ノーレイティングとは | 人材評価の新手法 - 導入方法・メリット・1on1の重要性を解説

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ノーレイティングという言葉が、人材評価の新手法として注目されています。GEやグーグル、P&Gなどのグローバル企業が導入し、日本でも一気に注目が集まりました。旧来の人材評価の課題を挙げ、解決策としてのノーレイティングの導入方法やメリットを解説します。
人事評価システム

(記事監修:カオナビ 取締役副社長 佐藤 寛之氏)

人材評価の新手法として注目「ノーレイティング」を解説

いま、企業の人事部門では「ノーレイティング」という言葉が注目されています。GEやグーグル、P&Gなどのグローバル企業が導入したことで、日本国内でも一気に注目が集まりました。

それは、旧来の人材評価の限界を示すとともに、これからの時代に企業が優秀な人材を獲得・確保する新しい動きととらえることができます。ここでは、ノーレイティングとは何かについて、従来の制度の課題とともに整理してみました。

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ノーレイティングとは?

「ノーレイティング」(No Rating)とは、年度単位の業績によって、社員にA、B、Cなどのランクを付けることをやめることを意味します。

レイティング(ランク付け)は、これまで多くの日本企業が採用している仕組みです。ランク付けは、目標管理制度(MBO)と合わせて採用されることが多く、ランクによって報酬が決まったり、昇進に影響を与えたりするため、人事制度の土台といっても過言ではありません。ノーレイティングとは、その土台をやめてしまうという、非常に大胆かつ革新的な考え方です。

2015年の段階で、フォーチュン500の約10%の企業はすでにノーレイティングを導入し、2017年度中には50%に達するといわれています。米国のグローバル先進企業においては、ノーレイティングはすでに多数派になりつつあるのです。

ただし、ノーレイティングは、評価そのものをやめることは意味しません。むしろ、時代の要請に合わせて新しい評価を模索する試み、取り組みであるといえます。

ノーレイティングが生まれた背景

ノーレイティングが注目される要因

では、ノーレイティングが求められるようになった時代の要請とは何でしょうか。これには、大きく2つの要因が考えられます。

1つは企業を取り巻く環境変化の激しさです。ビジネスのグローバル化にともなって、企業を取り巻く社会・経済環境は急激に変化しています。さらに、テクノロジーの変化も急です。ビッグデータやIoT、人工知能(AI)、ロボットなど、ITの急速な進歩によって、これまでになかった新しい製品やサービスが登場しています。

これだけ変化のスピードが速いと、数か月前に立てた目標が意味をなさなくなることは珍しくありません。あるいは、当初定めていたコンピテンシーが数か月後には不足し、十分なパフォーマンスを発揮できなくなることもあります。

もう1つの要因は、優秀な人材を確保することが困難になっていることです。優秀な人材を確保し、社員一人ひとりのエンゲージメントを高めて活躍してもらうことは、グローバル企業においても国内企業においても重要です。

特に少子高齢化の日本においては、すべての産業で、今後、深刻な人手不足が懸念されています。そこで、従業員をランク付けするのではなく、一人ひとりをていねいに評価するノーレイティングに注目する企業が急速に増えているのです。

米国のグローバル企業が相次いで導入、その具体例は?

前述したように、米国のグローバル先進企業、たとえば、ギャップ、マイクロソフト、アドビシステムズ、アクセンチュア、IBM、P&Gなどの名だたる企業が、ノーレイティングを導入しています。

たとえば、GEは人材評価の仕組みである「9(ナイン)ブロック」を2016年に廃止しました。9ブロックは「業績結果」と「GEバリュー発揮」という2つの軸をそれぞれ3段階に分けて、社員を9つのブロックで評価する仕組みです。9ブロックは、多くの企業の人材評価に影響を与えただけに、このニュースは、驚きをもって受け止められました。

最大の理由は、GEのビジネスそのものの変化です。現在、GEは「インダストリアル・インターネット」を掲げ、ビッグデータを解析して、あらゆる産業におけるオペレーションの効率化や新たな顧客ニーズの発掘を行うビジネスへと転換を図っています。

そこで求められるのがスピードです。同社は、2012年から「ファストワーク」と呼ばれる新しい手法を開始し、スピードを最優先にした製品開発を行っています。そのためには、社員を9つのランクに分け、年2回の目標設定と評価を行う9ブロックでは対応できないと判断されたのです。

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従来の人材評価制度の課題

なぜ従来の評価制度がうまく機能していないのか

ここまでで、ノーレイティングが注目されている全体的な背景は、おわかりいただけと思います。ここでは、あらためて従来の人材評価制度の課題を整理しておきましょう。

  • 外部環境の急激に変化に対応できない
    年に数回、目標に対する達成度をもとに社員をA、B、Cなどにランク付けする仕組みでは、急減に変化する社会・経済環境の変化、テクノロジーの変化に追随できなくなっています。むしろ、社員に点数を付けて、それを報酬と連動させる従来の仕組みは、社員のパフォーマンスやモチベーションを低下させる可能性さえあります。

  • 形骸化してノルマ管理ツール化している
    MBOは、本来は上司が部下をマネジメントするための手法であり、適切なコミュニケーションをとりながら運用すれば、十分に成果を上げられる制度です。しかし、日本企業においては、MBOの本来の意義が失われ、たんなる成果を評価する仕組みとしてだけ利用されてきた面があります。これは、1990年代後半のバブル経済崩壊後、日本経済が低迷する中、成果主義とともにMBOが導入されたことと無関係ではないでしょう。

  • 人材の確保・育成につながらない
    旧来の人材評価制度が社員のパフォーマンスを阻害し、単なるノルマ管理ツールとなってしまったら、当然、優秀な人材を確保することは困難になります。特に、人材不足が深刻化する日本では、なおさらでしょう。さらに、社員の育成にもマイナスの影響を与えるのは、いうまでもありません。

ノーレイティングは従来の人材評価制度の課題を解決する

「1on1」で社員を評価・育成

ノーレイティングは社員のランク付けをやめることであり、それ自体は新たな評価方法ではありません。このため、「ノーレイティング」は、人材評価の新しい手法ととに語られることが多いようです。「1on1」あるいは「1on1ミーティング」もその1つです。

1on1ミーティングとは、上司と部下が1対1で定期的に行うミーティングのことです。従来のMBOでは、四半期ごとや年に数回、上司と部下が目標と達成度を確認するのが一般的です。

これに対し、1on1ミーティングでは、月に数回、上司と部下が一対一でミーティングします。会議や査定といったかしこまった雰囲気ではなく、お互いに自然体で話すことを基本としています。その際、部下は上司に仕事の悩みなどについて相談し、上司は部下に成長につながるアドバイスを与え、気づきを促します。また、状況に合わせたリアルタイムでの目標設定、フィードバックも行われます。

1on1ミーティングを実施している国内企業としては、Yahoo! JAPANが有名です。同社は、トップから新人まで約7000人が、隔週で1回以上、約30分の1on1ミーティングを実施しているそうです。

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ノーレイティングが従来の評価制度の課題に有効なワケ

ノーレイティングを導入し、1on1ミーティングのような新しい人材評価の仕組みを実現することで、従来の評価制度の課題を解決できます。

まず、外部環境の急激な変化にも柔軟に対応できます。上司と部下がつねにコミュニケーションをとって業務をすすめるので、外部環境の変化に合わせて目標を修正したり、必要なコンピテンシーを変更したりすることがスピーディかつ柔軟に行えます。

また、評価の仕組みがノルマ管理の仕組みとして形骸化する心配もありません。業務によっては達成すべき数値は、都度、設定される場合もありますが、それが上司と部下のコミュニケーションの結果であれば、数値だけが一人歩きすることはありません。

さらに、人材の確保・育成にも有効です。社員一人ひとりの悩みを上司が丁寧に聞いてくれることは、その企業への就職・転職を考えている新しい人材にとって、大きい魅力になるはずです。もちろん、入社したあとの人材育成においても、プラスに働くことはいうまでもありません。

ノーレイティングの導入方法と課題

求められるマネジメントの高度化とコミュニケーションのオープン化

ここまでは、ノーレイティングのメリットを見てきましたが、実際に導入し、1on1ミーティングを実現することは、けっして容易ではありません。

最大の問題は、高度なマネジメント能力が求められることです。上司と部下が頻繁にコミュニケーションしても、上司が部下の悩みや相談に的確に対応できなかったり、仕事の内容を評価できなかったりしたら、むしろ信頼は失われ、会社は混乱するだけです。したがって、ノーレイティングとマネジメント能力の強化は不可分の関係にあります。

マネジメント能力を強化するための方法はさまざまありますが、ここでは次の2つを紹介します。

1つは研修などを利用することです。マネジメント能力は、英語と同様にスキル・テクニックの側面を強く持っています。こうしたスキル・テクニックは、外部の研修などでだれでも身につけることが可能です。

もう1つは、経営者が会社のビジョンやミッション、あるいは経営に対する想いをミドルマネジメントに積極的に伝えることです。それがなければ、ミドルマネジメントは判断する基準を持てないからです。

また、1on1ミーティングを実現するうえでは、内容をオープンにすることも重要です。もちろん、プライバシーに関わる内容は別ですが、それ以外の情報はツールなどを活用して記録し、オープンにすることが求められます。それによって、必要に応じて人事部門、場合によっては経営層が支援に入ることも可能になります。

報酬・昇進の決め方と評価のサブシステムの重要性
ノーレイティングを導入すると、最終的には、必然的に報酬や昇進の仕組みも見直すことになります。報酬や昇進のベースとなっていたランク付けをやめることで、報酬や昇進に対する従業員の納得感を担保する新たな仕組みが必要になるからです。

そこで重要になるのが、評価する側/される側のコミュニケーションとそれによって作られる信頼関係です。頻繁に1on1ミーティングを繰り返して信頼関係が築けていれば、報酬や昇進が決まるタイミングでは、ある程度の納得感はすでに醸成されているはずだからです。

ただし、評価する側に報酬や昇進に関する決定権がなければ、それも不可能です。といって、トップが全社員と1on1ミィーティングを繰り返すことはできません。このため、ある程度の権限委譲を行ったり、報酬・昇進に関する権限を持つ経営層に対し、1on1ミーティングを義務化するなどの措置が必要になります。

また、人材評価においては「評価のサブシステム」を持たせることも効果的です。これは、たとえば表彰制度やサンクスカードなど、業績以外での会社への貢献を表現する仕組みです。

人材評価において最も重要なことは、従業員の「納得感」です。できるだけ多くの従業員に納得感を持ってもらうためには、適正な評価に基づいた報酬だけでなく、一人ひとりの従業員にスポットライトを当て、業績以外の観点でも評価するサブシステムも合わせて検討することが大切です。

ノーレイティング成功の大前提は「信頼関係」と「納得感」
米国企業を中心に導入がすすむ「ノーレイティング」ですが、日本企業にも定着するかどうかは、まだわかりません。ただ、ビジネスのグローバル化、デジタル化にともなって、人材評価の仕組みに、大きい変革が求められていることは確実です。そして、「ノーレイティング」は、その有力な選択肢です。

ただし、新しい仕組みを導入したからといって、それがうまく機能するとはかぎりません。やはり、そこには企業が持つ歴史や文化も深く関わってきます。

たとえば、ビラミッド型の階層構造を持つ企業には、ノーレイティングはなじみません。上の階層ほど持てる情報が多いため、情報格差のある上司と部下がいくら1on1ミーティングを繰り返しても、納得感や信頼感を醸成することが難しいからです。

そこで最近は、ホラクラシー(Holacracy)という概念も登場しています。これは、トップダウンのヒエラルキーによる意思決定ではなく、組織全体に権限を分散させて意思決定する考え方です。このように、「ノーレイティング」を考えることは、企業の組織構造そのものを考えることにもつながります。

ただ、従来から、人材マネジメントがうまくいく会社には、ある共通点が指摘されています。それは、人事制度における評価者と被評価者、マネジメントと一般社員のあいだに信頼関係が確立されていることです。そして、「公平感」よりも「納得感」を重視していることです。

この2つが前提としてある会社であれば、ノーレイティングが成功する可能性は十分あるといえるのではないでしょうか。

監修:カオナビ 取締役副社長 佐藤 寛之氏
2003年3月上智大学法学部卒業後、株式会社リンクアンドモチベーションに入社。大手企業向け組織変革コンサルティング部門にて営業を担当。2008年11月シンプレクス株式会社に入社。人材開発グループ責任者として、新卒・中途採用/人材育成/人事評価/人材配置などの人材開発業務に従事。2011年10月に株式会社カオナビ取締役就任。人材データベース「カオナビ」の営業・マーケティングを統括、企業への導入提案を進める。
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