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コンピテンシー評価とは?評価項目や基準・メリット・人事評価への活用法

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【比較表】人事評価システム
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コンピテンシー評価とは、成果を上げているハイパフォーマーに共通する行動特性を抽出し、従業員一人ひとりの行動を評価する人事評価手法です。コンピテンシー評価とは何か、メリット・デメリット、評価シートの項目や基準の作り方、導入事例についてわかりやすく解説します。

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コンピテンシー評価とは

コンピテンシー評価とは、高い業績を上げている人材に共通する行動特性(コンピテンシー)を分析し、それを基準として従業員一人ひとりの行動を評価する人事評価手法です。

コンピテンシー評価は、単なるスキルや知識ではなく、それが実際の仕事や活動にどう反映されているかに焦点を当てる点が特徴です。企業戦略や目標達成に必要な行動や姿勢を明確化し、基準に沿って従業員の評価を行うことで、組織全体のパフォーマンス向上を図れます。

コンピテンシー評価と職能資格制度(能力評価)の違い

コンピテンシー評価と職能資格制度(能力評価)は、ともに人事評価の手法ですが、評価の視点や目的には違いがあります。次の表は、両者の主な違いをまとめた表です。

比較項目 コンピテンシー評価 職能資格制度
評価の視点 行動特性や実際の成果 保有する能力やスキル
評価の目的 組織のパフォーマンス向上 個人の能力開発とキャリア形成
評価基準 ハイパフォーマーの行動分析にもとづく 職務遂行に必要な能力要件
活用方法 人材育成、配置、報酬決定など 等級制度、昇進・昇格の判断材料

コンピテンシー評価は、組織の目標達成に必要な行動特性に着目して評価することで、組織全体のパフォーマンス向上を目指します。

職能資格制度は、個人の能力開発とキャリア形成を重視し、職務遂行に必要な能力要件を明確化することで、モチベーション向上と人材育成を図ります。

「コンピテンシー」と意味が似ている用語

「コンピテンシー」と似た意味をもつ用語には、「コアコンピタンス」「スキル」「アビリティ」「ケイパビリティ」などがあります。これらの用語は、いずれも人材の能力や特性を表す単語ですが、意味合いや適用範囲には違いがあります。

それぞれの用語の定義と「コンピテンシー」との違いは次のとおりです。

コアコンピタンスとの違い

コアコンピタンスは、企業が市場で競争優位を確立するための、独自の組織能力を指します。一方、コンピテンシーは、個人の高業績につながる行動特性を表します。

コアコンピタンスが組織レベルの能力であるのに対し、コンピテンシーは個人レベルの能力であるといった点が大きな違いです。

スキルとの違い

スキルは、特定の職務を遂行するために必要な知識や技術を指します。これに対し、コンピテンシーは知識や技術だけでなく、それを実際の行動に移す力も含んでいる用語です。

スキルが「何ができるか」に焦点を当てているのに対し、コンピテンシーは「どのように行動するか」に重点を置いています。

アビリティとの違い

アビリティは、生まれつきの素質や基礎的な能力を指し、個人が持っている知的・身体的な資質を意味します。例えば、記憶力や運動神経などはアビリティに該当します。

一方で、コンピテンシーは特定の業務や状況において発揮される行動特性やスキルを含む概念であり、実践的な能力の側面が強調されます。そのため、アビリティが潜在的な能力を示すのに対し、コンピテンシーはその能力が発揮された結果といえます。

ケイパビリティとの違い

ケイパビリティは、組織やチームが環境の変化に適応し、目標を達成するために発揮する総合的な能力を指します。これは個人の能力だけでなく、組織内のプロセスやリソースの活用も含まれるため、個人の行動特性を重視するコンピテンシーとは異なります。

例えば、企業の競争優位性を生み出すための組織的な対応力やイノベーション創出能力はケイパビリティに該当し、個々のスキルや経験を超えた広範な概念となります。

コンピテンシー評価が注目されている背景

近年、コンピテンシー評価が注目されている背景として考えられる要因は、次のとおりです。

環境変化への対応

グローバル化や技術革新によって、企業を取り巻く環境は急速に変化しています。この変化に対応するためには、従来の職務遂行能力だけでなく、変化に適応し、新たな価値を創出する行動特性が必要です。

コンピテンシー評価は、こうした行動特性を評価の基準とすることで、環境変化に対応できる人材の育成につながります。

人材の多様化

価値観や働き方の多様化が進むなか、画一的な評価基準では、個々の能力を十分に引き出すことが難しくなってきました。

コンピテンシー評価は行動特性に着目することで、多様な人材の強みを活かし、個々の成長を支援できます。

組織のパフォーマンス重視

企業競争力の源泉が人材に移行するなか、組織のパフォーマンス向上も重要な経営課題となっています。

コンピテンシー評価は、ハイパフォーマーの行動特性を組織全体に浸透させることで、組織力の強化につなげられる評価方法です。

コンピテンシー評価の具体例

説明だけではわかりづらい部分もあるため、コンピテンシー評価の具体例を紹介します。次に、営業職のコンピテンシー評価項目と行動指標の一部を紹介します。

評価項目 行動指標
コミュニケーション力 ・顧客との信頼関係を構築し、良好な関係を維持している
・顧客のニーズを的確に把握し、適切な提案を行っている
・社内外の関係者と円滑にコミュニケーションを取り、協力体制を築いている
問題解決力 ・顧客の課題を正確に理解し、適切な解決策を提示している
・複雑な問題に対しても、論理的に分析し、解決に向けて取り組んでいる
・困難な状況に直面しても、粘り強く対応し、結果を出している
目標達成志向 ・高い目標を設定し、達成に向けて積極的に行動している
・目標達成のために、効果的な戦略を立案し、実行している
・目標達成度を定期的に確認し、必要に応じて軌道修正を行っている
自己管理力 ・みずからの感情をコントロールし、ストレス状況下でも冷静に対応している
・自己の強みと弱みを理解し、継続的に自己研鑽に努めている
・時間管理を徹底し、効率的に業務を遂行している

これらのコンピテンシー項目について、5段階(1:不十分、2:やや不十分、3:普通、4:やや優れている、5:優れている)で評価を行います。

コンピテンシー評価のメリット

コンピテンシー評価の主要なメリットは次の5つです。

  • 効率的な人材育成ができる
  • 成果や業績の向上につながりやすい
  • 納得感のある人事評価を行える
  • 人材のマネジメントがより戦略的になる
  • 企業戦略やビジョンを浸透させやすい

効率的な人材育成ができる

実際に仕事で成果を出している人材の行動を評価基準に設定しているので、目標設定が明確かつ具体的になり、従業員の行動指針になります。

従業員は行動方針を決めやすく、モチベーションの向上につながることも期待できます。また、目標が明確かつリアルな設定になることで、能力開発の指針も明確になり、会社に必要なスキルや知識の効率的な習得が可能です。

マネージャー側も部下を指導する際に、教育指針として活用できるので効率的な人材育成ができます。採用面接の際も、質問を考える指針になります。

成果や業績の向上につながりやすい

コンピテンシー評価では、業績との関連性が高い行動特性を評価基準としているため、評価結果と実際の成果や業績との乖離が少なくなるのもメリットです。

従業員は自身の行動を改善することで、直接的に業績向上につなげられます。また、評価結果を人材配置や報酬決定に反映させることで、モチベーションを高め、さらなる成果の向上も期待できます。

納得感のある人事評価を行える

コンピテンシー評価では、従業員がどのような行動が評価されるのかを具体的に確認可能です。よって評価内容への理解と納得感が高まるため、評価に対する不満や離職を防止できます。

また、納得感のある人事評価が行えることは、人材育成のPDCAにおいても良い影響があります。

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人材マネジメントがより戦略的になる

コンピテンシー評価によって、組織内の人材の強みと弱みが可視化されます。これにより、人材配置や育成施策をより戦略的に行えます。

たとえば、特定のコンピテンシーが不足している部署に、そのコンピテンシーに優れた人材を配置したり、組織全体で不足しているコンピテンシーを重点的に育成したりするマネジメントが可能です。

企業戦略やビジョンを浸透させやすい

コンピテンシー評価では、企業戦略やビジョンの実現に必要な行動特性を評価基準に組み込めます。これにより、従業員は日常の行動レベルで戦略やビジョンを意識するようになり、組織全体での浸透が進みます。

また、評価結果を通じて、従業員に対して戦略やビジョンの重要性を継続的に伝えられるのも、大きなメリットです。

コンピテンシー評価のデメリット

コンピテンシー評価には多くのメリットがある一方で、次のようなデメリットも存在します。

  • 項目やモデル設定に時間がかかる
  • 環境変化の対応に弱い
  • 必ずしもコンピテンシーが正しいとは限らない
  • 導入や適切な運用の難易度が高い
  • 企業によっては最適な評価方法ではない可能性がある

項目やモデル設定に時間がかかる

コンピテンシー評価を導入する際、評価項目やモデルを設定するために多くの時間と労力が必要です。

ハイパフォーマーへのインタビューや行動分析、評価基準の作成など、一連の作業を行うには、専門的な知識とスキルが求められます。また、評価項目やモデルは、組織の戦略や文化にあわせてカスタマイズする必要があるため、設定作業は複雑で時間がかかります。

そして、運用する際は少なくとも1年にわたり評価基準を固定する必要があるため、コンピテンシー評価の導入から円滑に運用するまでには長期的な視点が必要です。

環境変化の対応に弱い

一度設定したコンピテンシー評価の項目やモデルは、簡単に変更することが難しいといった特徴があります。しかし、ビジネス環境は常に変化し、求められる人材像も変わっていきます。

そのため、コンピテンシー評価が環境変化に適応できない場合、評価基準が実態とそぐわなくなり、評価の有効性が低下するかもしれません。定期的な見直しと更新が必要なものの、それには一定の時間とコストがかかります。

必ずしもコンピテンシーが正しいとは限らない

コンピテンシー評価では、ハイパフォーマーの行動特性をもとに評価基準を設定しますが、設定した行動特性が本当に組織の成功につながるのかは保証できません。

とくに、過去の成功事例から導き出されたコンピテンシーが、将来の環境変化に対応できるとは限らない点には注意が必要です。また、ハイパフォーマーの行動特性が、他の従業員にとって適切であるとも限りません。

コンピテンシーの妥当性について、継続的に検証する必要があります。

導入や適切な運用の難易度が高い

コンピテンシー評価を効果的に運用するためには、評価者の訓練や評価プロセスの標準化、評価結果の適切なフィードバックなど、さまざまな取り組みが必要です。とくに、評価者の主観や偏見を排除し、公平な評価を行うことは容易でありません。

また、評価結果を人材育成や処遇へ反映させるためには、人事制度全体の見直しが必要になる場合もあります。導入や運用には、専門的な知識と経験が求められます。

企業によっては最適な評価方法ではない可能性がある

コンピテンシー評価は、あらゆる企業に適しているわけではありません。

たとえば、製品開発を重視する企業では、創造性や柔軟性といった行動特性が重要視されます。しかし、これらの特性は、コンピテンシー評価では測定しにくい場合があります。

また、業務内容が定型的で、個人の裁量が少ない企業では、コンピテンシー評価の効果が限定的になるかもしれません。

コンピテンシーを評価する5段階のレベル

コンピテンシー評価では、各コンピテンシーについて、一般的に5段階のレベルで評価を行います。これにより、従業員の行動特性を詳細に把握し、適切な育成方針の設定が可能です。

次に、各レベルの詳細と特徴について説明します。

レベル1:受動行動

このレベルでは、従業員は指示された行動を取れますが、自発的な行動は見られません。たとえば、上司から指示された業務は遂行できますが、みずから問題点を見つけて改善策を提案するようなことはありません。このレベルの従業員には、より主体的な行動を促すための指導が必要です。

レベル2:通常行動

このレベルでは、従業員は自発的に行動でき、一般的に期待される行動を取れます。たとえば、自分の担当業務について、問題点を見つけて改善策を提案したり、他部署と協力して業務を進めたりができます。ただし、その行動は一般的な範囲内にとどまり、とくに優れた成果を上げるまでには至りません。

レベル3:能動行動

このレベルでは、従業員は高い目的意識をもって行動し、期待以上の成果を上げられます。たとえば、自分の担当業務だけでなく、関連する業務についても積極的に改善策を提案し、実行できます。また、自分の経験や知識を活かして、他の従業員の育成にも貢献するレベル感です。このレベルの従業員は、組織の中核となり得る人材といえます。

レベル4:創造行動

このレベルでは、従業員は従来の枠にとらわれない創造的な行動を取れます。たとえば、まったく新しい業務プロセスを考案し、それを実現するために必要な調整の実施までを実行可能です。また、自分の専門分野だけでなく、幅広い分野の知識を活用して、革新的なアイデアを生み出せます。このレベルの従業員は、組織の変革を推進するリーダー的存在です。

レベル5:パラダイム転換行動

このレベルでは、従業員は組織や業界のパラダイムを根本から変革するような行動を取れます。たとえば、従来の事業モデルを抜本的に見直し、まったく新しい価値を創造可能です。また、社会的な課題に対しても、自社の事業を通じて解決策が提供できるような取り組みを行います。このレベルの従業員は、組織や社会に大きなインパクトを与える存在です。

このように5段階のレベルを設定することで、コンピテンシーのレベルを評価できます。各レベルの特徴を踏まえて、現状を把握し、次のレベルに到達するための育成施策を講じることが重要です。また、すべての従業員がレベル5を目指す必要はなく、各従業員の特性や組織の目標に応じて、適切なレベルを設定することが求められます。

コンピテンシーモデルの種類

コンピテンシーモデルとは、コンピテンシー評価に必要な行動特性を体系化したフレームワークです。コンピテンシーモデルには、「実在型」「理想型」「ハイブリッド型」の3種類のモデルがあります。

実在型モデル

実在型モデルは、組織内で高い業績を上げているハイパフォーマーの行動特性を分析し、それをもとにコンピテンシーを設定するモデルです。

ハイパフォーマーへのインタビューや行動観察を通じて、成功要因となる行動特性を抽出し、それをコンピテンシー評価の評価基準とします。

実在型モデルでは、従業員にとって身近で具体的な目標設定ができるため、納得感が得られやすいといったメリットがあります。ただし、現状の成功要因が将来も通用するとは限らないため、定期的な見直しが必要です。また、まだ社内に存在しないハイパフォーマーの育成はできません。

理想形モデル

理想形モデルは、組織が目指すべき理想的な人材像をもとにコンピテンシーを設定するモデルです。

経営ビジョンや戦略から導き出された人材像を具体的な行動特性として定義し、それを評価基準とします。理想形モデルでは、現状の人材のレベルにとらわれず、将来の組織に必要な人材像を明確にできるのが大きなメリットです。

市場や環境変化が激しい現在において、ハイパフォーマーの成功事例からコンピテンシーモデルを作る方式では、ビジネスの変化に対応できないことも増えてきています。

そのため、自社の経営環境の変化を捉え、経営・事業戦略から逆算して、求められるコンピテンシーを抽出していく理想形モデルが注目されています。

ハイブリッド型モデル

ハイブリッド型モデルは、実在型モデルと理想形モデルを組み合わせたモデルです。

まず、実在型モデルによってハイパフォーマーの行動特性を分析し、それを基本的なコンピテンシーとして設定します。次に、理想形モデルによって将来の組織に必要な行動特性を追加し、評価基準を完成させます。

この手法は、現状と将来の両方を見据えたコンピテンシーの設定ができるため、バランスの取れた評価基準になるのが特徴です。ただし、設定作業が複雑になるため、時間と労力がかかるといったデメリットがあります。

コンピテンシー評価の導入手順

コンピテンシー評価を導入する際は、体系的な手順を踏むことが重要です。次に、一般的なコンピテンシー評価の導入手順について説明します。

Step1:コンピテンシーの定義

まず、自社の経営ビジョンや戦略を踏まえて、必要なコンピテンシーを定義しましょう。理想形モデル、実在型モデル、ハイブリッド型モデルのいずれかの手法を用いて、評価基準となるコンピテンシーモデルを明確にします。この際、従業員の行動特性だけでなく、設定したコンピテンシーが組織の成果に対してどのように結びつくのかも示しましょう。

コンピテンシー・ディクショナリーを活用する

コンピテンシー・ディクショナリー」とは、それぞれの職種に必要なコンピテンシーを列挙したリストです。ゼロから評価項目や基準を創出するのはハードルが高いため、実務上はコンピテーション・ディクショナリーをカスタマイズして、独自の評価基準を作成するのがよいでしょう。

コンピテンシー・ディクショナリーを提唱したのは、コンピテンシーの概念を提唱したハーバード大学マクレランド教授の弟子である、ライル・M.スペンサーとシグネ・M.スペンサーです。コンピテンシー・ディクショナリーには次のような基準が挙げられています。

領域 項目
達成・行動 達成志向、秩序・品質・正確性への関心、イニシアチブ、情報収集
援助・対人支援 対人理解、顧客支援志向
インパクト・対人影響力 インパクト、影響力、組織間隔、関係構築
管理領域 他者育成、指導、チームワークと協力、チームリーダーシップ
知的領域 分析的思考、概念的思考、技術的・専門職的・管理的専門性
個人の効果性 自己管理、自信、柔軟性、組織コミットメント

ただし、コンピテンシー・ディクショナリーの基準だけでは抽象的すぎるので、実際には各企業のビジネスモデルや経営理念、コンピテンシーを抽出するモデルなどにあわせて具体的な評価シートを作成しましょう。

ハイパフォーマーの分析

好業績を上げるハイパフォーマーにインタビューを行い、行動特性を調査しましょう。この際も、コンピテンシー・ディクショナリーを参考にするのがおすすめです。インタビューだけでなく、観察や同僚からの意見を参考にするのも良い方法です。

経営方針と合致したコンピテンシーモデルを作成する

インタビューや観察から得たコンピテンシーから、経営方針にあわないものをリストから除外します。

コンピテンシーモデルができたら、ハイパフォーマーの特性と照らしあわせ、調整しましょう。複数人のハイパフォーマーを対象とすると、より精度の高いコンピテンシーモデルになります。

Step2:評価シートの作成

コンピテンシーモデルにもとづいて、評価シートを作成します。評価シートには、コンピテンシー評価項目や評価者が記入するためのスペースを設け、評価の透明性を確保します。従業員が自己評価を行うためのスペースも含めるといいでしょう。

また、評価結果のフィードバック方法や、評価結果の活用方法についても検討しましょう。

Step3:評価者の訓練

コンピテンシー評価を適切に運用するためには、評価者の訓練も欠かせません。評価者に対して、コンピテンシーの定義や評価基準、評価方法などについて十分に説明し、理解を深めてもらいましょう。

また、評価の際の留意点や、評価結果のフィードバック方法についても指導します。評価者の主観や偏見を排除し、公平な評価を行うための訓練も必要です。

Step4:試行的な運用

コンピテンシー評価の導入にあたっては、まず試行的な運用を行うことが推奨されます。一部の部署や従業員を対象に評価を実施し、設定した運用上の問題点や改対して善点を洗い出しましょう。

試行的な運用を通じて、評価基準の妥当性や、評価方法の実効性を検証し、必要に応じて修正を加えます。

Step5:本格導入

試行的な運用で得られた知見をもとに、コンピテンシー評価を全社的に導入しましょう。導入にあたっては、従業員に対して十分な説明を行い、理解と協力を得ることが重要です。

また、評価結果を人材育成や処遇に適切に反映させるための仕組みも整備します。コンピテンシー評価の定着には時間がかかるため、継続的な改善とサポートが必要です。

Step6:評価の見直しと改善

コンピテンシー評価は、導入後も継続的な見直しと改善が求められます。事業環境の変化や組織の成長にあわせて、評価基準の妥当性を検証し、必要に応じて修正を加えましょう。

また、評価結果の分析を通じて、評価方法の改善点を明らかにし、運用の質を高めていくことも欠かせません。定期的な評価の見直しと改善により、コンピテンシー評価の実効性を維持できます。

コンピテンシー評価の活用

コンピテンシー評価は、人材育成や処遇への反映だけでなく、組織の改善にも活用することが重要です。評価結果を分析することで、次のような洞察が得られます。

組織全体の強みと弱み

評価結果を集計することで、組織全体のコンピテンシーの強みと弱みが明らかになります。弱みについては、研修やOJTなどの育成施策を講じましょう。

部署間の比較

部署ごとのコンピテンシー評価結果を比較することで、高業績部署の特徴や、低業績部署の課題が明らかになります。優れた事例を共有し、改善策を検討しましょう。

人材配置の最適化

コンピテンシー評価の結果をもとに、適材適所の人材配置を行います。特定のコンピテンシーが求められる職種に、該当能力の高い人材を配置するといった施策が可能です。

コンピテンシー評価の結果を有効に活用することで、組織の継続的な改善と成長が可能です。

コンピテンシー評価の具体例

コンピテンシー評価の具体的な項目と評価レベルは、職種や役割によって異なります。一般的な従業員向けのコンピテンシー項目に加え、職業別でコンピテンシー評価の具体例を紹介します。

一般従業員向けの評価項目例

コミュニケーション力

分類 詳細
コンピテンシー項目の具体例 ・相手の意見を傾聴し、理解しようとしている。
・自分の意見を明確かつ論理的に伝えている。
・状況に応じて、適切なコミュニケーション手段を選択している。
評価レベル レベル1:自分の意見を伝えられず、相手の意見も理解しようとしない。
レベル2:自分の意見は伝えられるが、相手の意見を十分に理解していない。
レベル3:相手の意見を理解し、自分の意見も明確に伝えられる。
レベル4:状況に応じて適切なコミュニケーション手段を選択し、効果的にコミュニケーションできる。
レベル5:困難な状況でも建設的なコミュニケーションを維持し、合意形成に導ける。

営業職向けの評価項目例

顧客関係構築力

分類 詳細
コンピテンシー項目の具体例 ・顧客のニーズを的確に把握し、適切な提案を行っている。
・顧客との信頼関係を構築し、長期的な関係を維持している。
・顧客の潜在的な課題を発見し、解決策を提案している。
評価レベル レベル1:顧客のニーズを把握しようとせず、一方的な提案しかできない。
レベル2:顧客のニーズは把握できるが、適切な提案ができない。
レベル3:顧客のニーズを把握し、適切な提案ができる。
レベル4:顧客との信頼関係を構築し、長期的な関係を維持できる。
レベル5:顧客の潜在的な課題を発見し、解決策を提案できる。

マネージャー職向けの評価項目例

部下育成力

分類 詳細
コンピテンシー項目の具体例 ・部下の強みと弱みを把握し、適切な育成計画を立てている。
・部下に対して定期的にフィードバックを行い、成長を支援している。
・部下の自律性を尊重しつつ、必要な支援を行っている。
評価レベル レベル1:部下育成に関心がなく、支援も行っていない。
レベル2:部下育成の必要性は理解しているが、具体的な支援ができていない。
レベル3:部下の強みと弱みを把握し、適切な育成計画を立てている。
レベル4:定期的なフィードバックを行い、部下の成長を支援している。
レベル5:部下の自律性を尊重しつつ、状況に応じた最適な支援を行っている。

デザイナー職向けの評価項目例

クリエイティビティ

分類 詳細
コンピテンシー項目の具体例 ・新しいアイデアを積極的に提案している。
・従来の枠にとらわれない発想で、独創的なデザインを生み出している。
・クライアントの要望を超える提案ができている。
評価レベル レベル1:新しいアイデアを提案せず、従来の枠に沿ったデザインしかできない。
レベル2:新しいアイデアは提案できるが、実現できていない。
レベル3:新しいアイデアを提案し、独創的なデザインを生み出せている。
レベル4:クライアントの要望を超える提案ができ、高い評価を得ている。
レベル5:業界がリードできる革新的なデザインを生み出し、新しい価値を創造している。

コンピテンシー評価の注意点

コンピテンシー評価を導入・運用する際には、次のような点に注意が必要です。

コンピテンシーモデルはあくまでも目安

コンピテンシーモデルは、あくまでも目安であり、絶対的なものではありません。コンピテンシーモデルに固執しすぎると、かえって従業員のモチベーションを低下させる可能性があります。

そのため、コンピテンシーモデルを参考にしつつも、従業員一人ひとりの個性や強みを活かすことが重要です。また、従業員の成長や組織の変化にあわせて、コンピテンシーモデルを柔軟に見直すことも欠かせません。

重要なのは、従業員が自己の成長を実感でき、継続的に能力向上させていけるような評価制度を設計することです。

成果向上も評価する

コンピテンシー評価では、行動特性に焦点を当てがちですが、あくまでも評価の目的は成果の向上です。行動特性だけでなく、実際の業績や成果も評価対象に含めましょう。

どのような行動が成果につながったのかを明確にし、従業員にフィードバックすることで、コンピテンシー評価の意義を理解してもらえます。

業界別のコンピテンシー評価の特徴や留意点

コンピテンシー評価を導入する際は、業界の特性を考慮することが重要です。次に、いくつかの業界におけるコンピテンシー評価の特徴や留意点を説明します。

IT業界

IT業界では、技術革新のスピードが速く、新しい知識やスキルの習得が常に求められます。そのため、コンピテンシー評価では、自己学習力や柔軟性、問題解決力などを重視することが多いです。

また、プロジェクトベースの業務が多いため、チームワークやコミュニケーション力も重要な評価項目になります。

IT業界でコンピテンシー評価を導入する際は、技術トレンドの変化にあわせて、評価項目を定期的に見直すことが必要です。

製造業

製造業では、品質管理や生産効率が重要な課題となります。そのため、コンピテンシー評価では、品質意識や効率性、安全意識などを重視することが多いです。

また、現場での業務が中心となるため、実践的な問題解決力やチームワークも重要な評価項目になります。

製造業でコンピテンシー評価を導入する際は、現場の意見を取り入れながら、実態に即した評価項目を設定することが重要です。

小売業

小売業では、顧客満足度の向上が重要な課題となります。そのため、コンピテンシー評価では、接客スキルや提案力、問題解決力などを重視することが多いです。

また、店舗運営に関わる業務が中心となるため、マネジメント力やリーダーシップも重要な評価項目になります。

小売業でコンピテンシー評価を導入する際は、顧客の声を反映した評価項目の設定と、定期的に見直すことが必要です。

金融業

金融業では、高度な専門知識と高い倫理観が求められます。そのため、コンピテンシー評価では、専門知識や分析力、コンプライアンス意識などを重視することが多いです。

また、顧客との長期的な関係構築が重要なため、コミュニケーション力や顧客志向性も重要な評価項目になります。

金融業でコンピテンシー評価を導入する際は、法規制の変化に対応した評価項目の見直しと、評価者の倫理観の醸成が必要です。

サービス業

サービス業では、顧客満足度の向上と人材の育成が重要な課題となります。そのため、コンピテンシー評価では、接客スキルやコミュニケーション力、チームワークなどを重視することが多いです。

また、サービスの品質を維持・向上させるため、自己学習力や問題解決力も重要な評価項目になります。

サービス業でコンピテンシー評価を導入する際は、顧客の声を反映した評価項目の設定と、人材育成施策との連動が重要です。

コンピテンシー評価の導入事例

コンピテンシー評価を導入している企業の事例について紹介しましょう。

楽天グループ株式会社

楽天グループ株式会社では、社員の能力と成果を正当に評価し、成長を促進するために「コンピテンシー評価」と「パフォーマンス評価」を組み合わせた評価制度を導入し、半年に1回評価を実施しています。

「コンピテンシー評価」は、楽天の価値観である「楽天主義」の「成功の5つのコンセプト」にもとづく11の要素を評価基準とし、期待される行動を継続的に発揮できていたかを評価。コンピテンシー評価は給与に反映され、社員の行動面での成長を促しています。

「パフォーマンス評価」は、期初に設定した目標に対する成果や業績を評価し、賞与に反映される人事評価です。パフォーマンス評価によって、社員の成果主義を推進し、業績向上を目指しています。

さらに、楽天グループでは定期的な1on1ミーティングを通じて上司と部下の信頼関係を深め、フィードバックを行うことで、社員一人ひとりのキャリア開発を支援。これらの取り組みにより、社員のモチベーション向上と組織全体の成長を実現しています。

凸版印刷株式会社

凸版印刷株式会社では、全社員を対象に「5つの価値ある行動」をコンピテンシーとして定義し、コンピテンシー評価を実施しています。これらのコンピテンシーは、「お客様からの信頼」「事業基盤の強化」「社会的責任の遂行」「組織力の強化」「企業価値の向上」の5項目から構成され、社員が取るべき行動特性や行動様式を具体的に示したものです。

さらに、これらのコンピテンシーを実践するための階層別研修を人事制度に組み込み、7つの階層ごとに研修を設け、社員への浸透を図っています。この取り組みにより、社員一人ひとりが企業の価値観を共有し、組織全体のパフォーマンス向上と持続的な成長を目指しています。

クラレ株式会社

化学メーカーのクラレ株式会社では、2017年度から新たな人事評価制度として「クラレコンピテンシー5×5」を導入し、社員の行動指標として活用しています。

この人事評価制度は、MBO(目標管理制度)とコンピテンシー評価の2本柱で構成され、MBOは絶対評価として賞与に、コンピテンシー評価は相対評価として年次昇給に反映されているとのこと。

「クラレコンピテンシー5×5」は、クラレグループ全体で共通の行動指標として定められ、人材評価や能力開発の基準として活用されています。これにより、社員一人ひとりが求められる行動特性を明確に理解し、自己の能力開発やキャリア形成に役立てられているとのことです。

さらにクラレでは、各国・各社で異なる資格等級を職務サイズにもとづく基準で整理し、グローバルな人材配置や育成プログラムの選定に活用するなど、グローバルで一貫した人材マネジメント基盤の整備にも取り組んでいます。

これらの取り組みにより、社員のモチベーション向上や組織全体のパフォーマンス向上を図り、持続的な企業価値の向上を目指しています。

ケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズ

コンサルティング会社のケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズでは、社員の能力を23のコンピテンシー要素に細分化し、職位ごとの期待値と組み合わせた評価制度を運用しています。これにより、評価の透明性と納得性を高め、社員の成長を促進しているとのこと。

評価は四半期ごとに実施され、プロジェクトの節目には「サンセット・ミーティング」を行い、成果や課題を振り返ります。プロジェクトごとに「プロジェクトレビュー」と呼ばれるコンピテンシーに沿った成績表を作成し、年間を通じて集めた成績表をもとに総合的な評価を実施。評価者の負担軽減と被評価者の自己認識向上を目的に、自身の評価を下書きする「セルフレビュー」も実行しています。

また、社員自身が評価内容を社内に公開する仕組みを導入し、自己開示とフィードバックの質を向上させています。これらの取り組みにより、社員一人ひとりの能力開発と組織全体のパフォーマンス向上を実現しているとのことです。

コンピテンシー評価と他の評価制度を併用する方法

コンピテンシー評価は単独での使用もできますが、他の評価制度と組み合わせることで、より効果的な人材評価を行えます。次に、コンピテンシー評価と併用しやすい評価制度について説明します。

MBO(目標管理制度)

MBO(目標管理制度)は、従業員一人ひとりの目標設定と達成度を評価する制度です。コンピテンシー評価と目標管理制度を併用することで、従業員の行動特性と業績の両面から評価できます。

目標設定の際に、コンピテンシーが意識できる行動目標を設定することで、プロセスの改善と業績向上を同時に促せます。

また、評価の際には、目標達成度とコンピテンシーの両方を考慮することで、より多面的な評価が可能です。

360度評価

360度評価は、上司・同僚・部下など、多様な立場の評価者から従業員を評価する制度です。コンピテンシー評価と360度評価を併用することで、従業員の行動特性を多角的に把握できます。

360度評価の評価項目をコンピテンシーにもとづいて設定することで、コンピテンシー評価の信頼性と妥当性を高められます。また、360度評価の結果を活用して、従業員の強みと改善点を明確にし、効果的な能力開発も可能です。

成果主義賃金制度

成果主義賃金制度は、業績や成果にもとづいて賃金を決定する制度です。コンピテンシー評価と成果主義賃金制度を併用することで、プロセスの改善と業績向上を賃金面からも支援できます。

コンピテンシー評価の結果を賃金決定の一要素として取り入れることで、モチベーションを高め、人材の成長を促せます。

ただし、賃金決定の際には、コンピテンシー評価と業績評価のバランスを考慮し、公平性と透明性を確保することが重要です。

キャリア開発支援制度

キャリア開発支援制度とは、従業員のキャリア形成を支援する制度です。コンピテンシー評価とキャリア開発支援制度を併用することで、従業員の能力開発とキャリア形成を戦略的に進められます。

コンピテンシー評価の結果を活用することで、従業員の強みと改善点を明確にし、個別のキャリア開発計画が作成可能です。

また、将来必要となるコンピテンシーを明確にし、それにもとづいた能力開発の施策を実施することで、組織の中長期的な人材育成にもつなげられます。

コンピテンシー評価で人材育成を

コンピテンシー評価を導入することによって、納得感のある評価と効率的な人材育成が可能です。従来の能力評価とは別の評価基準になることも、大きなメリットといえます。

ただし、コンピテンシー評価の設計と運用には時間がかかるので、どちらかといえば成熟した業界に適しており、成功モデルや業界のトレンドが頻繁に変化する業界では適用が難しい傾向にあります。

実務上はコンピテンシーモデルをゼロから生み出すのは困難なので、コンピテンシー・ディクショナリーをベースに、カスタマイズすることによってオリジナルの評価基準を生み出すのがおすすめです。

また、人事評価システムを活用することで、より効果的にコンピテンシー評価を運用できます。ぜひ次の動画資料もチェックしてみてください。

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