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流動資産とは?内訳と見方、固定資産や繰延資産との違い

最終更新日:(記事の情報は現在から306日前のものです)
流動資産とは、企業の資産の中で1年以内といった短期間に現金化可能な資産のことです。流動資産とは何か、内訳と内容、勘定科目や見方、固定資産や繰延資産との違いについてわかりやすく解説します。企業の支払い能力を判断する、流動比率や当座比率についても説明します。

賃借対照表の見方がわかれば、財務状況の把握や安全な取引先を見極めるときに役立ちます。しかし、資産である「流動資産」「固定資産」「繰延資産」といった財務用語の意味は、なかなか理解しにくいものです。

本記事では、流動資産の内訳と内容、勘定科目、固定資産や繰延資産との違いについてわかりやすく解説します。支払い能力を判断する、流動比率や当座比率についても説明します。

流動資産とは

流動資産とは、資産のなかで1年以内といった短期間に現金化可能な資産のことです。たとえば、販売に向けて取り寄せた商品や加工するために仕入れた部品など、1年のうちに販売が完了し現金として回収できるものが対象です。反対に短期間で現金化できない資産は固定資産として扱われます。

流動資産は、貸借対照表の左側の「資産の部」に含まれており、貸借対照表の左上に表示されています。

流動資産の確保は企業経営を継続するうえで重要なポイントです。固定資産や繰延資産をいくら保有しても、現金化して人件費や仕入費用を支払えなければ倒産する可能性があります。支払いの原資となる流動資産の多寡は、会社が安全に経営できるかの重要な指標です。

流動資産の内訳

具体的には次のような資産が流動資産として扱われます。

【現金系】

  • 現金
  • 小口現金
  • 普通預金
  • 当座預金
  • 定期預金

【売上債権系】

  • 受取手形
  • 売掛金(▲貸倒引当金)

有価証券系

  • 有価証券

棚卸資産系】

  • 商品
  • 製品
  • 半製品
  • 仕掛品
  • 原材料
  • 貯蔵品

【その他】

  • 短期貸付金(▲貸倒引当金)
  • 前渡金
  • 立替金
  • 仮払金
  • 仮払消費税など
  • 未収入金
  • 未払消費税など
  • 前払費用
  • 未収収益
  • 繰延税金資産

貸倒引当金とは

流動資産のなかには貸倒引当金といった項目があります。貸倒引当金とは、債権が貸し倒れたときに備えて、あらかじめ貸し倒れる前提で資産から帳簿上減らしておく資産のことを指します。

たとえば、売掛金が1億円あったとしても、この1億円のすべてが回収できるとは限りません。このうち何%かは取引先の倒産、業績不振などにより回収できなくなる可能性があるのです。こうした事態を想定して、会計ではあらかじめ貸し倒れるかもしれない分を資産から差し引きます。

1億円のうち2%貸し倒れる可能性があるなら、貸倒引当金は、1億円 × 2% = 200万円となり、売掛金は1億円 - 200万円 = 9,800万円と評価します。

流動資産の勘定科目

流動資産の勘定科目は、「当座資産」「棚卸資産」「その他流動資産」の3種類に大きく分けられます。

当座資産

当座資産には、現金・預金・売掛金・受取手形・有価証券などが含まれます。流動資産のなかでも、とくに現金化しやすい資産です。

  • 現金預金:現金や預金。満期が1年未満の定期預金
  • 売掛金:販売した商品に対しての請求を行い、後日入金される予定の債権
  • 受取手形:商品の販売の対価として受け取った有価証券
  • 有価証券:売買や満期保有を目的とするもので満期日が1年以内のもの

現金化してすぐに支払いに利用できるかを基準にしているので、有価証券であっても長期保有を前提としたり大量保有していたりして、すぐに換金できない有価証券は当座資金に含まれません。

棚卸資産

棚卸資産とは、倉庫や工場に残っている在庫を指します。

  • 商品:販売目的で外部から仕入れた商品在庫
  • 製品:販売目的で生産・加工した商品在庫やサービス
  • 仕掛品:工場で生産・加工途中にある製品
  • 原材料:原料、材料、部品

棚卸資産は、売れば現金に変えられる特徴があり、在庫をもつビジネスではかならず発生する資産です。当座資産よりは現金化しにくいため、不良在庫として販売できないケースをはじめ注意する点が多くなります。

その他流動資産

その他流動資産とは、当座資産と棚卸資産のどちらにも分類されない資産です。例として短期貸付金(1年以内の返済を条件としてお金を貸す)や未収金(本業以外で発生したもの)のほか、前渡金・前払費用・仮払金・立替金などが挙げられます。

  • 短期貸付金:取引先、仕入れ先、関連会社、従業員などへの貸付金
  • 前渡金:材料費・外注費・仕入れ代金の前払い、商品の手付金
  • 立替金:取引先、従業員などに対する一時的な立替払い
  • 仮払金:旅費交通費、交際費などのおおよその一時支払い金
  • 未収入金:固定資産、有価証券、備品・機械・設備などの売却の未収金
  • 前払費用:継続的に購入する商品やサービスの翌期の前払い金

これらは、流動資産に含まれているので流動性は高いと思いがちです。しかし、実際には債権回収ができなかったり、現金化まで期間が延びたりするので、額面どおりの資産価値があるとは限りません。


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流動比率とは

流動比率とは、流動資産と流動負債を用いて計算される比率で、支払い能力を判断する経営の安全性を示す指標に用いられます。流動比率の求め方は次の数式のとおりです。

流動比率(%)= 流動資産 ÷ 流動負債 × 100

たとえば、流動資産が10億円に対して、流動負債が8億円の場合は、10億円÷8億円=125%が流動比率となります。逆に流動資産が8億円に対して、流動負債が10億円だとすると、流動比率は、8億円÷10億円=80%となります。

流動負債とは

流動負債とは、おおよそ1年以内に支払いが発生する債務のことを指し、貸借対照表における「負債の部」の流動資産の項目に記載されています。

流動負債の具体例としては、買掛金・支払手形・短期借入金・未払金・未払費用・前受金・預り金などが挙げられます。

流動比率の評価方法

流動比率から支払い能力を判断できます。流動比率が高ければ支払い能力が高く、流動比率が低ければ支払い能力も低いといえます。流動比率は、余裕資金を表すので与信管理で重要な指標です。

一般的には、理想的な流動比率は200%です。ただ、中小企業においては150%程度が現実的な数値でしょう。流動比率が100%を切ると、今後1年に支払うべきお金よりも手持ちのお金が少ないことになるので注意が必要です。ただし流動比率が高くても、不良在庫が含まれていたり回収できない債権が含まれていたりすると、資金繰りに困窮する場合があります。

流動比率を高めるポイント

流動比率を高めるためには、流動資産を増やすこと、流動負債を減らすことの2つのアプローチがあります。

流動資産を増やす方法としては、ムダな在庫や不良債権をもたないこと、迅速な債権回収の実行、ムダな固定資産を売却して現金化する方法が挙げられます。

なお、このような戦略は「資産の流動性を高める」取り組みです。流動負債を減らす方法としては、短期借入金を長期借入金にできるだけ借り換えること、利益が出たら短期借入金を返済することなどが考えられます。

流動比率を高めるためには、財務状況や在庫状況をデータで可視化することからはじめましょう。販売管理システム・在庫管理システム・債権管理システムといったシステムを導入すれば、取引状況や在庫の課題が明らかになり、流動比率を高める施策が可能になります。

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流動比率の目安

流動比率を高めることは、企業経営においての原則です。適正な流動比率は業種によって異なりますが、一般的に120%程度であれば、短期の資金繰りで困ることはないといわれています。

一方で流動比率が100%未満になると、短期的な資産に対して短期的な負債が上回るので、資金繰りに困る可能性が高くなり、資金調達をするといった早期の資金繰り改善が求められます。

流動比率が高ければよいのか?

流動比率が300%・400%の企業はもちろん存在し、流動比率が高いほど緊急時にも安全です。ただし、流動比率が高すぎるのは別の意味で問題があります。

企業は事業に投資して、そこから利益を得て、得た利益をまた事業に投資するサイクルを繰り返します。流動比率が極端に高い場合は、事業投資に前向きではない、この先の事業展開が見えていない可能性も考えられるでしょう。よって、中長期的には、いまの収益事業が儲からなくなり業績不振になるかもしれない、新しい事業の柱が育っていない可能性もあります。

また、流動比率が高い上場企業も別の観点から問題があります。上場企業は事業で収益を上げて株主への分配が必要です。しかし、流動比率が高いのは、手元の流動資産が過剰なので、本来的にこれは株主に分配した方がよいのではとの見方が生じえます。

より手堅く評価するのであれば「当座比率」

流動比率にもとづいて安全性を評価するのには一つ問題があります。流動資産はおおむね1年以内に換金できる資産といっても、実際に換金できる保証はないことです。

たとえば、棚卸資産のなかに実際に販売できない不良在庫が含まれているかもしれませんし、仕掛品は製造途中なので実際には現金化できません。

このようなことを考慮すると、流動比率で財務的な安全性を評価すると、安全なように見えて安全ではないといったケースも考えられるでしょう。より手堅く安全性を評価するためには流動比率ではなく当座比率と呼ばれる指標を使用します。

当座比率は次の式で算定します。

当座比率(%)= 当座資産 ÷ 流動負債 × 100

当座資産とは、現金預金・有価証券・受取手形・売掛金の合計のことを指します。流動資産のなかでも現金化が容易な資産をもとに、流動負債との比率を出しているので、流動比率よりも必ず数値は低くなりますが、財務的な信頼性は高くなります。

その他の流動資産に関する指標

その他にも流動資産に関する経営指標はいくつか存在します。

たとえば、流動資産回転率は、「売上 ÷ 流動資産」により求める指標で、手元の現金や在庫などでどれだけ効率的に売上を生み出しているのかを指します。業種によって流動資産回転率は大きく異なりますが、1.5回転~3.5回転ほどになるのが一般的です。

流動資産の貸借対照表への記載方法

流動資産は、貸借対照表の左側「資産の部」に記載します。

貸借対照表の配列には「流動性配列法」「固定性配列法」の2種類があり、現金化しやすい流動性の高いものから表示する「流動性配列法」を使用するのが一般的です。

流動性配列法では、資産の部は「流動資産・固定資産・繰延資産」に分類され、流動性の高い順にうえから「流動資産・固定資産・繰延資産」と表示します。また、流動資産のなかでも現金化しやすいものから表示するため、「資産の部」の一番上は「現金・預貯金」です。

ただし、電力会社のような固定資産がメインとなる業種では、流動性の低い資産から順に並べる「固定性配列法」で作成される場合があります。この場合は、固定資産が流動資産よりも上部に表示されます。

固定資産と繰延資産

資産にある残りの固定資産と繰延資産を説明します。

固定資産とは

固定資産とは、短期間で現金化できない資産のことです。非流動資産と呼ばれることもあります。固定資産はさらに「有形固定資産」「無形固定資産」「投資その他の資産」に分類可能です。たとえば、土地や建物、設備や特許権、子会社の株式などが固定資産に該当します。

固定資産(非流動性資産)と流動資産との違いとしては、現金化しやすいかどうかです。流動資産は現金や預金のような「1年以内に現金化できる資産」であるのに対し、固定資産は土地や建物など「現金化に1年以上かかる資産」のことをいいます。

種類 特徴
有形固定資産 形のある固定資産。土地、ビル、生産工場、機械などの設備が該当
無形固定資産 形のない収益にかかわる資産。例としては特許権、営業権などが該当
投資その他の資産 長期的に保有する「株」などが該当。たとえば子会社へ出資するときに用いる
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固定比率とは

固定比率とは、固定資産と自己資本を比較した数値で、流動比率に対して長期的な経営の安全性を示す指標に用いられます。固定比率の求め方は次の数式のとおりです。

固定比率(%)= 固定資産 ÷ 自己資本 × 100

固定比率は流動比率とは逆に、数値が100%以下になることが、固定資産より自己資本が上回っており、自己資本のみで会社経営が成り立っている長期的な安定経営であることを示しています。

ただし、固定比率が100%を超えているからといって、即座に企業経営に問題があることにはなりません。一般的な企業では、固定比率が120%程度でも通常であると見なされています。

繰延資産とは

繰延資産には、利用も売却もできない資産が分類されます。支出時に「費用」として計上するべきものでも、一部のものは「効果が長期的に得られる」として繰延資産としての計上が可能です。支出した費用のなかで、効果が1年以上に及ぶものと定義が可能です。

たとえば、開業費や創立費、社債発行費、開発費が該当します。会計上の繰延資産と税務上の繰延資産は、同じでも償却(費用として計上すること)の方法が異なります。会計上では好きなときに償却できますが、税務上においては、税法上の償却期間にあわせて償却が必要です。

流動資産に注目して賃借対照表で経営課題を探ろう

流動資産の意味や内訳、勘定科目、固定資産との違い、流動比率といった指標について紹介しました。財務用語の意味を正しく理解し、賃借対照表の見方がわかれば、財務状況の把握や経営課題を見つけることに役立ちます。デジタルツールやシステムを利用して資産の流動性を高め、企業を安定的に成長させていきましょう。

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