった現象です。
企業にハロー効果があらわれる場面と具体例
ハロー効果は、ビジネスシーンにおいても頻出します。とくに多いのが「人事評価」「面接」「マーケティング」です。
人事評価
人事評価は、ハロー効果が出やすいシーンのひとつです。たとえば次のような場面があげられます。
- 営業成績が良い従業員に対して「営業以外の項目」も高く評価してしまう
- 英語のできる従業員に対して、本来の業務遂行能力を考えず「他の仕事もできる」と評価してしまう
- クライアントから一度苦情が出た従業員に対して「信頼されていない人物」と判断してしまう
従業員の一時的な能力や小さなミスを過大に評価し、それが人事評価に反映されてしまうケースがあります。
面接
人材採用における面接も、ハロー効果が働きやすいシーンです。たとえば次のような例があげられます。
- 応募者の「学歴が高い」だけで、仕事ができると判断してしまう
- 面接者の「息子と同じ大学」というだけで、応募者の全体が好印象となる
- 応募者が緊張でドアのノックを忘れただけで、「態度の悪い人」と判断してしまう
面接では、学歴や態度、服装、清潔感、声の大きさ、表情など、さまざまな要素にハロー効果が影響します。
マーケティング
企業がマーケティング施策を実行する際も、ハロー効果があらわれやすいです。たとえば、「テレビCMに好感度の高いキャラクターや有名人を起用して、企業イメージ向上を図る」といった例があります。
企業にとってイメージ戦略は非常に重要です。世間から少しでも良いイメージを持ってもらえるよう、好感度の高い人物を起用し、ポジティブなハロー効果を期待します。
ただし、起用している有名人が不祥事やトラブルを起こした場合、ハローエラーがネガティブに働くため注意が必要です。 ネガティブ・ハロー効果によって企業のイメージ低下、売上ダウンにつながる可能性があります。
ハロー効果を活用するメリット
ハロー効果は、企業だけでなく個人でも活用できます。 ハロー効果を活用することで次のようなメリットを得られます。
- 高評価を得やすくなる
- 信頼されやすくなる
- 悪い印象から好印象に変えられる
個人に対するハロー効果では、一つでも目立つ特徴があれば、それが高評価につながります。高評価を受けると、信頼も獲得しやすいです。企業では、テレビCMやWeb広告などに好感度の高い有名人やキャラクターを起用することで、世間からの好印象につなげられます。 最初マイナスイメージを持たれていても、一つの秀でた特徴によって好印象に逆転できる可能性もあります。
ハロー効果のデメリット
ハロー効果にはメリットがある反面デメリットもあります。とくに次の項目には気をつけましょう。
- 不当な評価を受ける可能性がある
- 一時的な効果なので持続しない
人事や面接でネガティブ・ハロー効果が働くのは、従業員にとってはデメリットです。不当な評価や納得のいかない人材配置がされる可能性があります。
またハロー効果は、ギャップがあった場合に持続しないのも難点です。たとえば、企業が応募者を「一流大学出身だから」という理由だけで採用しても、本当に自社の求める人材であるとは限りません。
もし仕事ができない、企業の思惑どおりに動いてくれない人材だった場合、ハロー効果はすぐに消えてしまいます。このように、効果が持続しない点はポジティブ・ハロー、ネガティブ・ハローのどちらにも共通しています。
企業におけるハロー効果以外の評価誤差
ハロー効果は、イメージと実際の評価が異なる「評価誤差」の一つです。ハロー効果以外にも、評価誤差が出やすいものがあります。たとえば次のような項目です。
- 寛大化傾向
- 中心化傾向
- 対比誤差
- 論理誤差
- 逆算化誤差
- 期末誤差
寛大化傾向
寛大化傾向とは、気遣いや批判を恐れる気持ちなどによって、評価全体が甘くなることを指します。
- 上司が部下に対して気を遣った評価をする
- 部下からの批判や反発を恐れて評価が甘くなる
- 適切な評価をできる自信がないため点数が甘くなる
寛大化傾向は、評価者(上司)が「嫌われたくない」「悪く思われたくない」といった気持ちに支配された場合に陥りやすいです。適切な評価ができないことは、部下の成長を妨げる要因にもなります。
寛大化傾向を防ぐには、公私混同を避ける、客観性をもった評価を心がけるといった対応が必要です。
中心化傾向
中央化傾向とは、上司が部下の「非常に優れている」「劣っている」といった極端な評価を避けて、「普通」と判断する傾向のことです。たとえば、5段階評価で「5」と「1」を避けて「3」と評価する、といったケースです。 当たり障りのない評価をすることは、上司にとって次のようなメリットがあります。
- 部下からの反発やクレームを避けられる
- 部下を観察していなくても適切に評価したように見える
あえて「普通」と評価することで、ネガティブな状況を隠せます。しかし、中央化傾向による評価は本質的な評価ではありません。
しかし中央化傾向による評価は本質的ではありません。適正な評価をするためには、ときに「5」や「1」をつけることも大切です。
中央化傾向を防ぐためには、6段階の偶数評価にする、十分な情報収集を行ったうえで評価するといった対応が必要です。
対比誤差
対比誤差とは、特定の人物を基準にして、その人物と対象者を比べることで誤差が生まれることです。たとえば次のようなパターンがあげられます。
- 上司自身にないスキルを有した部下に対して、「自分にないものを持っている」と考えて、必要以上の評価をしてしまう
- 主体的に動く上司が、慎重派の部下を「やる気のない人材」と捉えてしまう
対比誤差は「過小評価」や「過大評価」につながってしまう恐れがあります。対比誤差を防ぐためには、評価基準を明確にしたり、評価の根拠を確認したりといった対応が必要です。
論理誤差
論理誤差とは、客観的な事実を調べず、推論で評価することで生まれる誤差です。たとえば次のようなパターンがあげられます。
- 10年も経理部署にいるのだから、日常生活も几帳面に違いない
- 大学の経済学部を出ているのだから、金融について詳しいに決まっている
論理誤差では、上司自身の先入観によって、部下の人格や生活までを決めつけてしまいます。論理誤差を防ぐためには、部下をしっかりと観察したうえで客観的な評価をすることが大切です。
逆算化傾向
逆算化傾向は、あらかじめ決まっている最終評価から逆算して評価してしまうことです。たとえば、「企業として定める昇給基準に合うようにプロジェクトメンバーの評価を底上げし、帳尻を合わせる」といった例があげられます。
評価者の打算的な考えが原因で起こります。逆算化傾向を防ぐためには、評価基準を明確にする、関連部署の上司にも評価させるといった工夫が必要です。そもそも「最終評価から入力させない」なども有効な方法といえます。
期末誤差
期末誤差とは、期末近くにインパクトを残した人物だけを評価することで生まれる誤差です。たとえば次のようなパターンがあげられます。
- 普段やる気のなさそうな従業員が、期末にだけ大きな案件を取ってきたので、高く評価した
- これまでまったく発言のなかった従業員が、会議の最後にだけ発言をし、その意見が採用されたので高く評価した
たしかに、従業員が最後に大きな仕事を取ってきたり、今後につながる発言をしたりすることは、高い評価を受けるべきです。しかし、上司が「期末の成果」にだけ意識が向き、その成果だけで評価をしてしまうのは公正とはいえません。
従業員の成果や行動を日ごろから細かく記録する、数か月〜年単位の総合的な評価ができる仕組みを作るといった対策が必要です。
企業が人事評価で評価誤差を防ぐ方法
意識しなければ、すぐに評価誤差が起こってしまいます。企業が人事評価で評価誤差を防ぐポイントは次の2つです。
- 「恒常性」の意識
- 「客観性」の意識
「恒常性」の意識
人事評価における恒常性とは、同じ評価を何度行っても、同じ結果が得られることを指します。具体的な方法は次のとおりです。
評価基準を明確にする
人事評価の恒常性を保つためにも、評価基準を明確にすることが大切です。
たとえば、従業員の等級や役職、職種、成果などにカテゴライズし、それぞれをどの程度満たせば昇給するのか、を明確にしましょう。
また、従業員の日々の行動や成果を細かく記録したり、関連部署の上司にも評価してもらったりと、公正な評価を心がける仕組みが必要です。
評価理由を明記する
評価欄には、ただ単に数字で評価するだけでなく、「なぜその評価になったのか?」も記載すると、評価が恒常的になりやすいです。
理由を明記することで、上司は「先入観や感情が排除できているか」を確認できます。部下に対しても評価について細かく説明でき、後のフィードバックにも役立ちます。
「客観性」の意識
人事制度における客観性とは、誰が評価しても同じ結果を得られることです。部下との関わりが多い上司だと、評価が属人化しやすく、良くも悪くもハロー効果があらわれてしまいます。客観性を保つためにも、次のポイントを意識しましょう。
評価者をトレーニングする
評価の客観性を保つためには、評価を行う上司自身をトレーニングすることです。次のようなトレーニング方法があります。
- 講師が評価エラーが起きやすいケースを講義形式で教える
- 上司同士でグループを作り、評価基準について話し合う
- オブザーバー(第三者)も同席して評価を行う
このようなトレーニングを単独または複数を同時に行うことで、評価の客観性を高めましょう。
360度評価を導入する
360度評価とは、直属の上司だけでなく同僚や部下からも評価してもらう方法です。従業員は異なる立場かつ複数人から評価を受けられるため、評価に客観性や多角性が生まれます。360度評価によって、ポジティブ・ハロー、ネガティブ・ハローの両方が軽減され、評価に対する納得感も高まりやすくなります。
360度評価については次の記事で詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。
ハロー効果を理解して正しい評価基準を
ハロー効果は人事評価やマーケティングなどビジネスシーンでも活用されています。使い方次第ではプラスに働く一方、場合によっては従業員から不満の声が上がることもあります。 適切な人事評価を行うためには「心理的現象」は排除しなければなりません。そのためにも、ハロー効果がどのような形で私たちの心理面に影響するのか、理解することが重要です。
次の記事では、ハロー効果の影響をできるだけ抑えられる人事評価システムについて紹介しています。 人事評価でお困りの方は、この機会に導入をご検討ください。
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