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プロティアン・キャリアとは?意味やメリット・従来のキャリアとの比較

最終更新日:(記事の情報は現在から609日前のものです)
プロティアン・キャリアとは、従来型の同一組織でのキャリア形成に代わり、仕事環境の変化に応じて自らを変化させることに焦点を当てた新しいキャリア形成法です。プロティアン・キャリアの基本的な考え方や、個人に焦点を当てたキャリア形成に必要なことを解説します。

プロティアン・キャリアとは

プロティアン・キャリアとは、1976年にボストン大学経営大学院のダグラス・ホールによって提唱されたキャリア理論のことです。プロティアンとはギリシア神話に登場する変幻自在の神プロテウスのことであり、環境の変化に応じて自己変化・自己成長を目的としたキャリア形成のことを指します。

これまでの「キャリア形成」といえば、所属する企業内でどういうポジションを築いていくかに焦点が当てられており、あくまでも同じ組織での役割の変化について考えることが主でしたが、プロティアン・キャリアは個人のやりがいや満足感に焦点を置いています。

組織に完全に依存するわけではなく、組織との相互依存関係のなかで自分に合った「変幻自在な」キャリア形成を重視しています。また、「ジョブ型雇用」との相性の良さも相まって、近年注目されているキャリア形成です。

>>ジョブ型雇用とは?メンバーシップ型雇用との違い・注目されている背景

プロティアン・キャリアが注目されている背景

プロティアンキャリアは1976年に発表された理論ですが、近年さらに注目が集まっています。その背景には、終身雇用の崩壊と人生100年時代の到来があります。

現代において終身雇用を維持できる企業は少数派とはなり、一度就職した会社に定年までいられる状況ではなくなってきました。そのため、主体的にキャリアを築く必要があります。また長寿化に伴い、働く年数も伸び続けています。時代に応じた柔軟なキャリアを考える必要性が生じているといえるでしょう。

プロティアン・キャリアと従来のキャリアの比較

プロティアン・キャリアの主体は一人ひとりの個人であり、仕事への満足を伴う自己成長を重視しています。これは従来型のキャリア形成の考え方とは対極にあるといっても過言ではありません。

キャリアとは組織内での昇進を意味すると考えている人は多く、所属している企業でいかにして重要なポジションに就くか、望みの年収を実現するかを考えてしまいがちです。言い換えれば、従来型のキャリア形成の主体は所属する組織であり、給与や組織内での地位がキャリアであると考えている方は多いでしょう。

そこでプロティアン・キャリアと従来型のキャリアを表で比較しました。

キャリアに関する考え方 従来型 プロティアン・キャリア
主体 組織 個人
成功の尺度 組織内での昇進や昇給 自己成長・自己実現・(心理的)成功
重視するもの 組織内での評価 仕事に関する満足度
アイデンティティ (組織のために)何をすべきか? (自分は)何をしたいのか?
最終目的 社会における市場価値の向上 組織内での生き残り

従来型のキャリアに関しては表のように極端な考え方ではなく、より柔軟に考えている企業も多いですが、ほとんどの場合は組織が前提となっています。

一方、プロティアン・キャリアでは一人ひとりが「何をしたいのか?」を自らの価値観に照らし合わせながら考え、仕事の満足度を高めながら心理的な成功を得ることをキャリアの実現とみなしています。

プロティアン・キャリア形成に必要なこと

プロティアン・キャリア形成のためには、個人で次のことをやっておく必要があります。

  • キャリア定義を理解
  • キャリアの整理
  • 目標の設定

それぞれの内容について説明していきます。

キャリア定義を理解

まずは広い意味でキャリアを再認識することが重要です。上述のように、多くの人は「キャリア」と聞いたときに、自らの所属する組織内での昇進やポジションについて考えてしまいがちです。

本来、キャリアとは一人ひとりの個人が自ら設定・管理するもので、仕事の枠を超えて人生や「生き方」の視点から多角的に考える必要があります。アイデンティティを深く理解しようとする試みともいえるでしょう。

つまり、社歴や転職経歴、能力といった外的なキャリアに関する項目だけではなく、自らの「価値観・哲学」「才能・強み」「想い」などの内的なキャリアも重視する必要があるのです。

特に後者の内的キャリアは個人によって大きな違いがあります。指標化や「見える化」しづらいため、一人ひとり自己認識を高めるほかありません。すぐに答えの出るものではありませんが、自分としっかりと向き合うことでキャリアを整理しやすくなります。

キャリアの整理

自らのキャリアをより高い視点から捉え直したうえで、外的キャリアや内的キャリア、外部要因など現状のキャリアを整理しましょう。

履歴書に記載する職務経歴や社歴、専門スキルの情報が外的キャリアであり、自分の価値観や仕事への動機・想いが内的キャリアです。価値観から生まれる習慣や態度も内的キャリアに含まれます。

さらに外的要素とは経済状況や家族の状況、現在の居住地などです。いずれも自らの意思のみで変化を生じさせることは困難で、自分にとってプラスにもマイナスにもなる要因といえます。外的要素もキャリアを考えるうえでは必ず考慮しなくてはなりません。

目標の設定

上記3つの視点から現状のキャリアを整理して「何をしたいか」を軸に目標を立てていきましょう。

やりたいことを明らかにするためには「どんな価値を実現したいのか?」「自分にとって幸せな状態とは何か?」を考え、過去を振り返りながら自己省察を深める必要があります。

また、他人よりも簡単にできることや、褒められた経験などは自らの才能や強みを理解するヒントになるので参考にしてください。「嫌いなこと」「やりたくないこと」の洗い出しをするのも有効でしょう。

自分が「何をしたいか?」を問い、心理的成功を目指すための目標を立てるのがプロティアン・キャリア形成の第一歩です。

プロティアン・キャリアのメリット

プロティアン・キャリアのメリットは次とおりです。

  • 仕事への満足感を重視できる
  • 自分でキャリアを形成していける

それぞれのメリットについて具体的に説明します。

仕事への満足感を重視できる

やりがいや働きがいなど、個人の仕事への満足感を重視した働き方を実現しながら市場価値を高めるのがプロティアン・キャリアの目的です。満足感を得ながら働くことを重視するので、仕事への高いモチベーションを維持できるメリットがあります。

かつて終身雇用が当たり前だった時代においては、組織の論理にしたがって企業内でのポジションや年収を上げることがキャリアだと考えられており、転職にはどこかマイナスのイメージがもたれがちでした。

しかし転職する人が増加し続ける昨今では、自らの人生に合ったキャリアや強み、特性を活かせる仕事を見つけることこそがキャリアアップだと考える人が増えています。

自分でキャリアを形成していける

プロティアン・キャリアは一人ひとりが「なりたい自分」を想像し、自らキャリアを形成することが大前提です。

そのため、組織に依存することなく個人で積極的にキャリアに関する情報を取り入れる人が増え、さまざまな変化に対応できる人材が育成されやすくなります。

自らの働き方を柔軟に考える人が増えるため、企業側は多様な働き方を実現できる環境と社員一人ひとりが新しい知識やスキル、強みを活かした仕事ができる環境を整えることで、優秀な社員が集まりやすくなるでしょう。

これまで組織任せの人でキャリアを考えていた人が、より高い視点で働き方を考えるようになることは、企業にとってもプラスになります。

プロティアン・キャリアのデメリット

一方、従来のキャリア形成とは違い、各々が個人でキャリアを形成・管理して自ら責任をもたなくてはなりません。そのため、人によっては具体的な実践が難しいと不安に感じてしまうケースもあるでしょう。

プロティアン・キャリアの考え方に向いていない、あるいはついていけないと感じてしまう人が出てくる点はデメリットといえるかもしれません。

企業側は従業員が自らキャリア形成していけるように、目標管理評価シートを管理できる人事評価システムや1on1ミーティングなど、従業員のモチベーションが向上するような環境を整えておくといいでしょう。

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プロティアン・キャリアは個の成長につながる

仕事環境の変化と自らの価値観や想いを照らし合わせ、仕事に関する満足度を高めて自己変化・自己成長を実現するプロティアン・キャリアの考え方を解説しました。

一人ひとりに合ったキャリアを自ら設定・管理するため仕事への高いモチベーションを維持でき、企業にとっても、プロティアン・キャリアを促進・推奨することで、さまざまな変化に柔軟に対応できる人材を育成できるメリットがあります。

また、企業側は従業員が自らキャリア形成していける、モチベーションを向上していけるように、目標を管理できる人事評価システムや1on1ミーティングを導入するといいでしょう。

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