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ナレッジマネジメントとは?意味と目的・メリット・成功事例

最終更新日:(記事の情報は現在から17日前のものです)
ナレッジマネジメントとは、個人の知識を企業全体で蓄積・共有し、業務の効率化や企業価値を高める経営手法です。ナレッジマネジメントの意味や知識経営のSECIモデル、目的とメリット、導入方法と導入事例、ナレッジマネジメントを行うためのツールについてわかりやすく解説します。

ナレッジマネジメントは、個人の知識や経験を企業内で共有し、生産性や効率性を高めていく経営手法のことです。働き方改革によって業務効率化が求められるようになり、ナレッジマネジメントの導入を検討している企業も増加しつつあります。

しかし、ナレッジマネジメントとはどのようなものなのか、どのようなプロセスで行ったらよいのか、ピンとこない方も多いのではないでしょうか。ナレッジマネジメントの意味や基本知識、目的とメリット、導入方法、ツールについてわかりやすく解説します。

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ナレッジマネジメントとは

ナレッジマネジメント(knowledge management:KM)とは、個人の知識を企業全体で蓄積・共有し、業務の効率化や企業価値を高める経営手法です。ナレッジマネジメントを導入することで、新たな知識創造やイノベーションの促進、業務効率の向上、競争力強化に貢献します。

ナレッジマネジメントは、1990年代に一橋大学大学院教授の野中郁次郎氏が「知識経営」の観点から、組織の知識創造理論であるSECIモデルを発表したことに始まるとされています。

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ナレッジベースとは

ナレッジベースとは、従業員が業務を通じて獲得した知識を蓄積し、一か所にまとめたデータベースのことです。ナレッジベースはナレッジマネジメントのための重要な資産で、業務の効率化や人材育成、経営戦略を支援するツールとして活用されています。

ナレッジマネジメントが注目される背景

日本企業がナレッジマネジメントに注目する背景には、次のような要因があります。

  • 終身雇用制度の崩壊
  • グローバル化の進展
  • 人材不足の課題
  • テレワークの拡大

終身雇用制度の崩壊

かつての日本企業では、長期間にわたって社員が同じ会社に在籍し、知識が自然に共有されていました。しかし、終身雇用制度の崩壊により転職者が増加し、個人の知識や経験、ノウハウを企業に蓄積・共有することが難しくなりました。

そのため、退職した社員の知識が失われてしまわないよう、企業内の知識を共有し、新しい人材に引き継いでいくことが重要となっている状況があります。

グローバル化の進展

グローバル化の進展により、企業は国内だけでなく海外市場でも競争しなければならなくなっています。同時に、情報技術の発展により、情報の量が爆発的に増加し、情報共有の重要性も高まりました。

こうした環境下で、企業内に蓄積された知識やノウハウを有効活用し、イノベーションを起こすことが重要であるとの認識が広まりました。ナレッジマネジメントは、こうしたニーズに応える経営手法として注目されています。

人材不足の課題

近年、知識や情報を利用して仕事を行う「ナレッジワーカー(知識労働者)」がますます増加しています。また、少子高齢化の進展により、企業は人材不足の問題に直面しており、限られた労働力でより大きな成果を上げることが求められています。

こうした状況下で、組織内の知識を効率的に活用し、生産性の向上と人材育成を効率化することが重要となりました。このように、ナレッジマネジメントは、人的リソースの課題を解決する手法としても注目されています。

テレワークの拡大

近年では働き方改革の進展に伴い、在宅勤務やテレワークが広まりました。しかしテレワークでは、対面でのコミュニケーションが減るため、企業内の知識やノウハウを共有することが難しくなります。

ナレッジマネジメントを導入すれば、テレワークでも必要な知識やノウハウへすぐにアクセスできるようになり、組織内の共通認識を育むことで、一体感を高めることにもつながると期待されています。

ナレッジマネジメントの理論「SECIモデル」

SECI(セキ)モデルとは、経営学者の野中郁次郎氏と竹内弘高氏が論文の中で提示した、継続的な知識創造のためのフレームワークです。知識を「暗黙知」「形式知」に分け、暗黙知を形式知に変換・移転し、新しい知識を創造するプロセスを表しています。

SECIモデルは、4つのプロセスである

  • 共同化(Socialization)
  • 表出化(Externalization)
  • 連結化(Combination)
  • 内面化(Internalization)」

の頭文字から名付けられました。

暗黙知と形式知

「暗黙知」と「形式知」とはそれぞれ次のように定義できます。

暗黙知 個人的に把握はしているものの、言葉や文章で表現しにくいノウハウや経験則
個人が無意識にやっている優れた行動やアプローチなど
形式知 口頭や文章である程度容易に説明できる知識や情報、データなど

暗黙知を形式知にすることは、ノウハウやコツ(暗黙知)をマニュアル化(形式知化)することに例えるとわかりやすいでしょう。

たとえば、熟練の職人の手作業を動画で撮影して手順書を作成したり、営業担当者の顧客対応のノウハウをインタビュー形式でまとめてマニュアル化したりすることは、暗黙知を形式知にする方法の具体例です。

暗黙知から形式知への交換や移転のプロセスを示したのがSECIモデルで、次の4つのフェーズで知識の変換と移転を行い、組織全体で戦略的にマネジメントします。

  • 共同化(Socialization)
  • 表出化(Externalization)
  • 結合化(Combination)
  • 内面化(Internalization)

共同化

共同化は、経験を共有するといった行動で暗黙知を暗黙知として伝えるプロセスです。各人が同じ経験を共有することで、メンタルモデル(精神的暗黙知)や技術的な暗黙知を創り出す段階といえます。

暗黙知は感覚的な理解が必要なものが多いため、実際にやってみて「身体で覚えてもらう」ことで、他の人に認識してもらうわけです。

表出化

暗黙知を明確な概念やコンセプトに表現することで、形式知へと結びつけるプロセスです。共同化によって得られた暗黙知を共有できるように、言葉や図などで形にしていきます。

暗黙知を共有した人がともに考えたり、対話をしたりしながら仮説を立て、モデル化を試みることで、徐々にそれを形式知にしていきます。論理的思考力による概念化が必要です。

結合化

このプロセスでは、表出化によって形式知となったナレッジ同士を結びつけ、新しい知識体系を創り出します。既存の形式知同士を結びつけることで、より高レベルの形式知とするわけです。

IT技術やデータベース、ネットワークなどを用いて知識を体系化・連結化し、より現実的・実践的な知識に高めます。このプロセスまで来ると、それまで各々の個人の中にあった暗黙知が組織全体の知的財産として活用可能になります。

内面化

これまでのプロセスで形式知されたことを実践し、適宜フィードバックを受けることで、それが個人へと内面化され、新しい暗黙知が生まれていきます。

これによって個人と組織全体の知的資産となり、そこからまた新しい形式知へと転化されるサイクルが繰り返され、徐々に組織の知識レベルが向上していきます。

4つの「場(ba)」

SECIモデルの「場(ba)」とは、知識が創造・共有・活用される結節点のことです。具体的には、次の4つの場があり、SECIモデルの4つのプロセスとそれぞれ対応しています。

  • 創発場(共同化)
  • 対話場(表出化)
  • システム場(連結化)
  • 実践場(内面化)

創発場(共同化)

創発場は、共同化のプロセスに必要な場で、従業員同士が同じ体験を共有し、暗黙知である互いの知識やノウハウを伝え合う場です。OJTや営業同行のほか、ランチタイムや飲み会などの気軽なコミュニケーションも含まれます。

対話場(表出化)

対話場は、表出化のプロセスに必要な場で、ディベートやブレインストーミングといった従業員同士のコミュニケーションを通じて、暗黙知である互いの知識やノウハウを言語化・概念化する場です。マニュアル作成、会議、ミーティング、ブレインストーミングなどが該当します。

システム場(連結化)

システム場は、連結化のプロセスに必要な場で、形式知を別のナレッジと組み合わせて新たなアイデアを生み出す場です。ITシステムを活用したナレッジマネジメントツール、グループウェア、Web会議、社内SNSなどが該当します。

実践場(内面化)

実践場は、内面化のプロセスに必要な場で、形式知を体で覚え、再び暗黙知化する場です。実際の業務で知識を活用する場面のほか、研修やシミュレーションも含まれます。

ナレッジマネジメントの目的とメリット

ナレッジマネジメントには、次のような目的とメリットがあります。

  • 業務効率化
  • 人材育成
  • 顧客満足度向上
  • イノベーションの創出

それぞれの目的・メリットについて詳しく説明します。

業務効率化

ナレッジマネジメントにより、データ・知識・経験を社内で共有できるようになり、業務効率化が進みます。

たとえば、顧客とのコミュニケーション履歴を社内でナレッジとして共有しておけば、引継ぎがスムーズになるでしょう。技術開発に関しても担当者のナレッジが共有されていれば、複数の視点から検討できるようになります。

これらの社員個人に眠っている知識や情報を全社的に共有することにより、過去の情報をベースとした効率的な行動が可能となります。

また、個人の知識やノウハウを共有することで業務の属人化も防止可能です。業務担当者の退職による業務の停滞を防げるため、業務の安定継続においてもナレッジマネジメントは重要といえます。

人材育成

社員が個人の経験ベースで仕事をしている場合、その知識・経験を伝えるためには膨大な時間とコストがかかります。

OJTや、情報を抱える社員が直接研修・セミナーを通して後輩を教育しなければならず、またそもそも情報やプロセスが理解しやすい形に洗練されていないことも多々あります。

ナレッジマネジメントを活用し、新人がいつでもアクセスできる形でナレッジを公開することによって、新人教育にかかるコストおよび手間の削減が可能です。研修資料やマニュアル、ナレッジベースなどを整備することで、新入社員研修を効率化し、短期間で戦力化できます。

顧客満足度向上

ナレッジマネジメントで、顧客対応に関する知識やノウハウを共有することで、顧客対応を迅速化し、顧客満足度を向上できます。たとえば、コールセンターにおいては、評価の高い回答や問い合わせ内容に応じた最適な対応例などをオペレーター間で共有可能です。

CRMWeb接客ツールで、顧客に有益な情報を提供することで、顧客との信頼関係を構築し、顧客ロイヤルティを高められます。顧客との接点を通じて得られた情報や知識を分析することで、顧客ニーズを的確に把握し、商品やサービスの改善に役立てるのも可能です。

イノベーションの創出

ナレッジマネジメントで、企業内のさまざまな部門や分野の知識を組み合わせることで、新たなアイデアやイノベーションを生み出すことにつながります。

社内に知識や情報交換が活発な環境や場を作ることで、社員の創造性を刺激し、イノベーションを促進可能です。また、過去の失敗事例を分析することで、失敗から学び、新しいイノベーションに役立てられます。いうまでもなく、イノベーションの創出は、新たな事業展開や収益源につながり、競争力を強化できます。

ナレッジマネジメントの4つの手法

ナレッジマネジメントは主に4つの手法があります。それぞれ詳しく解説していきます。

経営資本型(増価×集約)

経営資本型とは、競合他社や自社の事例を多角的に分析して、経営戦略に活用する手法です。企業内に存在するさまざまな知識やノウハウを体系的に管理し、企業の価値向上に役立てます。

組織の知的財産の中でも、著作権や特許権がある制作物を活用して利益につなげたり、イノベーションの創出に役立てたりが可能です。ツールとしては、ナレッジマネジメントツールやナレッジベースなどが使われます。

顧客知識共有型(増価×連携)

顧客第一主義で、顧客との知識の共有や提供を持続して行う手法です。

顧客からの意見やクレーム内容をデータベース化し、迅速な対応や適切な判断を可能にします。コールセンター業務で非常に有用です。ツールとしては、CRMやアンケートツールなどが使われます。

ベストプラクティス共有型(改善×集約)

優秀な社員の成功体験やノウハウを形式知化して共有し、組織全体のレベルアップや人材育成を図る手法です。

営業成績がよい社員の契約が取れるパターンを形式知化し、他のメンバーと共有すれば部内の営業成績の向上が期待できます。ツールとしては、ナレッジベースやポータルサイトなどが使われます。

専門知識型(改善×連携)

専門知識がある社員をネットワークでつなぎ、組織内の知識をデータベース化していく手法です。知りたい情報を自分で探せるようになります。

ヘルプデスクやシステム部門、人事部門といった問い合わせが多い部署で、問い合わせ対応業務の軽減に役立ちます。ツールとしては、社内SNSやフォーラム、メンター制度などが使用可能です。

ナレッジマネジメントの導入手順

ナレッジマネジメントの導入は、正しい手順を踏まないと効果的な情報共有ができません。ナレッジマネジメントの導入の5ステップについて紹介します。

1. 目的を明確にする

システムを導入するまえに、ナレッジマネジメントを活用する目的を明確にします。目的に応じて集約すべき情報や従業員ごとの閲覧できる情報の範囲、システムのタイプなどが異なってくるので、まず前提条件として目的を整理すべきです。

漠然と情報を共有したいというだけでは、さまざまな情報が入り乱れる混沌としたデータベースとなるので、有効活用は難しいと考えられます。

2. 集約したい情報を書き出す

目的に応じて集約したい情報を書き出します。どのような情報をだれが持っているのか、どのようなフォーマットで共有されると理解しやすいのか、情報の中身について具体的にイメージしながらこの作業を実施してください。

集約すべき情報と集約しなくてもよい情報の境目について明確にしたうえで、集約したい情報が客観的に理解できるようにしたほうがよいでしょう。

3. ツールやシステムを導入する

目的と集約したい情報をもとに、ナレッジを共有・管理するツールやシステムを導入します。顧客とのコミュニケーション履歴はSFA/CRM、過去の販促物の事例をオンラインストレージで共有といったように、情報によっても活用すべきシステムは異なります。

システム導入に際しては、現場のニーズをよく理解し、使いやすさを重視することがポイントです。導入後は社員に対するトレーニングを実施し、ツールの利用を習慣化させる取り組みも不可欠です。

また、表記方法や更新ルールといったナレッジを共有する際のルールについても、システム導入段階で決定したほうがよいでしょう。

4. 従業員へ蓄積を促す

システムを導入・運用する準備が整ったら、従業員にナレッジシステムに知識・ノウハウを蓄積するように促します。従業員への促進についてはお願いするだけでは不十分なケースもあります。

ナレッジの蓄積が進まない場合は、必要に応じてナレッジシステムへの情報蓄積に対するインセンティブや、人事評価への反映を検討したほうがよいでしょう。

5. 集まった情報を分類する

情報は蓄積された段階では雑然としていて活用できない場合もあります。よって、集まった情報は分類、適宜加工して従業員が正しい判断ができるようにしなければなりません。

ナレッジシステムに、間違いや相応しくない情報が混じっていると、システムを通じてそのような情報が伝播する可能性もあるので、システム内の情報の鮮度・正確性には注意しましょう。

ナレッジマネジメントのためのツール

一般的によく使用されているナレッジマネジメントのためのツールとしては、次のようなツールが挙げられます。

それぞれどのような機能を持ったツールなのかを詳しく解説します。

社内Wiki

膨大な専門用語があったり、細かく社内ルールが定められていたりする場合は、社内Wikiツールを活用したナレッジマネジメントを検討したほうがよいでしょう。

社内Wikiサービスを活用する場合は更新ルールについて注意すべきです。社内の公式ではない専門用語やルールをWikiに加えられると、業務に支障をきたす可能性もあるからです。編集権限をどの社員に付与するか、新規の投稿をどのようにチェックするかについても考えておくことをおすすめします。

代表的なツールとしては、「NotePM(ノートピーエム)」や「Qiita Team」などが挙げられます。

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グループウェア

グループウェアは、業務改善を目的に、情報を共有したり、社内コミュニケーションを行ったりできるツールの総称です。社員の予定表を共有できるものや、日報を共有できるもの、文書を共有できるものなど、さまざまな機能を有しているものが一般的です。代表的なツールには、「サイボウズ Office」や「Microsoft 365」などが挙げられます。

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社内SNSは、社内や組織内に利用者を限定したコミュニケーションツールです。社内SNSのメリットは、メールに比べて気軽かつ迅速にやり取りが行え、複数名でもコミュニケーションしやすいことです。また、目的ごとにグループを作成できるので、部署を超えての情報共有やコミュニケーションを促進する目的で使われることもあります。代表的なツールには、「LINE WORKS」や「Slack」などが挙げられます。

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SFA・CRM

SFAは営業管理や支援を行うための、CRMは顧客情報を管理するためのシステムです。グループウェアは社内情報を共有することに長けているのに対し、SFAやCRMは営業および顧客の情報管理や共有に長けているシステムといえます。代表的なツールには、「Salesforce Sales Cloud」や「Zoho CRM」などが挙げられます。

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オンラインストレージ

オンラインストレージは、インターネット上で自由にデータを保存・共有できるシステムです。ある程度の容量まで無料で利用できるサービスが多いため、スタートアップ企業によく利用されています。文書ごとに割り振られたURLを連絡すれば、オンラインで他者にデータを共有できる点が大きな魅力です。代表的なツールには、「Google ドライブ」や「Microsoft OneDrive」などが挙げられます。

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Excelの活用

Microsoft Excelは、多くの企業で利用されています。慣れている従業員が多く、操作方法もわかりやすいため、ナレッジマネジメントにExcelを活用したい方も多いかもしれません。しかし、Excelにナレッジを入力しても、そのまま分析や共有するのは難しいでしょう。

Excelは基本的に表計算ソフトウェアであり、データを構造化して管理することや、検索や高度な分析にも適していません。ローカル環境では複数のユーザーが同時に編集することは難しく、リアルタイムでの共同作業やコメントのやり取りも困難です。

ナレッジマネジメントには、Excel以外のより適したツールやシステムをおすすめします。

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ナレッジマネジメントツール

ナレッジマネジメントは企業によって向いている手法が異なります。そのため、自社で重要視されている知識を共有するために、今まで紹介したようなツールを複数組み合わせていく方法がおすすめです。

また、専用のナレッジマネジメントツールを使用する方法も検討する価値があります。代表的なナレッジマネジメントツールには、「NotePM(ノートピーエム)」や「Confluence」などが挙げられます。

ナレッジマネジメントツールを利用する場合もよく比較検討のうえ、自社に合ったものを選択することがポイントです。

ナレッジマネジメントツールの機能や特徴については、次の記事で詳しく比較紹介しています。

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生成AI

ChatGPTやMicrosoft Copilotといった生成AIは、ナレッジマネジメントに活用できる強力なツールです。ChatGPTで社内のナレッジベースやマニュアル、FAQを検索できるように設定すると、チャットボットで効率的なナレッジマネジメントが可能になります。

ただし、ChatGPTはプロンプト(情報を生成するための質問や指示)によっては、ハルシネーションと呼ばれるでたらめな回答を生成する可能性もあるため、運用にあたっては注意が必要です。

ChatGPTを社内ナレッジから参照するようにするには、ベンダーの提供するツールを導入する必要があり、コストがかかります。最近は国内ベンダーも、GPTに匹敵するような高精度の日本語の言語モデルを開発しているので、新しいナレッジマネジメントツールが登場することも期待できます。

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ナレッジマネジメントの導入事例

ナレッジマネジメントの導入に成功した企業の事例をいくつか紹介しましょう。

マッキンゼー・アンド・カンパニー

コンサルティング会社のマッキンゼーでは、「Know」と呼ばれる独自のナレッジマネジメントシステムを運用しています。Knowシステムには、クライアントの業界の市場規模やリーディングカンパニー、競合企業の情報、バリューチェーンの構造といった情報が蓄積されています。Knowシステムを活用することで、世界中のコンサルタントは過去のプロジェクト事例を参照し、効率的に業務を進められるとのことです。

ナレッジマネジメントシステムに統一されたフォーマットを設け、従業員がナレッジを共有しやすい環境の整備をしています。また、ナレッジ共有に対するインセンティブ制度を導入し、積極的なナレッジ共有を促しているのも同社の特徴です。

花王株式会社

花王では、顧客からの問い合わせや意見を製品開発に活かすため、ナレッジマネジメントシステムを導入しました。サポートデスクに寄せられた顧客の声をデータベース化し、商品開発部門がいつでもアクセスできるようにすることで、顧客ニーズに即した製品開発を実現しています。

また花王は、社内向けITサービスデスクにおいてもナレッジマネジメントを活用しています。これにより在宅勤務時も問い合わせ数が抑制され、従業員の自己解決力が向上し、サポート品質の向上とコア業務へのリソース集中が可能になったとのことです。

NTT東日本法人営業部

NTT東日本法人営業部では、オフラインとオンラインの両面からナレッジ共有を推進しました。

オフラインでの取り組みでは、オフィス内にフリーアドレスやリフレッシュゾーンを設け、従業員同士のコミュニケーションを活性化。暗黙知から形式知へのナレッジ共有が促進され、普段交流のない部署間のコミュニケーションも活性化したとのことです。

オンラインでの取り組みでは、営業本部に所属する全員が個人のホームページを持ち、業務状況や進捗を共有することで、情報共有の円滑化を図りました。これにより、個人の培ったナレッジや経験を他の社員と共有できるようになったそうです。

富士フイルムビジネスイノベーション株式会社

富士フイルムビジネスイノベーションでは、製品開発の各段階での情報共有不足による設計変更の課題を解決するため、「全員設計」を掲げた独自のナレッジマネジメントシステムを導入しました。すべての設計者や技術者の知識を蓄積し、開発初期から活用することで、最終段階での設計変更を減少させ、効率的な製品開発を実現しています。

また同社は、営業部門に「何でも相談センター」を設置し、営業経験者が公募で相談員となり、月約2,000件の相談に対応しています。その結果、相談センターには顧客知識をはじめとする多くのナレッジが蓄積され、組織全体の生産性向上も実現したとのことです。

auコマース&ライフ株式会社

auコマース&ライフでは、社内の問い合わせ業務やコールセンター業務の効率化を目的に、ナレッジマネジメントとFAQシステムを同時に導入しました。導入の背景として、複数の総合ショッピングサイトを運営する同社では、3つの業務ツールを使い分けており、問い合わせ対応に膨大な時間を要していたことがあったそうです。

ナレッジマネジメントとFAQシステムの導入により、問い合わせ対応後の処理時間を大幅に削減でき、顧客対応中にマニュアルを確認できるようになったことで、顧客対応の質が向上したとのことです。

ナレッジマネジメント導入のよくある失敗例

ナレッジマネジメントの導入は、組織内の情報共有や効率化に寄与するものの、適切な計画や運用が欠けると、結果的に失敗を招く場合があります。ナレッジマネジメント導入のよくある失敗例をわかりやすく解説します。

目標設定の不明確さ

ナレッジマネジメントの目的や意図が社内で共有されていないケースは少なくありません。トップからの明確なメッセージがないまま、「とりあえずはじめてみる」という姿勢では、具体的な成果指標の設定や効果測定が難しく、社員の理解や協力も得られずに形骸化してしまいます。

社員の理解不足

ナレッジマネジメントの意義や目的が社員に十分に理解されていない場合、導入効果が限定的になることがあります。従業員がナレッジマネジメントを自分の業務と結びつけられない場合、「情報を共有するメリットがない」「通常業務に追われて入力する時間がない」といった反応が起こりがちです。

このような状況では、ナレッジマネジメントが単なる負担として受け取られ、結果として全体的な導入の成功率が低下します。ナレッジマネジメントの実現には、まず社員にその必要性を理解してもらい、積極的に協力してもらえる体制を作る必要があります。

運用ルールの不備

ナレッジの分類方法や品質基準が曖昧なままナレッジマネジメントシステムの運用を開始し、次第に共有された情報の質が低下するケースが多く見られます。たとえば、ナレッジの形式が統一されておらず、必要な情報が見つけられない、だれも参照できない無駄なデータが蓄積されるといった問題です。

また、蓄積したナレッジを更新せずに放置してしまうと、役に立たない古い情報が蓄積され、かえって業務の妨げになる可能性もあります。

組織文化との不整合

多くの組織では、個人それぞれの知識やノウハウを共有することへの抵抗感が根強く存在します。とくに「知識は個人の価値」という考えや競争意識が強い職場では、ナレッジ共有の促進が難航するケースが多いです。

このような場合、ナレッジ共有を奨励する評価やインセンティブが不十分だと、ナレッジマネジメントは形骸化し、期待された成果が得られません。

効果測定と改善の欠如

ナレッジマネジメントの導入後、効果測定を行わず、導入前と後で何が変化したのかを評価しないケースもあります。とくに、現場からのフィードバックを適切に収集・分析し、システムや運用ルールに活かすプロセスが確立されていないことが多いです。

このような状況では、問題点や改善の余地が見過ごされ、長期的な運用成果が妨げられます。また、システム導入初期の不具合や課題が解決されないまま放置されることで、従業員の信頼を失う可能性もあるでしょう。

ナレッジマネジメントで競争力を強化しよう

ナレッジマネジメントの意味や目的、導入の手順と導入事例、役立つツールについて解説しました。ナレッジマネジメントには、業務効率化や人材育成、顧客満足度向上、イノベーション創出といった多くのメリットがあります。ナレッジマネジメントの理解を深めて、競争力を強化しましょう。

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