コールセンター×AI | 事例や活用場面・おすすめのシステム
目次を開く
自動車の自動運転やコンピューターが囲碁や将棋の一流棋士を下した話題など、人工知能(AI)が連日ニュースを賑わせています。AIの活用は研究段階を抜けて、いよいよ本格的なビジネスへの応用段階へと踏み出しています。
AIを活用したビジネスの市場規模は、2015年度には国内市場規模1,500億円でした。しかし、2025年度には1兆9357億円に拡大すると予測されています。これまで人間が行っていた業務をコンピューターが代行するAIの技術は、コールセンターにおいてもおおいに役立つと考えられ、導入する企業がどんどん増えてきています。
コールセンターが抱える課題
現状、コールセンターが抱える課題として次のようなものがあります。
- オペレーターの人手不足
- オペレーターの育成コスト・工数の負担
オペレーターの人手不足
コールセンターで働く非正規社員やパートの年間離職率は約4割とかなり高く、人手不足の状態が発生しています。
離職率が高い原因としては、「クレームでストレスがたまる」「数社分の対応を同時にしなければいけない」など、心身ともに大きな負担となることが考えられます。
オペレーターの育成コスト・工数の負担
コールセンターの仕事は覚えることが多く、一般的にオペレーターの研修には3~5か月程度の期間が必要だと言われています。
しかし、ほとんどの企業が人手不足の問題から、オペレーターの研修に2、3週間程度しか時間をかけられていません。これでは、電話の対応や対応後のレポートに時間がかかり、さらに顧客満足度も下がってしまいます。
以上のような課題から、顧客の不満が増えてしまいます。すると、「人手不足」→「オペレーター対応の質が低下」→「クレームの増加」→「オペレータの離職率上昇」→「人手不足」・・・を繰り返す状態となるでしょう。
コールセンターでAIが活用される場面
コールセンターでAIが活用される場面は次のとおりです。
- オペレーター電話対応前
- オペレーター通電待ち
- オペレーター電話対応中
- オペレーター電話対応後の処理
それぞれの場面で、どのようにAIが活用されているか説明します。
オペレーター電話対応前
オペレーター電話対応前のチャット対応でAIが活用されています。具体期には次のような使われ方です。
自動チャット
よく問い合わせがある内容で個別対応が必要ないものは、電話ではなくLINEをはじめとしたチャットで自動対応します。ユーザー側には、待たずに回答を得られるメリットがあります。
半自動チャット
自動対応で解決できない場合は、オペレーターがチャットで手動対応します。時間が拘束される電話に比べ、同じ時間で6倍の事案に対応可能です。
オペレーター通電待ち
オペレーター通電待ち時に、次のような対応でAIが使用されています。
自動音声対応
自動音声対応では通電待ちの時間に顧客と会話しながら、問い合わせ内容を簡易的に聞き取ります。この段階で顧客が何を問い合わせたいのか情報収集を行います。
ヒアリング内容のテキスト化
ヒアリングした内容を音声認識システムで自動的にテキスト化します。そして用途に合わせた要約文を生成したり、FAQナレッジや、VOC分析(VOC: Voice of Customer・顧客の声)に連携したりすることで、応対品質・顧客満足度向上に反映させています。
オペレーター電話対応中
自動音声対応で聞き取りした内容は音声認識エンジンで文章に変換され、オペレーターに電話をつなぐ直前にパソコンの画面に表示されます。
オペレーターが電話で対応するときにはすでに必要な情報がそろっているため、円滑な対応ができるのです。
オペレーター電話対応後の処理
AIがもっとも得意とするのは、非構造データのパターン分類の処理です。コールセンターに蓄積されているVOCデータはまさに格好の分析対象です。
より高度なトレンド分析や、顧客の行動予測などマーケティング分野への応用はすでに一部の先進企業が取り組んでいます。
コールセンターにAIを導入するメリット
コールセンターにAIを導入するメリットは次のとおりです。
- 自動対応で人数・工数の削減
- アシスタント機能でスムーズに対応
- 顧客満足度の向上
自動対応で人数・工数の削減
「ご注文の方は1を押してください」といった電話対応を受けたことがありませんか。自動応対による案内、IVR(自動音声応答装置、Interactive Voice Response)の自動メッセージは今では一般的になりました。
また、最初の段階で「機器が動かない」といったエンドユーザーの発言に反応して、AIが担当を振り分けるシステムも登場しています。
電話に限らず、ホームページから寄せられるチャットでの問い合わせに対して、テキストによる回答を無人で返すシステムもあります。テキストでの回答で解決できない場合には、オペレーターにつなぐことで平均処理時間を削減可能です。
顧客からの問い合わせの目的がよくある内容や限定的なものだった場合は、この段階で対応が終了することもあります。
アシスタント機能でスムーズに対応
顧客対応を行うオペレーターに対し、AIが主導してオペレーター画面上にFAQやマニュアル、予測される回答などを提示します。
AIが回答例を提示して対話を主導することにより、顧客の疑問や不安を解消するまで対話を繰り返せるため、新人オペレーターであってもベテランに近い対応が可能です。そのため、教育にかける時間を短縮できるばかりか、新人オペレーターは業務をこなしながらスキルを磨けます。
これにより、コールセンター全体としても電話の時間や対応の質を均一化でき、サービスの向上が可能となります。
顧客満足度の向上
以上のような、AIによる自動対応で電話対応人数・工数の削減、オペレーターのアシスタント機能でスムーズな対応が可能となることで、コールセンター自体のサービスの質が向上していきます。
サービスの質が向上することにより、コールセンターへ問い合わせをしてきた顧客の満足度も向上が見込まれます。
コールセンターでAIを活用する際の注意点
コールセンターでAIサービスを活用する際に注意しておきたい点として、次の2つが挙げられます。
- 音声認識の精度を高める必要がある
- 判断ミスをする可能性がある
音声認識の精度を高める必要がある
音声認識による書き起こしを活用する場合には、認識精度を高めるための時間が必要です。
AIは導入してすぐに正確な認識ができるのではなく、あらかじめデータを登録し学習させる必要があります。
また、AIが搭載された音声認識システムは、使えば使うほど精度が向上する仕組みで、処理するデータ量が増えるごとにテキスト化の精度が向上します。そのため、高精度を得るには時間がかかる点に注意が必要です。
判断ミスをする可能性がある
AIは、どんなに精度が高くても判断を間違える可能性があります。トラブル時の責任の所在についても注意が必要です。
とくにディープラーニング技術を利用したケースに危惧されるのは、「判断の根拠」を示すことが不可能に近いことです。
AIでの処理がコールセンター内でのFAQの検索くらいであれば、最終的に判断するのはオペレーターなので大きな問題にはなりにくいでしょう。しかし、自動対応でミスが発生した場合の対処には、とくに注意が必要です。
コールセンターにAIを導入するポイント
コールセンターにAIを導入する際は、次のポイントに気をつけましょう。
目的の明確化
AIを使って何を実現したいのかを社内で徹底的に議論して明確にすることや、コストに見合う効果を出せるかしっかり試算することが、AIを導入するためには重要です。また、AIとオペレーターとの業務のすみ分けを導入前から考えておくことも大切です。
運用体制の整備
AIの技術は進歩しており、現場への導入が可能なところまで来ていますが、まだまだAIは万能ではありません。人によるチューンアップが導入前後に必要であり、機械学習には限界があることを理解しておく必要があります。
コールセンターのAI導入事例:レオパレス21
レオパレス21は、不動産開発事業と賃貸事業の2つをコア事業とする不動産会社です。同社は、全国5拠点でコールセンターを運営しており、運営するアパートや付帯サービスに関する入居者からの問い合わせや、賃貸物件に関する問い合わせに対応しています。
同社は、コールセンターのさらなる応対品質の向上とオペレーター支援を目的として、音声認識ソリューションを導入しました。これにより、オペレーターの業務が効率化され、年間で約2,633時間の作業時間削減と約460万円のコスト削減が見込まれ、通話の見える化によって応対品質の向上・均一化が可能になる効果も期待されます。
その他、チャットボットをコールセンターに導入した事例については次の記事をご覧ください。
コールセンターに役立つチャットボット・チャットシステム
コールセンターにAI搭載型のチャットボットやチャットシステムを導入することで、業務の効率化を図れます。おすすめのサービスは次の記事で紹介しているので、サービス導入を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
コールセンターにAIを導入して業務改善!
コールセンターは、企業にとって顧客からの問い合わせやクレームを受け付ける重要な機能のひとつです。しかし、コールセンターでは、仕事に対するストレスから離職率が高く、人手不足が問題となりがちです。
人手不足はサービスの質の低下をもたらし、顧客満足度や従業員満足度を下げ、さらに人手不足になる負のスパイラルにつながりかねません。
このような状況を打開するための手段の一つがAIです。
AIを活用することにより、コールセンターで働くオペレーターの業務量を減らしたり、サービス品質を改善したりする効果が期待できます。将来的には、完全にAIに置き換わってしまう可能性もあると言われています。
コールセンターの運営や、顧客からの問い合わせへの対応でお悩みであれば、AIの活用が大きな解決策となりうる状況が来ているのです。
インバウンドコールセンターにツールを導入
顧客満足度や売上に非常に重要であるインバウンドコールセンターは効率的に運用する必要があります。
インバウンドコールセンターとは、問い合わせやクレーム対応など、かかってくる電話に対応するコールセンターです。インバウンドコールセンターを改善させることで、業務の効率化や売上アップも期待できます。
次の比較表で、導入を検討してみませんか?
注目のインバウンドコールセンター、サービス資料まとめ
インバウンドコールセンターの各サービス資料を厳選。無料でダウンロード可能です。電話注文、修理依頼、クレーム対応などさまざまな目的で導入されるインバウンドコールセンターの比較にお役立てください。サービス一覧はこちら
関連記事
BOXILとは
BOXIL(ボクシル)は企業のDXを支援する法人向けプラットフォームです。SaaS比較サイト「BOXIL SaaS」、ビジネスメディア「BOXIL Magazine」、YouTubeチャンネル「BOXIL CHANNEL」を通じて、ビジネスに役立つ情報を発信しています。
BOXIL会員(無料)になると次の特典が受け取れます。
- BOXIL Magazineの会員限定記事が読み放題!
- 「SaaS業界レポート」や「選び方ガイド」がダウンロードできる!
- 約800種類のビジネステンプレートが自由に使える!
BOXIL SaaSでは、SaaSやクラウドサービスの口コミを募集しています。あなたの体験が、サービス品質向上や、これから導入検討する企業の参考情報として役立ちます。
BOXIL SaaSへ掲載しませんか?
- リード獲得に強い法人向けSaaS比較・検索サイトNo.1※
- リードの従量課金で、安定的に新規顧客との接点を提供
- 累計1,200社以上の掲載実績があり、初めての比較サイト掲載でも安心
※ 日本マーケティングリサーチ機構調べ、調査概要:2021年5月期 ブランドのWEB比較印象調査