人事評価制度の事例12選!成功事例から学ぶ評価制度の導入ポイント
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- 人事評価制度とは
- 人事評価制度作成の課題
- 手間や時間がかかる
- 評価者にはスキルが必要
- 人事評価制度の導入手順(作り方)
- 人事評価制度の事例12選
- 株式会社メルカリ
- アドビシステムズ株式会社
- 株式会社ディー・エヌ・エー
- 株式会社colorkrew(旧称:株式会社ISAO)
- 株式会社ココナラ
- 株式会社データX(旧称:株式会社フロムスクラッチ)
- 株式会社kubell
- LINEヤフー株式会社(旧称:ヤフー株式会社)
- カルビー株式会社
- ダイキン工業株式会社
- GMOインターネットグループ株式会社
- 栃木県宇都宮市
- 宮城県松山町
- 人事評価制度に活用される手法
- MBO(目標管理制度)
- OKR
- 360度評価
- コンピテンシー評価
- バリュー評価
- ピアボーナス®
- ノーレイティング
- リアルタイムフィードバック
- 評価のオープン化
- 人事評価制度作成の目的・メリット
- モチベーションが向上する
- 人材スキルの管理ができる
- コミュニケーションを促進できる
- 客観的な評価を決める基準になる
- 人材の能力育成に役立てられる
- 人事評価制度の注意点
- 多様な評価軸でハロー効果を防ぐ
- 客観的に人事評価を行う
- 企業に合った評価制度を導入しよう
- BOXILとは
人事評価制度とは
人事評価制度とは、従業員の成績や組織・部署に対する貢献度など、企業の業績を上げるために必要な行動を一定の基準で評価する制度です。
一定の基準にもとづいて従業員を評価し、それをもとに然るべき人材育成をすることで企業全体の生産性を向上させられます。全体目標の達成や業績アップのためには、企業に合った適切な人事評価制度が必要です。
自社にマッチした人事評価制度を取り入れることにより、従業員個人の労働生産性の向上はもちろん、一人ひとりの強みや適性を把握し、最適な人材配置と待遇を決められます。
人事評価制度作成の課題
人事評価制度には次のような課題があります。
- 手間や時間がかかる
- 評価者にはスキルが必要
手間や時間がかかる
人事評価制度は、作成してから運用するまでかなりの時間と労力がかかります。経営陣や人事担当者は、制度の設計から導入運用に至るまで、一連の業務に密に関わらなければなりません。また社員は目標設定や上司からの(部下への)フィードバックなどの時間を設ける必要があります。
そのため人材評価システムを導入するといった、人的な負担を軽減するための仕組みが必要です。ただし、人事評価システムを導入するには、費用がかかります。費用対効果を考えながら人事評価制度の導入を検討しましょう。
評価者にはスキルが必要
人事評価する評価者のスキルが低い場合は、社員の納得感を得られないかもしれません。納得できる評価制度でないと社員に不満がたまり、モチベーションの低下につながる恐れがあります。
評価者には適切な目標を設定して社員を公平に評価し、フィードバックでうまく社員を指導できる能力が求められるのも課題の1つです。
人事評価制度の導入手順(作り方)
人事評価制度の導入手順は、おおむね次のような流れで行います。
- 人事評価制度の目的を設定する
- 評価の基準を策定する
- 評価の項目を作成する
- 人事評価制度を構築する
- 人事評価制度を運用しフィードバック・見直しを行う
人事評価制度の導入には人事担当者だけでなく、経営陣の協力も必要です。人事評価制度を導入する順序を間違えると社員を混乱させる恐れや、モチベーションが下がり業務効率が低下するリスクが考えられます。各段階でマニュアルや資料を作成して全体に周知し、社員が納得したうえで導入を進めるといいでしょう。
また人事評価制度は運用を開始すれば終了ではありません。社員から定期的に制度に対するフィードバックをもらい、見直しを行ってください。
人事評価制度の事例12選
人事評価制度の成功事例として、さまざまな手法やユニークな制度を採用して実績をあげている、民間企業や地方自治体の制度例を12選紹介します。
株式会社メルカリ
- 人事評価制度を「OKR」と「バリュー評価」の2軸で実施
- OKRでは結果だけでなく「達成までのプロセス」も重視して評価
- 定性的で評価しにくいバリュー評価は「ピアボーナス®」によって見える化
メルカリでは、「OKRを用いた目標達成の度合い」と「バリュー(価値観)に沿った行動の有無」の2つのポイントによって四半期ごとの評価を行っています。
OKRに関しては、当時アメリカで取り入れられはじめた頃から注目していたようで、日本で他社に先駆けて導入した経緯があります。目標達成状況だけでなく、達成までのプロセスを重視しており、そこで見られた個人の働きやパフォーマンスを評価の対象としているようです。
一方、後者の「バリューに沿った行動」は同社が掲げる3つの行動指針の実践について評価するものです。OKRに比べて定性的で評価が難しい点があったため、社員同士で成果給を送る「ピアボーナス®」のシステムを導入。社員のバリューにもとづいた具体的な行動をタイムライン化して四半期ごとに評価するとともに、多くの成果給をもらった社員を表彰しています。
出典:SELECK「同僚から月60回「成果給」を受け取った人も!メルカリの「ピアボーナス®」運用の裏側」
※「ピアボーナス®」はUnipos株式会社の商標です。商標権者から使用許諾を得ています。
アドビシステムズ株式会社
- 人事評価制度として「チェックイン」を導入
- 上司と社員が継続的な面談を行うことで良質な関係を構築
- 社員のランク付けをやめる「ノーレイティング」
アドビシステムズでは、もともと各部門の管理者によって部下をランク付けする人事評価を行っており、社員のパフォーマンスや仕事に対する満足度が下がり続ける結果となりました。
そこで同社では、2012年から従来型のランキング制度を廃止し、新しい人事評価制度として「チェックイン」を導入。管理者が継続的な面談を通じて部下との良質な関係を構築することにより、一人ひとりの社員の成長をバックアップする制度に切り替えました。
チェックインによる面談は、それぞれの管理者がみずからの管轄する部署の環境に合わせて自由にフォーマットを考えられ、給与の裁量も与えられています。
面談によって管理者がさまざまな観点から部下の評価を可能にしたことで、社員の評価に対する納得感が得られるようになり、仕事に対するモチベーションも向上したといいます。いわゆる「ノーレイティング」の人事評価制度の成功事例といえるでしょう。
出典:SELECK「ランク付けをやめ、納得感のある人事制度を実現。アドビ「チェックイン」運用の実態」
株式会社ディー・エヌ・エー
- マネージャーへ「360度評価」によるフィードバックを実施
- あえて実名でフィードバックし信頼関係を構築
- 人事の承認なしで異動できる「シェイクハンズ制度」も導入
ディー・エヌ・エーでは、約130名からなるマネージャー向けに「360度評価」によるフィードバックを行っています。一般的には無記名で行われる評価法ですが、同社の場合はマネージャーと社員との信頼関係を構築するため、あえて実名で評価を行っています。
各マネージャーに対する評価がメインではなく、マネージャー自身の課題・改善点を明らかにして、社員との認識を共有することを目的にしているようです。
加えて、各社員に対しては本人と部署との合意があれば、人事の承認なしで異動ができる「シェイクハンズ制度」を導入。みずからの強みを活かせる部署に異動しやすくすることで、社員に新しいチャレンジを促し、自分の情熱に合った役割についてもらうことを推奨しています。
出典:SELECK「上司・人事の承認ナシで異動OK!3か月で20人超が利用した新人事制度・シェイクハンズ」
株式会社colorkrew(旧称:株式会社ISAO)
- 「等級制度」を導入し、フラットな組織構造を実現
- 属するグレードはみずから選んだ評価者による「360度評価」で決定し、給料と連動
- 個人の能力は半期ごとの「アワード」でも評価し、ボーナスに反映
colorkrew(旧称:ISAO)では企業内に組織の成長を阻害する「権威」を作らないため、あえてマネージャーを不在にする非常にフラットな組織です。また形態を維持するために、12のグレードから構成される等級制度を導入しています。
各社員の給与はこのグレードと連動しており、どのグレードに属するかは本人とコーチにあたる社員とが話し合って指名した、複数社員の評価によって決まる仕組みです。昇降級のタイミングはリアルタイムで、いつでも必要に応じて昇給を申し出ていいとされています。
さらに等級で能力を評価することに加え、個々の成果については半期ごとにアワードとして評価しボーナスに反映されます。短期的な成果と能力の向上を、それぞれ評価するシステムです。
評価者を社員みずから選べることに加え、コーチの選定自体も企業が推薦する40人ほどの候補のなかから指名できるため、評価に対する納得感が生まれやすいのが特徴です。
出典:SELECK「評価者を「自分で」選ぶ。通年リアルタイムで昇降級する「権威を作らない」等級制度」
株式会社ココナラ
- 人事評価を「5つの軸」と「11段階の等級制度」で実施
- グレードと給与を連動させ、社員のモチベーション向上をサポート
- グレードと実力にギャップがある社員をサポート
スキルのフリーマーケットサイトを運営しているココナラでは、5つの軸と11段階に分類された等級制度を採用しています。これにより人材評価の基準が曖昧なまま、一方的な意見のみで評価が決定されることを防いでいます。
具体的には「裁量」「コミット範囲」「育成責任」「業務レベル」「ノウハウレベル」の、5つの軸をG1からG7までの11のグレードで評価し、給与が連動する仕組みです。
年2回の人材開発委員会で等級の見直しが行われ、グレードと実際のパフォーマンスにギャップがある社員にはグレードを上げる努力を促すとともに、必要なサポートをする体制をとっています。
管理者の印象に偏りがちな評価を可能な限り客観的にすることで、全社員が納得できる人事評価ができるような体制にしています。
出典:SELECK「評価に「曖昧さ」は不要。5つの軸で11段階のグレードを定める、ココナラの等級制度」
株式会社データX(旧称:株式会社フロムスクラッチ)
- 全社員が採用活動に関わる「リクルーティング資格制度」を導入
- 採用活動への貢献度を4クラスで評価し、クラスごとに毎月手当額を決定
- リファラル採用の比率が向上
MAツール「b→dash」を提供するデータX(旧称:フロムスクラッチ)では、全社員が採用活動に関わるため、リクルーティング資格制度「CREW(クルー)」を導入しています。
組織にどのような人材を集めるかが競争優位性になると考えている同社では、社員一人ひとりの採用活動への貢献度を「エントリー」「バチェラー」「マスター」「ドクター」の4クラスで評価。クラスによって毎月手当額が決定されるシステムです。
これによってリファラル採用の比率が大きく高まり、誰が面接担当になっても候補者の志望度が向上し、面談の辞退率も半減したそうです。そして社員が採用に携わることで、自社への理解が深まり、楽しみながら未来の企業を作っていける現場環境ができたといいます。
※出典:パーソルキャリア「d’s JOURNAL |【10年後の会社をつくる】採用文化を浸透させるフロムスクラッチのCREW制度」
株式会社kubell
- 社員のチャレンジを評価する「OKR」を導入
- OKRでは「SMARTの法則」を採用することで目標の解像度を高めた
- 一人ひとりの行動や目標が明瞭になり、会社全体の士気が高まった
ChatWorkでは、社員本人が「ワクワクしているか」「どれだけ挑戦しているか」を軸において、OKRを導入しました。またOKRが曖昧にならないよう、「SMARTの法則」から社員のチャレンジを評価しています。
SMARTの法則とは、次の5つの頭文字をとった目標を決定する方法のひとつです。
- Specific(具体的な)
- Measurable(測定可能な)
- Assignable(割当が可能な)
- Realistic(現実的な)
- Time-related(期限のある)
一般的にOKRでは「達成率」を振り返りますが、社員が保守的な目標設定をしてしまう課題があったといいます。そこで、人事評価と達成率を連動させることをやめたそうです。
さらに評価・見直しを四半期に1回に設定することで、本人が定めた目標に対するコミュニケーションの回数を増やしました。結果、社員一人ひとりが「何をやっていて、何を目指しているか」が見えるようになり、会社全体の士気が高まったとのことです。
出典1:パーソル プロセル&テクノロジー「HITO Link |【MEETUP#01 俺のOKR】Chatwork西尾氏「『俺のOKR』自然体で成果を出そう」」
出典2:パーソル プロセル&テクノロジー「HITO Link |【OKR最前線vol.2】ChatWork流 「完璧を求めない」「カッコつけない 」理想の会社に近づけるためのOKR運用」
LINEヤフー株式会社(旧称:ヤフー株式会社)
- 「人」にフォーカスした施策へと方針を転換
- 個を尊重しすぎたため社員が意識統一を図れるようにOKRを導入
- 社内にいい緊張感が広がり社員の意識もいい方向へと変化
ポータルサイト「Yahoo! JAPAN」で知られるLINEヤフー(旧称:ヤフー)では、OKRを導入しています。OKR導入まではいかに事業を成長させるかに重点を置いていましたが、社員が増えたこともあり、人材の才能や情熱といった「人」にフォーカスした施策へと方針を転換しました。
しかし個を尊重しすぎたためか、事業戦略とは関係なく社員個人が挑戦することすら許される雰囲気と変化します。そこで企業としての求心力を高めるべく、会社として明確なビジョンや戦略を示し、これをもとに社員が意識統率を図れるように制度を変更しました。
具体的には全社で目標を掲げ、そこから部署単位・個人単位それぞれに目標へ貢献するための成果目標を掲げるようにしました。合わせて、評価制度もプロセスと成果をバラバラに評価していたものを統合し、プロセスも含めて最終的な成果のみで評価する方法へと変更。
これにより社内のカルチャーが変わりはじめ、社内にいい緊張感が広がったことで社員の意識もいい方向へと変化しつつあるようです。
出典:LINEヤフー「『ヤフーは変化し続ける。だから挑む』人事制度の大転換」
カルビー株式会社
- バリュー評価とリアルタイムフィードバックを導入
- 仕事のプロセスや長期プロジェクトの成果も評価できるようになった
- 社員の自発的な成長を促し相互理解による信頼関係の構築につながる
老舗菓子メーカーであるカルビーは、バリュー評価とリアルタイムフィードバックを導入しています。カルビーは2019年から、エンゲージメントサーベイ(従業員による会社への貢献意欲調査)を実施しており、結果を分析したところ評価制度に重要な課題があることを発見しました。
当時は年齢によって基本給が決まっており、成果も1年ごとに評価されていましたが、長期の仕事や仕事のプロセスが評価に反映されていないことに不満が出ていました。そこで社員の声をもとに「Calbee 5values」として、「自発」「利他」「対話」「好奇心」「挑戦」を策定。
上司とともに毎期の行動目標を立て、実践度合いを評価する制度を導入したことで、仕事のプロセスも評価できるようになりました。また行動評価に変化したことを受け、よりコミュニケーションが取れるよう1on1を導入。月1~2回以上1対1で対話を行い、上司からの効果的な質問で部下に気づきを与えることで、自発的な成長を促し相互理解による信頼関係の構築も可能になりました。
出典1:リクルートマネジメントソリューションズ「評価制度も刷新 持ち味や個性を重んじ全員が活躍する組織に」
出典2:HRビジョン「日本の人事部 | 効果的な1on1を実現し、チーム全体の対話を活性化 「全員活躍」に向けてカルビーが実践する“管理職支援”とは」
ダイキン工業株式会社
- 独自に構築した資格制度で評価
- AIやIoTに対する知識が必須となる人事制度を導入
- 柔軟な働き方を支援する制度も導入し離職率3%を実現
製造業の事例としてはダイキン工業も挙げられます。大手空調機メーカーのダイキン工業は、典型的な年功序列は早い段階で廃止しており、能力主義と実力主義をモットーとして独自に構築した資格制度で評価を行っています。
2020年度までにはAI(人工知能)や、IoT(機器とインターネットをつなげ活用する技術)に対する知識が必須となる人事制度を管理職に導入。今後重要性を増す先進技術を理解できるようにすることで、ビジネスモデルの変革へとつなげています。
また成果主義を掲げながらも、柔軟な働き方を支援する制度も導入しているのもポイントです。2021年には再雇用制度を拡充し、希望すれば70歳まで働けて成果に応じて賞与ももらえる制度を導入しているほか、短時間勤務制度の導入や育児支援会社との年間契約も実施。結果ダイキン工業は離職率3%を達成しています。
出典1:東洋経済ONLINE「ダイキン工業「離職率3%」実現した人事の秘密」
出典2:ニューススイッチ「管理職はAI・IoTの知識必須、ダイキンが新人事制度」
出典3:ダイキン「ベテラン層のさらなる活躍推進に向けて再雇用制度を拡充」
出典4:ダイキン「選抜研修経験者と執行役員が語る、ダイキン流の人材育成。」
GMOインターネットグループ株式会社
- 関係者が匿名で6段階の評価を行う360度評価を導入
- 役員の等級ランク(報酬)を公開
- 社員の不満が減り仕事への責任感が生まれた
インターネットに関係した事業を幅広く行うGMOインターネットグループでは、360度評価の導入や評価のオープン化を長年行っています。
GMOインターネットグループの360度評価は、他部署も含め業務に関わる人たちが匿名で6段階の等級で評価する制度です。6段階の等級のなかにはランクがあって、それぞれに給与額の枠が定められており、自身の目標の達成度に応じて給与の額が決定されます。
またアルバイトも含めスタッフ全員が、社内ポータルサイトから誰でも役員の等級ランク、つまり報酬や昨年の実績、当年の目標が閲覧できます。社内の全員が、役員が実績に見合った報酬をもらっているかチェック可能です。
この制度を導入したことで、公平に評価されるようになって社員の不満がなくなり、役員は報酬がオープンになったことで、仕事に対する責任感が生まれたそうです。
出典1:財経新聞「「給与の見える化」や「360度評価」が難しかったこと」
出典2:NIKKEIリスキリング「「ガラス張りが一番」みんなの給料も丸わかり」
栃木県宇都宮市
- 職位ごとと業務ごとにコンピテンシーを設定
- 目標設定にも活用し人材育成も促進
- 360度評価にも活用し管理職の自己啓発を促進
人事評価制度の成功事例は、地方自治体でもいくつか見られます。栃木県宇都宮市では、コンピテンシー評価と360度評価を導入しました。コンピテンシー評価は、職位ごとに共通で評価するベーシックコンピテンシーと、業務ごとに必要な項目を設定するファンクショナルコンピテンシーで構成されています。
ファンクショナルコンピテンシーは、職務を遂行するために必要なコンピテンシーを面接で話し合い目標を設定することで、人材育成にも活用しているのが特徴です。360度評価に関しては「上司カルテ」として、上司のコンピテンシー項目を、直属の部下が評価し平均値を本人に開示して自己啓発を促しています。
これらのコンピテンシー評価を導入したことで、宇都宮市では職員が高い評価を得るための方法が明確化し、得られたデータは人材育成や指導にも活用できるようになったそうです。
出典:総務省「地方公共団体等における人事評価システムの取組事例」
宮城県松山町
- 上司・部下・同僚から評価される360度評価の導入
- 全職員のランキング表と職制ごとのランキング表を作成
- 評価の均一化と、職員の自己評価の改善を実現
地方自治体の事例としては宮城県松山町も挙げられます。宮城県松山町は、360度評価を導入しているのに加え、ランキング表の作成を行っているのが特徴です。
360度評価では、たとえば課長であれば助役と課長補佐に加え、助役が指名した2人が評価を行うといったように、上司・部下・同僚からまんべんなく評価されるよう設計されています。また全職員のランキング表と、職制ごとのランキング表を作成することで、職員が自身の立ち位置を把握し、競争意識を高めています。
宮城県松山町の場合、職員数が90人程度で助役や町長が全職員を把握できているため制度の導入により、評価を均一化できたとのことです。またこれまでは職員の自己評価が漠然としていましたが、曖昧さが改善されるといった効果も生まれています。
出典:総務省「地方公共団体等における人事評価システムの取組事例」
人事評価制度に活用される手法
優れた人事評価制度で成果を上げている民間企業や地方自治体を紹介しました。上述の事例を含め、人事評価制度にはさまざまな手法が活用されています。
人事施策に活用される主要な評価手法や現在のトレンドについて簡単に解説します。主な評価手法と内容は次の一覧のとおりです。
人事評価の手法 | 内容 |
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MBO | チームや社員それぞれが達成すべき目標を設定し、達成度を定量的に評価する手法 |
OKR | 企業全体の目標から逆算し、個人レベルで目標設定を行う手法 |
360度評価 | 複数の立場の人から多角的な評価を得る手法 |
コンピテンシー評価 | 組織行動の評価軸として、「仕事のできる社員の行動特性」を組み込む手法 |
バリュー評価 | 社員が自社のバリュー(行動規範・価値観)に沿った行動をできているかチェックする手法 |
ピアボーナス® | 社員同士でポイントや社内コインなどの報酬を贈り合う制度 |
ノーレイティング | ランク制を廃止し、コミュニケーションを頻繁に行って社員の能力・スキルを評価する手法 |
リアルタイムフィードバック | 従来よりも回数を増やし上司が1on1で社員を評価する手法 |
評価のオープン化 | 評価の詳しい内容まで本人に公開する手法 |
BOXIL CHANNELでは、動画でも人事評価の方法について簡単に解説しています。合わせて確認すると理解が深まるでしょう。
MBO(目標管理制度)
MBO(目標管理制度)とは、チームで達成すべき目標や社員一人ひとりが達成すべき目標を設定し、達成度を(定量的に)評価する手法です。社員がみずから目標を設定し、主体的に進捗や実行を管理するのが特徴で、社員の自主性を促して自律的に成長するチームをつくりあげるのに役立ちます。
目標設定といえばトップダウンで管理者が部下に達成すべき目標を課したり、ノルマを与えたりするイメージがあります。しかしMBOは上司と部下がコミュニケーションをとりながら、チームと個人の目標をマッチさせるのがポイントです。
また、杓子定規に目標を決めるのではなく、社員個人の能力や役所に見合った目標を設定することも重要です。
MBO | 詳細 |
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手法内容 | チームや社員それぞれが達成すべき目標を設定し、達成度を定量的に評価する手法 |
導入のメリット | ・社員の自主性を促すことで自律したチームづくりに役立つ ・個人の能力に見合った目標を設定するためフレキシブルな評価ができる |
導入のデメリット | ・社員が目標以外のタスクをやりたがらない可能性が高まる ・目標を低く設定してしまう社員も出てくる |
OKR
「目標と主要成果」を意味するOKRは、企業の管理層が決定した目標を、各部署やチーム、社員個人が細分化して達成する手法です。企業が達成すべき目標(Objectives)を、各部署や個人が主要な成果(Key Results)に落とし込むのがポイントです。
MBOの目標の共有範囲は上司と部下ですが、OKRは全社的に目標を共有し、さらにSMARTの法則によって定量的な目標を設定します。
SMARTの法則とは、設定する目標を次の5つの指標で判断し、組織が達成すべき最適な目標にするための考え方です。
- Specific(具体性)
- Measurable(計量性)
- Achievable(達成可能性)
- Relevant(関連性)
- Time-bound(期限)
古い概念ではあるものの、目標やゴールを設定する際に有効といわれています。また、四半期~1か月に1回程度、達成度の振り返りをしっかりと行うのもポイントです。
OKR | 詳細 |
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手法内容 | 企業全体の目標から逆算し、個人レベルで目標設定を行う手法 |
導入のメリット | ・社員それぞれの行動が明確になる ・目標を共有できるため、企業のビジョンが社員に浸透しやすい |
導入のデメリット | ・個人の目標や達成度合いまで細かく共有するため、かえって社員のモチベーションが下がる可能性がある |
360度評価
360度評価は、上司だけでなく同僚や部下、場合によってはクライアントといった複数の立場の人から多角的な評価を得る手法です。すでに多くの企業で導入されている、スタンダードな人事評価手法です。
別々の立場の人から複数の評価を得るため、客観的で公平な評価が期待でき、評価される社員自身も納得感を得やすくなります。また近年、個人の強みは周囲から客観的に評価されると発見しやすくなるといわれているため、自分では気づきにくい特性や強みを理解できるようになるのもメリットです。
ただし、評価する側との人間関係が悪化する可能性も指摘されているため、匿名評価の導入や、独自に話し合いの場を設けて双方が納得できる体制を整える企業が多いようです。人によって評価のバラツキが大きくならないような体制づくりが重要でしょう。
360度評価 | 詳細 |
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手法内容 | 複数の立場の人から多角的な評価を得る手法 |
導入のメリット | ・公平な評価をしやすい ・社員自身が気づけなかった特性や強みを理解できる |
導入のデメリット | ・評価体制を整えるまでに時間がかかる ・社員が周りの評価を気にしすぎて仕事に集中づらくなる |
コンピテンシー評価
業績を継続的に上げられる社員の行動特性をコンピテンシーといい、これを組織行動の評価軸として設定することで、社員全体のパフォーマンスを向上させるのがコンピテンシー評価制度です。
継続的に高い業績を出すための行動やスキル、知識などの行動特性を分析して明確な評価基準として設定するため、組織の規模が拡大しても評価のブレや偏りが起こりにくいのがメリットです。
ただし、企業の成長段階や市場環境の変化によって、確実に業績を上げるための行動特性に変化が生じる可能性があるため、定期的にコンピテンシーを見直す必要があります。全社的に見直すことはもちろん、各部門で優秀な行動特性とは何か、適宜チェックしましょう。
コンピテンシー評価 | 詳細 |
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手法内容 | 組織行動の評価軸として、「仕事のできる社員の行動特性」を組み込む手法 |
導入のメリット | ・組織の規模が大きくなっても評価が偏りにくい ・評価軸が明確であるため戦略的な人材育成が可能 |
導入のデメリット | ・評価の基準となるサンプルを集めにくい ・経営環境が変わるごとにコンピテンシーの項目を変える必要がある |
バリュー評価
社員の評価項目に企業が掲げる行動規範・価値観(バリュー)を含める手法で、社員が自社のバリューに沿った行動ができているかチェックします。一人ひとりが自社の価値観を理解して、「すべき仕事」とは何かを考えて行動できるようになるのがメリットです。
ただし、企業の掲げる理念や価値観は曖昧なものが多いので、具体的にどういう行動がバリューに沿っているのかを明確にするのが重要です。
なんとなく自社の価値観に合っている程度の評価では、個人によって評価のバラツキが出てしまいます。具体的な行動指針を全社員で共有したり、互いにバリューに沿った行動を評価し合ったりできる環境を整えましょう。
バリュー評価 | 詳細 |
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手法内容 | 社員が自社のバリュー(行動規範・価値観)に沿った行動をできているか、チェックする手法 |
導入のメリット | 会社と社員で価値観をすり合わせるため、それぞれの方向性を合わせられる |
導入のデメリット | 会社の価値観が浸透しない限り、バリュー評価の運用ができない |
ピアボーナス®
ピアボーナス®とは社員から社員に特別手当を送る仕組みのことです。社員同士で互いに感謝の気持ちをポイントや手当の形で贈り合うことで職場環境がよくなり、社員エンゲージメントの向上が見込めます。Google社をはじめ世界中で導入が進んでいる制度です。
トップダウンの評価制度では、どうしても現場の社員が納得できない評価が下されるおそれがあります。しかしピアボーナス®を評価基準に加えることで、多くの人から感謝されている社員が誰かを「見える化」でき、社員が納得しやすい評価ができるメリットがあります。
また、社員の離職率の低減にも効果が期待できるため、職場環境を改革して社員の定着率を高めたい企業にもおすすめな手法です。
ピアボーナス® | 詳細 |
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手法内容 | 社員同士でポイントや社内コインなどの報酬を贈り合う手法 |
導入のメリット | ・社員同士が褒め合う文化を構築できる ・社員のいいところが可視化され、個人のモチベーション向上につながる |
導入のデメリット | ツール導入にコストがかかる |
ピアボーナス®サービスでは「Unipos」が有名です。
※「ピアボーナス®」はUnipos株式会社の商標です。商標権者から使用許諾を得ています。
ノーレイティング
ノーレイティングとは、ランクによる社内評価を廃止し、コミュニケーションを重視して社員を評価する手法のことです。MBOのデメリットをカバーする制度として、アメリカでいち早く着目された手法であり、現在日本企業でもトレンドのひとつです。
評価やランクよりも、頻繁なフィードバックや1on1ミーティングといったコミュニケーションを重視し、短期間で社員の能力を観察し評価します。ただしどの企業にも合う方法ではなく、上司のマネジメント力が必要であり、導入にも時間がかかるでしょう。画期的な方法ではあるものの、導入は慎重に検討するのがおすすめです。
ノーレイティング | 詳細 |
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手法内容 | ランク制を廃止し、コミュニケーションを頻繁に行って社員の能力・スキルを評価する手法 |
導入のメリット | ・コミュニケーションが活性化する ・細かくフィードバックがもらえる ・話し合いで評価が決定されるため、不当な評価になりにくい |
導入のデメリット | ・その他の手法に比べ評価者の負担が大きい ・評価者に高いマネジメントスキルが求められる ・導入や制度を整えるのに時間がかかる |
リアルタイムフィードバック
従来の人事評価の回数よりも、より頻繁かつタイムリーに評価を行う手法のことです。社員の課題抽出から改善までのスピードが早まるため、人材育成もスピーディーに進められます。また社員としてもモチベーションを維持しやすくなります。ただし、評価の回数が増えると評価者の負担が大きくなるため注意が必要です。
リアルタイムフィードバック | 詳細 |
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手法内容 | 従来よりも回数を増やし上司が1on1で社員を評価する手法 |
導入のメリット | ・上司と部下の信頼関係を構築しやすい ・社員が常にサポートを受けられるためモチベーションを保ちやすい |
導入のデメリット | ・評価の回数が増えると評価者の負担が大きくなる |
評価のオープン化
評価のオープン化とは、社員の評価について具体的な内容まで本人に公開する手法です。評価の内容をオープンにすることで、社員自身が自分のどこを評価されているか、どこが足りないかを自覚できます。また具体的な内容まで開示することで、評価の内容にも納得しやすくなるでしょう。
加えて上記で紹介したように、役員の評価を社内全体にオープンする方法もあり、どれも組織の透明性が高められます。
評価のオープン化 | 詳細 |
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手法内容 | 評価の詳しい内容まで本人に公開する手法 |
導入のメリット | ・社員が自分の立ち位置や足りない部分を自覚しやすい ・詳細を見せることで評価に納得してもらいやすい |
人事評価制度作成の目的・メリット
人事評価制度を作成する目的やメリットを大まかに5つにわけて解説します。
- モチベーションが向上する
- 人材スキルの管理ができる
- コミュニケーションを促進できる
- 客観的な評価を決める基準になる
- 人材の能力育成に役立てられる
モチベーションが向上する
人事評価制度によって、公平で適正な評価をされることは、社員のモチベーションアップにつながります。
評価基準が明確になることで、業務の目的が把握しやすくなれば、積極的に自信をもって業務にも取り組めるでしょう。頑張りや成果が可視化されれば周囲からも認められやすく、社員の承認欲求を刺激するのにも効果的です。
人材スキルの管理ができる
定期的に人事評価を行うことで社員のスキルが棚卸しできるため、社内全体でのスキル管理が可能です。評価データを蓄積してデータベース化すれば、社員のスキルを把握しやすくなり、優秀な人物の発見や人事異動の適正化にも活用できます。
コミュニケーションを促進できる
人事評価制度では、上司と部下が1対1でコミュニケーションをとる場面が増加します。上司が適切なフィードバックを行えば、「自分の努力が認められた」「適切に評価されている」と、上司や会社への信頼度の向上につながります。
また、指導する側のマネジメント能力やコミュニケーション能力のアップも期待できるでしょう。
客観的な評価を決める基準になる
人事評価制度は、社員の貢献度や能力を客観的に判断するためのツールです。そのため制度を整えて基準を明確にすれば、相対評価も納得感がいくものとなり、人事評価制度に対する社員の不満も出にくくなるでしょう。
また上司からのフィードバックも、客観的な人事評価を基準に行うことで、より適正な指導をしやすくなる効果も期待できます。
人材の能力育成に役立てられる
人事評価は社員がもつスキルや能力を正確に見える化できるため、人材育成にも役立てられます。社員は自身の評価内容を見て現在の立ち位置や足りていない能力、得意なことなどを把握することで、今後キャリアアップのために何をすればいいかがわかります。
とくに社員数が少ない中小企業は少数精鋭の組織となる必要があり、強い組織づくりが求められるため人事評価制度の導入がおすすめです。また上司としては、今後どのような業務やプロジェクトに割り振ればいいかの判断材料にもできます。
人事評価制度の注意点
人事評価制度を盲目的に取り入れるだけでは効果が上がらないばかりか、逆に社員から不満が出ることや、正しく社員を評価できないといった失敗リスクもあります。
実際に新しい人事評価制度を運用する際には、まず評価側の適正の有無を確認し、いわゆる「ハロー効果」や寛大化傾向・厳格化傾向にも注意しなければなりません。
多様な評価軸でハロー効果を防ぐ
ハロー効果とは評価対象者の目立った特徴に全体の評価が歪められてしまう傾向のことで、具体的には限られた実績をもとに他の評価要因も判断してしまうことです。
たとえば、ひとつの実績の悪化をもって、社員のすべてをマイナス評価してしまえば、社員に不満をもたれてしまうでしょう。できる限り多様な評価軸から、総合的に評価する仕組みが必要です。
客観的に人事評価を行う
人事評価制度が整っていないと部下によく思われたいために評価を甘くする評価者や、逆に管理職の立場を意識するあまり、全体的に評価を厳格にする評価者が出てくる可能性もあります。
このような失敗を防ぎ客観的な人事評価制度を運用するには、評価する側とされる側がどういったバイアスに陥りがちかを理解し、互いに納得感を得やすい評価体制を整えることが重要です。適正な評価のために、人事評価シートや人事評価システムの導入も検討してみましょう。
人事評価システムの導入は、人事評価業務の効率化が図れるだけでなく、アンケート機能を使って人事評価制度に対する社員の不満をはじめとする本音が聞き出せます。そのためより客観的な制度にするための見直しにも役立ちます。
企業に合った評価制度を導入しよう
本記事で紹介した事例を見ればわかるように、企業・自治体によってさまざまな人事評価制度が導入されていることがわかります。
重要なのは、他の企業が成功しているだけの理由で新しい制度を導入するのではなく、まずは自社の環境を振り返り、もっとも適した手法を選択することです。導入するだけはなく、また定期的に成果をチェックして適宜カスタマイズすることも重要です。
人事評価は人事評価システムや人事評価シートを利用することで効果的に行えます。本記事を参考に、ぜひ自社に最適な人事評価制度を構築してください。
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