CRMマーケティングとは?導入メリットや施策・戦略をわかりやすく解説
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CRMマーケティングとは?
CRMマーケティングとは、「顧客関係管理(Customer Relationship Management)」によって管理された顧客の情報や、顧客との関係をマーケティングに活用する手法です。
顧客との関係がすでに構築されているため、移り変わる顧客のニーズを常に捉えて行動パターンを他社よりも深く理解したうえでセールスが行えます。すでに顧客との関係ができていることから、新規で売り上げを立てるよりも売り上げを伸ばしやすいと考えられており、昨今多くの企業が取り入れているマーケティングの手法です。
CRMマーケティングが重要だといわれる理由
CRMマーケティングが重要だといわれる理由には次のようなものがあります。それぞれを詳しく解説します。
- 市場環境の変化が激しい
- 消費者のニーズや行動が多様化している
- 従来の営業手法が通用しない時代になった
市場環境の変化が激しい
現代社会の市場環境は過去に類を見ないほど目まぐるしく変化しており、このような市場の変化に追いつくためにも、企業は常に顧客と良好な関係性を保ちながら顧客の求めるものをいち早く提供しなければなりません。テレワーク環境への移行や生成AIの出現などにより市場は日々進化し続け、そのたびに大きくビジネス環境も移り変わります。
このような状況下でも、CRMマーケティングを活用すれば市場や顧客ニーズの変化に迅速に対応可能です。そのため、CRMマーケティングの重要性はますます高まっています。
消費者のニーズや行動が多様化している
顧客ニーズをピンポイントで理解した施策を行わなければ生き残れないほど、消費者のニーズや行動が多様化していることもCRMマーケティングの活用が重要といわれている理由のひとつです。
消費者のニーズや行動は多様化し続けています。インターネットやスマートフォンの普及により、今では消費者が自身のニーズを満たす商品へ簡単かつ自由にアクセスできるようになりました。また、消費者のニーズは複雑化が進み、適切なニーズを満たさなければものが売れない時代です。
この多様化・複雑化したニーズを把握するためにもCRMマーケティングが役立ちます。CRMマーケティングを用いて既存顧客と良好な関係を築き、より的確に顧客のニーズを把握することで顧客の潜在的欲求や課題に適切なアプローチが可能です。
従来の営業手法が通用しない時代になった
テレワーク環境への移行により対面営業がしづらい状況になり、従来の営業手法が通用しなくなってきていることも、CRMマーケティングが重要になった理由です。
多くの企業がオンラインでの営業、インサイドセールスやデジタルマーケティングに力を入れる中で、今までは対面の肌感で理解していた顧客情報が得られない状況になっています。そのため、デジタル環境でも顧客情報を正しく蓄積し、情報を販売活動に活かせるCRMマーケティングの重要性が上がっています。
CRMマーケティングの体制が整っていれば、対面でのコミュニケーションが取れずとも、毎回の商談やカスタマーサポートなどのやり取りを通じて顧客情報を正しく蓄積できるでしょう。蓄積した情報をもとに、顧客との良好な関係を築くことで解約の防止や売り上げの向上につなげられるため、CRMマーケティングは大きな注目を集めています。
CRMマーケティングを導入するメリット
CRMマーケティングを導入するメリットとして、次のようなものが挙げられます。
- 顧客分析による新規売り上げの増加
- 既存顧客のリピート率やLTV改善
- 顧客満足度向上によるサービス継続率の向上
- 効果的な施策実施によるコスト削減
- 顧客ニーズ深堀りによる新規顧客開拓
CRMマーケティングの各メリットについてより詳細に解説します。
顧客分析による新規売り上げの増加
CRMマーケティングをうまく活用できれば顧客分析による新規売り上げの増加が見込めることが大きなメリットです。
たとえば、今まで手当たり次第にテレアポで商談を取り付けていた企業が、CRMマーケティングを取り入れて既存顧客の分析を行ったとしましょう。分析の結果、強みを活かせる業界や業種、従業員規模がわかったら、強みのあるセグメントに力を入れて商談を行うことで今までよりもアポ率や受注率の向上が見込めるはずです。
このように、顧客情報の分析によって新規の売り上げを増加させられることはCRMマーケティングのメリットの1つです。
既存顧客のリピート率やLTV改善
CRMマーケティングによって既存顧客がリピートする条件がわかれば、条件に当てはまるような顧客には積極的にセールスをかけることが施策として考えられます。また、この施策によってリピート率が向上すれば新規顧客のLTVが向上し、マーケティングにより大きなコストをかけてもリターンが見込めると考えて、攻めのマーケティング手法を取れるでしょう。営業活動の多くのフェーズでメリットを享受できます。
顧客満足度向上によるサービス継続率の向上
継続型サービスを提供する企業にとってはサービスの継続率は非常に重要な指標です。CRMマーケティングを活用すればこの継続率も向上できます。
既存顧客の解約率の高さが課題である企業において、CRMマーケティングを取り入れると顧客との関係構築の中で解約理由がわかります。解約する顧客の中に共通する解約理由を見つけられれば、その理由にあたる部分を改善して継続率の向上を目指せるでしょう。
CRMマーケティングは売り上げを作るためだけではなく、積み上げた売り上げを守るためにも活用できることがメリットと言えます。
効果的な施策実施によるコスト削減
CRMマーケティングはコスト削減にも役立つというメリットがあります。
マーケティングの手法もオンライン・オフラインを問わず多岐にわたり、自社に最も向いている手法を判断することは難しいです。しかし、CRMマーケティングを活用し、顧客がどのような経路で商品やサービスの顧客になったか追跡することで、コスパの高いマーケティング手法を明らかにできます。
たとえば、テレビCMと電車広告を行う企業がCRMマーケティングを取り入れたと仮定して考えましょう。CRMマーケティングの観点から分析すると、テレビCMの方は契約に至らない商談が増えているばかりである一方で、電車広告は増える商談数は少ないものの成約率が高い傾向にあるとわかる場合があります。
この場合、CRMマーケティングのおかげでテレビCMにかけている予算を削減し、費用の安い電車広告に回すことで顧客獲得単価を大きく下げられるはずです。
このように、広告にかかるコストや顧客獲得単価を下げられることがCRMマーケティングのメリットです。
CRMマーケティングによる成功事例
CRMマーケティングは多くのメリットがあります。メリットを的確に活用することでCRMマーケティングを成功させた事例を2つ紹介します。
営業件数が約9倍になったコンサル企業
ある求人コンサル企業では営業の件数が毎月14~15件ほどだったところが、CRMマーケティングのシステムを導入したことで120件以上に増加しました。
この企業の課題は、営業活動が属人化していてクライアントや求職者の情報が担当にしかわからないことや、求職者が求める求人情報を共有する仕組みがないことでした。そこで、CRMマーケティングシステムを導入することでクライアントや求人の管理を一元化し、営業担当がクライアントや求職者の情報を公平に確認できる仕組みを構築しました。
その結果、地域ごとに求職者のいる場所や求人のある場所が最新情報としてわかるようになったため、営業件数の増加につながりました。
顧客データを集約し業務効率化したメーカー
ある工場の機械化や金型販売を行うメーカーはCRMマーケティングのシステムを導入することで、ムリ・ムダ・ムラを削減し業務を効率化、顧客数を前年比の3倍にすることに成功しました。
このメーカーでは、認知獲得からサービス利用までのすべてのフェーズで営業担当がフォローする体制で営業活動を行っており、次のような課題を抱えていました。
- 対応範囲の広さからミスや機会損失が多発している
- 顧客の基本データや購買履歴、別部署の接触履歴やクレーム履歴などがバラバラに管理されていた
- その結果、営業活動の前の確認に余計な時間がかかっている
そこでCRMマーケティングシステムを導入し顧客データを一元化、営業プロセスを標準化することで業務効率化を図りました。結果として生産性は3倍になり、顧客への接触時間も倍増。さらに、顧客数も前年比3倍にまで成長しました。
CRMマーケティングの具体的な施策事例
CRMマーケティングの成功事例で取り上げた施策の他にも、一般的なCRMマーケティングにおいては次のような施策があります。
- 顧客に合わせたメールマガジンの配信
- ニーズの高い顧客に対するセミナーの開催
- 顧客のレベルに合わせたフォローアップ連絡
- 潜在顧客の多いSNSツールの活用
- 顧客ニーズを深堀りするアンケート
- 見込みの強い潜在層へのアウトバウンドコール
- ロイヤル顧客に近い層へのアドレサブル広告
それぞれの施策について、具体的にどのようなことを行うか確認します。
顧客に合わせたメールマガジンの配信
CRMマーケティングによる顧客分析をしたあと、顧客ごとの属性に合わせたメールマーケティングを送信することは有効なCRMマーケティングの施策です。過去に失注した顧客、受注はしたが早期解約になった顧客、継続してサービスを使い続けているロイヤルカスタマーでは届けるべきメールの内容が異なります。
これらの顧客を分けてそれぞれのターゲットに適したメールを配信することで、メールマガジンの効果を最大限に引き出せるでしょう。
ニーズの高い顧客に対するセミナーの開催
ニーズが高いとわかった顧客に対しては無料セミナーへの招待も有効な手段です。すでにニーズが高いとわかっているターゲット層、さらにわざわざ時間を確保してセミナーに参加する層は、一定の受注見込みがあると考えられます。
セミナー参加後に丁寧なフォローアップをすることで商談や受注につなげやすいと考えられます。
顧客のレベルに合わせたフォローアップ連絡
CRMマーケティングとカスタマーサクセス(CS)活動は密接な関係にあります。顧客のレベルに合わせたフォローアップ連絡をすることは、CRMマーケティングともCS活動ともいえる施策です。
オンボーディングの状況にある顧客には頻繁に連絡を取りサービスを十分に使えているか、活用するなかで不明点や質問はないかなど、積極的にサポートすることで顧客の満足度を向上させれます。一方、すでにサービスの使い方を十分に理解し活用できている企業では、あまり頻繁に連絡をすると本来の業務に差し支えるため敬遠されてしまうかもしれません。
このように顧客のレベルに合わせて最適なフォローアップをすることで顧客満足度は向上し、結果として顧客はサービスを継続します。これが、CRMマーケティングやCSの成果です。
潜在顧客の多いSNSツールの活用
SNSは多くの人が利用しており、潜在顧客を発掘することに適しているツールです。X(旧Twitter)やInstagramなど、多くのSNSで企業が活動しています。
CRMマーケティングによって見込み客になりそうなターゲット層を分析できたら、ターゲット層が興味をもちそうな投稿を心がけることで望ましい属性にアピールできるでしょう。
顧客ニーズを深堀りするアンケート
継続的なCRMマーケティングによって蓄積された顧客情報を活用して、アンケート調査を行うことも優れたマーケティング手法です。
アンケートを行うことで商品やサービスに対して顧客が実際にどの程度満足しているか、どのような点に課題を感じているかなどが明らかになります。アンケートからわかった顧客の情報をさらに活用することで、サービスのさらなる改善や顧客への効率的な営業活動やマーケティングに活用できます。
見込みの強い潜在層へのアウトバウンドコール
CRMマーケティングを行って見込みが強い顧客ターゲットの層がわかれば、そのような属性をもつターゲットに対してアウトバウンドコールを行うことも有効な営業活動になるでしょう。
やみくもに数だけ重ねるアウトバウンドコールでは営業活動は非効率的になり、テレアポオペレーターもムダに疲弊します。CRMマーケティングの分析結果から、顧客になりうるよい属性をもつ見込み客に集中してアウトバウンドコールを行うことで、アポ率の向上、成約率の向上を目指せます。また、質の高いテレアポを行う過程でスクリプトも洗練され、より商談化しやすいアウトバウンドコールを実施できるでしょう。
ロイヤルカスタマーに近い層へのアドレサブル広告
CRMマーケティングでロイヤルカスタマーになりやすい属性を絞り込めれば、その属性に近い層に対してアドレサブル広告を打つことも検討しましょう。アドレサブル広告とは、特定のターゲットに対してターゲティングを行いながら広告を配信する方法です。
ロイヤルカスタマーの属性に絞って広告配信ができることで、効率よく質の高いリストを獲得できる可能性が高いでしょう。
一般的なCRMマーケティングの流れ
CRMマーケティングを行うときには、一般的に次のような流れで行います。
- 顧客情報の収集と蓄積
- 顧客情報の分析
- 分析に基づく戦略立案と実行
- 施策の振り返りと改善
- 必要ならCRMマーケティングの支援システムを導入
それぞれのステップについて解説します。
顧客情報の収集と蓄積
質の高いCRMマーケティングを行うためには、まず質の高い顧客情報を収集して蓄積しなけれなりません。CRMマーケティングでは蓄積された顧客データをもとに分析・戦略立案を行うため、基盤となる顧客情報の質が低いと分析や戦略の質も下がってしまいます。
単純なデモグラフィックデータだけではなく、さまざまな購買活動に関する情報も収集・蓄積できる体制を構築しましょう。
- 顧客が利用したサービス
- 利用タイミング
- 最終利用日
- 継続期間
- 競合として検討されたサービス
顧客情報の分析
顧客情報がある程度蓄積されたら、蓄積された情報を分析しなければなりません。蓄積された顧客情報を分析し、戦略立案につなげるためです。具体的な顧客のペルソナが完成できるレベルまで分析を行い、カスタマージャーニーマップを作成して、戦略立案のための材料を揃えていきます。
分析に基づく戦略立案と実行
十分な分析ができたら、分析に基づく戦略立案と実行のフェーズに入ります。
分析によって導き出された最適な顧客像や受注までのカスタマージャーニーと、現在商談や取引を行っている顧客との差分を見つけ、差分を埋められるようなマーケティングや営業の活動を行います。
適切なKPIを定め、KPIに対してギャップが大きいものから優先的に対応をして、顧客との関係を改善し受注率や継続率のアップにつなげましょう。
施策の振り返りと改善
理想的顧客と現実の顧客のギャップを埋めるための施策は1つではありません。また、すべての施策が必ず成功するとも限りません。すべての施策は必ず効果検証を行い次の施策の改善に活かしましょう。
うまくいった施策があればなぜうまくいったかをノウハウとして蓄積し、失敗した施策は何が失敗の原因かを突き止めてまた仮説立てをして次の施策に活かします。一般にPDCAサイクルを回すといわれるこれらの一連の流れを何度も繰り返すことで、CRMマーケティングは必ず洗練されていくでしょう。
必要ならCRMマーケティングの支援システムを導入
CRMマーケティングに必要な顧客情報の収集・蓄積はCRMマーケティングシステムを利用すると便利です。
単純な顧客のデモグラフィック情報だけであれば、システムを導入しないまま管理もできる可能性はあるでしょう。しかし、顧客の詳細な購買データや、時系列に伴った顧客ステータスの遷移なども細かく収集する必要があるCRMマーケティングでは、システムを導入せずに顧客情報を管理するのはやや現実的ではありません。
CRMマーケティングに本格的に取り組もうと考えている場合には、ぜひCRMマーケティングを支援するシステムの導入も検討してみましょう。
CRMマーケティングで効率よく業務改善しよう
CRMマーケティングを活用すれば効率よく業務改善を行えます。既存顧客との関係性がより良好になり、顧客満足度と継続率の向上はもっともわかりやすいCRMマーケティングでの成果です。
そのほかにも新規や既存を問わず売り上げを作る活動に役立つことはもちろんのこと、マーケティング費用の削減や顧客獲得単価を下げられる可能性があることも、CRMマーケティングの成果として考えられます。
変化の激しい市場環境に対応し、多様化・複雑化する顧客ニーズに応えて売り上げを伸ばしていきたいと考える人は、ぜひCRMマーケティングの活用を検討してみましょう。