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eNPSとは?意味と計算方法・調査の効果と改善の施策

最終更新日:(記事の情報は現在から283日前のものです)
eNPSとは、企業の従業員エンゲージメントを測るための指標です。簡単な質問で正確にエンゲージメントを把握でき、分析を人材戦略につなげやすいメリットがあります。eNPSの意味と計算方法、従業員満足度(ES)との違い、実施することによって得られる効果や施策についてわかりやすく解説します。

eNPSとは

eNPSとは、「Employee Net Promoter Score」の頭文字を取った略称で、「職場の推奨度」をスコア化して従業員エンゲージメントを測るための指標です。eNPSは、従業員に「親しい知人や友人に自分の職場をどれくらい勧めたいと思っているか」と質問し、回答を数値化して集計します。

eNPSはNPSから派生した概念です。NPSとは、「Net Promoter Score(ネット・プロモーター・スコア)」の略称で、米国コンサルティング会社のベイン・アンド・カンパニーが、顧客ロイヤルティ(顧客のブランドに対する信頼や愛着)を数値化する手法として提唱しました。

eNPSは、顧客向けにNPS調査を実施していたAppleが、従業員エンゲージメントを可視化するための指標として活用したことで、世界中の企業が広く採用するようになりました。

従業員エンゲージメントとは

従業員エンゲージメントとは、従業員が企業のビジョンやバリューに共感し、自発的に会社に貢献したいと思う意欲のことです。従業員エンゲージメントの高さは、従業員が組織と仕事に意義と誇りを感じ、会社と強く結びついていることを表しています。

従業員エンゲージメントに関する調査手法として、パルスサーベイやモラールサーベイなどの従業員満足度調査がありますが、eNPSは他の調査と比べて簡単に調査でき、従業員のセグメントごとに対策を考えられます。

リファラル採用の強化や離職率の低下にも、eNPSを利用することは重要です。現在ではさまざまな企業がeNPSを活用して、従業員エンゲージメントを高めようと取り組んでいます。

従業員エンゲージメントについてさらに詳しく知りたい方は、ぜひ次の記事も参考にしてください。

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eNPSの計算方法

eNPS調査では、従業員に「あなたはこの企業で働くことをどのくらい、親しい友人や家族に勧めたいと思いますか」という質問をし、0点から10点の11段階で評価してもらいます。

0〜6点の回答者は「批判者」、7、8点は「中立者」、9、10点は「推奨者」と3グループに分類して、それぞれの割合を算出します。推奨者の割合から批判者の割合を差し引いたのがeNPSのスコアです。

たとえば、0点から6点の人が20%、9点から10点の人が30%なら、推奨者30から批判者20を差し引いてeNPSは10となります。

ちなみに、eNPSはアメリカで開発された手法なので、日本との国民性の違いからeNPSのスコアは国によっても大きく変動します。日本でeNPSの調査を実施すると、中央値である5点前後で評価をする従業員が多いため、ほとんどの国内企業のeNPSはマイナスのスコアになっています。

eNPS調査と従業員満足度(ES)調査の違い

eNPS調査も従業員満足度(Employee Satisfaction:ES)調査も、どちらも従業員満足度を可視化しようとする点では一緒ですが、eNPSの方が職場の現状を正確に把握でき、各セグメントに対して最適な対策ができる特徴があります。

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eNPS調査と従業員満足度調査の違いについて2つの観点から説明します。

職場の現状を正確に把握できる

eNPSの質問内容は、単純なアンケート調査よりも高得点をつけるハードルが高く設定されています。

従業員満足度調査では、「あなたは職場にどのくらい満足していますか」と質問するのに対して、eNPS調査では「親しい友人や家族にどのくらい勧めますか」という切り口から質問をします。

一般的に自分が満足していると答えるよりも、他人に勧められると答える方が心理的なハードルが高くなるので、リップサービスを抜きにした正確な職場の評価を把握できます。

具体的に従業員がどのような項目に満足・不満を持っているかについては、従業員満足度調査で個別に調査しなければなりませんが、従業員エンゲージメントを簡単にかつ正確に把握したいのならばeNPS調査で十分です。

各セグメントで最適な対策ができる

eNPS調査では従業員をセグメント分けしているので、問題に対して具体的な対策を考案できます。

従業員満足度調査では、労働条件や人間関係など個別の従業員エンゲージメントに影響する要素については把握できたとしても、各従業員に個別にどのような施策を実施すればいいのか対応するのは困難です。

一方でeNPS調査では、スコアによって従業員を批判者、中立者、推奨者のシンプルな3つのグループに分類しているので、それぞれのセグメントに対して最適な施策を考えられます。

具体的なエンゲージメント向上対策を検討するのならば、従業員のセグメントと施策を一致させやすいeNPSの方が優れています。

eNPS調査のポイント

eNPS調査の「職場の推奨度」の1つの質問のみでは、従業員がその点数を付けた背景や要因がわかりません。

そこでeNPS調査では、いくつかの追加質問を加えることで、従業員が職場や労働環境のどの部分に対してどのように感じているかを探るよう設定するのがおすすめです。

eNPSの追加質問としては、次のような項目が挙げられます。

  • 労働環境
  • 上司との関係性
  • 職場の雰囲気
  • 報酬や人事評価
  • 顧客への貢献度
  • 会社のビジョンへの共感

eNPSの追加質問項目は、その時々の人事戦略や労務管理の課題に応じて、設定するとよいでしょう。

労務管理の課題について詳しく知りたい方は、ぜひ次の記事も参考にしてください。

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eNPSを分析することで得られる効果

eNPSを分析することによって次の4つの効果が得られます。

  • リファラル採用に役立つ
  • 離職率の低下につながる
  • 顧客満足度の向上につながる
  • 企業全体の生産性が上がる

それぞれの効果について説明します。

リファラル採用に役立つ

リファラル採用とは、社員に人材を紹介してもらう採用手法です。求人媒体やエージェントを活用しないので採用コストを削減でき、紹介する従業員が候補者のスキルを把握しているので、会社にマッチした一定レベル以上の人材であることが期待できます。

リファラル採用にはさまざまなメリットがありますが、従業員のエンゲージメントが高くなければ、リファラル採用は発生しません。eNPS調査で高いスコアをつけた従業員ほど、積極的にリファラル採用に協力してくれる傾向があります。

離職率の低下につながる

一般的に離職する可能性が高いのは、eNPS調査で低い得点をつけた従業員だと考えられます。しかし、低い点数をつけた従業員でも会社に大きく貢献している人材はいるでしょう。

このような人材を喪失することは会社にとっても痛手となるので、ハイパフォーマーかつ低い点数をつけた従業員が存在する場合は、従業員のエンゲージメントを向上させる対策を個別で実施した方が良いでしょう。

もちろん、個別の従業員だけに注目するのではなく、eNPSのスコア自体を改善することによって、従業員全体のエンゲージメントが向上しトータルの離職率は低下します。

顧客満足度の向上につながる 

eNPSとNPS(顧客ロイヤルティのスコア)は相関関係にあることが判明しています。

eNPSの高い従業員は、顧客に対してより良いサービスを提供したいという気持ちが強いため、顧客満足度の向上につながるよう熱意をもって仕事に取り組みます。結果として長期的にサービスを利用し、周りにも勧めてくれるロイヤルカスタマーが育成され、企業の持続的な成長に寄与します。

企業全体の生産性が上がる

従業員エンゲージメントが高い社員ほど仕事へのモチベーションは高く、主体性を持って作業に取り組んでくれます。よって、eNPSのスコアを向上させることは、チームや企業のモチベーションアップ、ひいては全体の生産性向上にもつながるといえるでしょう。

一般的にチームや企業のモチベーションといった心理的な要素を定量的に把握するのは困難ですが、eNPSを活用することによって可視化し、業績のためのKPIとして扱えるようになります。

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eNPS・エンゲージメント向上の施策

eNPSを高め、従業員エンゲージメントを向上させるための代表的な施策を紹介します。

  • テレワーク・ハイブリッドワーク
  • ビジョンやバリューの共有
  • 人材教育
  • 1on1・コーチング
  • DXの推進
  • ユニークな福利厚生
  • メンタルヘルスサポート

それぞれについて簡単に説明します。

テレワーク・ハイブリッドワーク

テレワークやハイブリッドワークなど、従業員のワークライフバランスを考えた柔軟な働き方は、従業員エンゲージメントを高めることにつながります。

公正な人事評価制度

人事評価制度に課題があると、従業員の不公平感や不満がたまる原因となります。公正な人事評価制度の導入や運用、上司の評価方法やフィードバックを改善することで、従業員エンゲージメントの向上につながります。

360度評価(多面評価)は従業員の納得感が得られやすいため、導入を検討してみてもよいでしょう。

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人材教育

従業員の能力やスキルを高めるための人材教育を積極的に行うことは、従業員エンゲージメントを高め、人的資本による企業の競争力が強化されます。

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1on1・コーチング

上司が1on1ミーティングやコーチングで定期的に部下をサポートするのも、パフォーマンスとエンゲージメントに良い効果をもたらします。

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ビジョンやバリューの共有

企業が目指すビジョンや、大切にするバリューをしっかりと従業員と共有することは、eNPSと従業員エンゲージメントのために最も重要な要素の一つです。

ビジョンやバリューをビジネス環境や市場ニーズの変化に合わせて、従業員とディスカッションしながら改定していくのもより共感が得られるでしょう。

DXの推進

DX(デジタルトランスフォーメーション)によって、業務の自動化や効率化を進めることで、従業員は煩雑な定型業務から解放され、価値を感じられるコア業務に集中できるようになります。DXとデジタル化の推進によって、仕事へのやりがいとエンゲージメント向上が期待できます。

ユニークな福利厚生

他社にはないユニークな福利厚生を提供することも、eNPSのスコアアップにつながります。ヘルシーな社員食堂、自然豊かなワーケーション施設、ITカンファレンスへの派遣参加など、会社独自の特典を利用できることは、第三者に会社を自慢したくなる要因となるでしょう。

メンタルヘルスサポート

従業員のメンタルヘルスを重視してサポートしている企業は、人材を使い捨てない、人的資本として大切にしている姿勢が内部から評価されるでしょう。従業員の幸せを重視するウェルビーイング経営を実践することは、eNPSとエンゲージメントを確実にアップさせます。

eNPSから従業員エンゲージメント向上を目指そう

eNPSを分析・改善することによって、従業員エンゲージメントの向上を図ることにつながります。eNPSはシンプルな調査なので、定期的に実施しても従業員の負担にはなりません。

eNPSを向上させることによって、リファラル採用の強化や離職率の低下、生産性の向上など、さまざまな効果とメリットが期待できます。

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