人事でシステム導入増加、DX推進派も75%に - 目標管理や評価、人材管理をツールで効率よく
目次を閉じる
コロナでも人事部門の課題は変わらない
経済活動の推進と新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大の防止を両立させようと、企業は事業を止めずに従業員や顧客の安全を確保する方法を模索中です。テレワーク(リモートワーク)による在宅勤務や、オフィス勤務を併用するハイブリッドワークなど、新しい働き方も試みられています。
働く環境に変革の波が押し寄せていますが、人事分野の重要課題に変化はないようです。企業の人事部門を対象としたアトラエの調査によると、コロナ禍の現在も1年前と同様、「マネージャー層・管理職の育成ができていない」「優秀な人材が辞めてしまう」ことに悩んでいる企業が多くみられました。
課題 | 2019年 | 2020年 |
---|---|---|
マネージャー層・管理職の 育成ができていない |
47.7% | 46% |
優秀な人材が辞めてしまう | 38.7% | 36% |
※アトラエ「【調査結果】人事領域におけるDX加速!」を元に作成
また、テレワークで直接顔を合わせる機会が減った影響で、「テレワーク環境下でコミュニケーション量が減っている」(30.7%)、「テレワーク環境下での評価方法が分からない」(28.7%)という悩みも目立ちます。
人事領域でもDXが重要事項に
人事分野の課題は変わらず存在しているものの、働く環境や価値観はCOVID-19によって激変しました。アトラエは、この状況で課題を解決するために、人事領域のデジタルトランスフォーメーション(DX)活用が重要と指摘しています。
高まるデジタルへの期待
課題の解決に有効だと考えられる対策について尋ねたところ、2019年の調査と同じく「社員との面談・1on1ミーティング」(52.4%)、「研修・教育制度の充実」(50.9%)、「待遇改善」(41%)がトップ3です。
ただし、4位には、注目されつつある業績評価制度「OKR(Objectives and Key Results)」を含む「目標管理・OKR関連サービス・システムの導入」(38.7%)が入りました。しかも、前年に比べ8ポイント以上も増えていて、期待が高まっているようです。
人事向けシステム導入が増加
対策の実施状況については、「社員との面談・1on1ミーティング」(47.2%)と並び、「目標管理・OKR関連サービス・システムの導入」(33%)の増加が目立ちます。
また、「従業員サーベイ関連サービス・システム導入」(27.9%)、「タレントマネジメント関連サービス・システム導入」(27.9%)も増えていて、人事領域でDXに積極的な企業が増加したということです。
タレントマネジメントの現状
COVID-19対策で、直接コミュニケーション可能な機会が減っています。そのため、人材を効率よく管理するシステムの重要性が強く認識されるようになりました。
1年前の調査になりますが、ProFutureの「HR総研:『タレントマネジメントシステム』に関するアンケート調査」で、タレントマネジメントの認知度や、必要なシステムやサービスの導入状況を確認しましょう。
認知度は9割以上
「タレントマネジメント」という概念を「知っている」企業は66%あり、「聞いたことがある」企業の26%を加えると、認知度は9割以上になりました。
そして、タレントマネジメントを推進することについては、「重要な人事課題の一つである」が42%、「特に重要な人事課題である」が15%と、重要視する企業が過半数に上ります。ただし、重要視するとの回答は規模の大きな企業ほど高くなりました。中小企業では、人の顔が見えて従業員の能力を把握しやすいことから、タレントマネジメントの必要性が低いのかもしれません。
運用率は2割止まり
実際のタレントマネジメント運用率は、認知度の高さと重要視されている状況にもかかわらず、21%と高くありません。もっとも多い回答は、「関心はあるが、運用していない」の52%でした。企業の規模別では、従業員数が1,001名以上だと36%、301名から1,000名だと27%、300名以下だと9%で、やはり大きな企業ほどタレントマネジメントの必要性が高まるようです。
なお、導入するタレントマネジメントシステムの選定基準は、65%の「運用コスト」、51%の「初期コスト」が上位に並びました。このことから、予算の限られる中小企業はたとえ必要性を感じても導入に踏み切れないところが多いと考えられます。
人材管理へのデジタル活用、課題は?
タレントマネジメントシステムなどを導入しようとすると、予算の壁が立ちはだかります。この壁を壊して人事DXを推進するには、経営者の理解と協力が欠かせません。
パーソル総合研究所が調べたところ、人材マネジメントに対するデジタル活用への関心は高いのですが、予算の確保や経営トップの関与は不十分なようです。
人事のDXはまだこれから
パーソル総合研究所の調査では、人材マネジメントのデジタル活用を企業の34.5%が「積極的に進めた方がいいと思う」、41.0%が「まあ進めた方がいいと思う」と回答しました。つまり、75.5%が推進派です。
ところが、「経営トップがデジタル活用に積極的に関与している」は42.8%、「デジタル活用に関する十分な予算が確保されている」は31.3%、「人材に関するデータの活用を推進する体制が整っている」は29.0%にとどまります。人事業務でデジタル活用が必要と受け止められていても、実際のDXはまだこれからです。
COVID-19の影響でテレワークが広まり、テレワークと相性の良いことからジョブ型雇用制度を採用する企業が増えています。ジョブ型雇用の場合、対象とする業務で求められる知識や能力がある人材かどうかを見極めなければなりません。企業内の人材を評価して、適切な業務で活躍してもらうには、膨大な人事データを多角的に分析して活用するタレントマネジメントシステムの助けが必要でしょう。
さまざまな場面でデジタル化の機運が高まっている今は、人事部門のDX推進のチャンスといえます。