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人事評価制度とは?目的とメリット・評価項目から作り方まで

最終更新日:(記事の情報は現在から562日前のものです)
人事評価制度とは、社員の業績や会社に対する貢献度などを一定の基準にもとづいて評価し、報酬や等級に反映させる制度です。人事評価制度の目的とメリット、評価項目や評価手法、作り方と導入の注意ポイントについて解説します。

人事評価制度とは何か? YouTube動画でも解説しています!

人事評価制度とは

人事評価制度とは、社員の業績や会社に対する貢献度などを一定の基準にもとづいて評価し、報酬や等級に反映させる制度のことです。

人事考課との違い

人事評価と人事考課は、区別される場合もあれば、同じだとみなす企業もあります。2つを別の意味で使う場合は、人事評価は従業員に対しての評価全般を指すのに対し、人事考課は昇給や賞与のために能力を評価するという違いがあります。

人事考課とは何かについては、詳しく次の記事で解説しています。

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人事評価制度の3つの機能

人事評価制度は、昇給や昇格、昇進、賞与へ反映され、主に次の3つ機能から構成されます。

  • 等級制度
  • 評価制度
  • 報酬制度

等級制度

等級制度とは、従業員に求める能力・役割・権限を、分類し階層化する制度のことです。等級により社内の序列を明確にすることと、従業員の成長のために等級で求める役割を理解してもらうことが重要です。

評価制度

評価制度とは、企業で決められた行動指標や等級をもとに、業務内容や成果を評価する方法を定めた制度のことです。評価期間中の従業員の業績や行動などを評価し、評価結果によって等級や報酬が決定されます。

報酬制度

報酬制度とは、評価制度や等級制度での評価結果にもとづいて、給与や賞与などを決める制度のことです。納得感のある人事評価で、一人ひとりの働きに応じた適正な報酬を支給することにより、従業員満足度を高めながら人材育成につなげられます。

>>社内で評価制度を構築できる人事評価システムの比較はこちら

人事評価制度の目的

そもそも、どういった目的で人事評価制度が導入されるようになったのでしょうか。人事評価制度には大きく分けて次のような目的があります。

従業員の処遇への反映

人事部の役割の一つに、従業員の「処遇」を決めることが挙げられます。

  • 昇給・賞与を決める報酬制度
  • 昇格・昇進を決める等級制度

これらを決定するには会社全体を見渡したうえで判断しなければならないので、評価基準が必要です。そのために、人事評価制度を設けて基準を策定し、判断のための基準とするのです。

人事処遇は、従業員のモチベーションに大きく影響するため、慎重な決定と運用が求められます。

人材配置の最適化

人事評価制度が、従来の年功序列制度の代わりに導入されることで、能力主義、成果主義にもとづいた人材配置の最適化が可能です。

従業員の人材育成のため

人事評価制度の目的には、人材育成が挙げられます。従業員の成長促進は、人事評価制度の最も重要な目的の一つといえます。もちろん、評価するだけでは人材は成長しません。管理職が従業員と目標を設定し、達成までマネジメントする必要があります。

従業員の成長、ひいては会社の成長という目的を理解していれば、「なぜこんな面倒なことをやらなければならないの?」といった人事評価制度への不満はなくなるでしょう。優秀な社員の退職につながらないよう、人事評価制度への不満は早めに解消しておく必要があります。

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人事評価制度の評価項目

人事評価制度の評価項目は、会社が従業員に何を期待するのか明確にしたものです。人事評価の項目を大きく分けると、「能力評価」、「業績評価」、「情意評価」の3種類に分けられます。

職位・等級が上位になるほど業績を求められるので、業績評価の比重を重くするケースが多いでしょう。逆に、新入社員や若手社員は、会社の求める行動を取れているのか、能力を身につけているのかを重視する企業が多いです。

社内の人事評価制度にも使える、Excelの人事評価シートのテンプレートはこちらの記事から無料でダウンロード可能です。ぜひ活用してみてください。

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能力評価

人事評価制度の能力評価とは、社員がもっている能力をどのように発揮したかによって評価を行います。能力評価におけるポイントは、能力を有しているかどうかではなく、能力を業務へ活かせているかが重視される点です。

もし、能力を持っていたとしても業務へ活かせていなければ、業績評価へもつながらず、会社としては雇っているメリットを受けられません。そのため適切な形で能力が反映されているかをチェックします。

近年はテレワークの普及もあり、メンバーシップ型雇用からジョブ型雇用への転換が進んでいます。雇用時に期待した能力を発揮できているか評価する必要があるため、能力評価は今後も重視されるでしょう。

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業績評価

人事評価制度の業績評価とは、課せられた目標を達成できたかどうか評価するもので、成果主義とも呼ばれます。営業担当者を例に挙げると、半期に1億円の売上を期待されていたのであれば、この売上1億円を達成したか否かが業績評価です。

間接部門では、営業のように数値目標とはなりませんが、「○○システムを導入する」「○○業務を先輩から引き継いで一人でできるようになる」「福利厚生制度を改善し、従業員満足度を10%向上する」といったものが目標となります。

情意評価

人事評価制度の情意評価とは、業績を上げるために必要な能力を持っているか必要な行動を取れているかを判断していくものです。主に就労意欲や行動といった勤務態度から判断するため、業績評価の対象となる目標が達成できたかどうかは加味しません。

これらの評価指標に対応する項目をしっかり定めて、納得感のある人事評価制度を導入しましょう。

人事評価制度のメリット・デメリット

企業が人事評価制度を適正に導入することのメリットを紹介します。

企業ビジョンやミッションの浸透

企業の成長を確かなものにするためには、ビジョンやミッションを従業員が深く理解し、一体となって実現のために努力する必要があります。そのための目標や期待、フィードバックを、人事評価制度で適宜伝えることで、ビジョンやミッションが末端まで浸透し、人的資本管理にもとづく強固な企業経営が可能となります。

従業員エンゲージメントの向上

人事評価制度で、社員の業績や貢献度を適正に評価することで、従業員エンゲージメントの向上が見込めます。各社員は、上司や評価者が自分のことを「きちんと認めてくれていること」、「期待してくれていること」を実感することで、組織の重要な一員としての自覚が芽生え、業績や業務改善への貢献意識が高まります。

効果的な人材マネジメント

人事評価制度の定期的な能力評価を通じて、組織は人材のスキルや能力のデータを最新のものにアップデートできます。これにより効果的な人材マネジメントやタレントマネジメントが実現でき、採用戦略や人的資本による事業戦略立案につながります。

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組織活性化

人事評価制度で、目標管理にもとづいた評価や、適切なタイミングでフィードバックや1on1ミーティングを行うことで、組織の目標やゴールに向けた一体感が醸成され、組織活性化につながります。また、360度評価で上司を部下が評価することで、成果主義にもとづくフラットな組織文化の実現も期待できます。

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人事評価制度のデメリットとは

不公平感のある人事評価制度が定着してしまうと、社員の不満が常にくすぶりつづけ、従業員エンゲージメントは損なわれ、離職率の増加につながるリスクがあります。

従業員へのサーベイなどを通して、人事評価制度の課題を可視化し、より公正な人事評価制度の構築や、データにもとづいた人事評価システムの導入を図ることが大切です。

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人事評価の評価手法

企業が導入している人事評価の手法には、さまざまなものがあります。定番となった人事評価手法であるMBOや、GoogleやMeta(旧Facebook)で使われ近年話題のOKR、上司以外の人も評価できる360度評価(多面評価)など、代表的な評価手法を紹介します。

MBO(目標管理)

MBOとは、「Management by Objectives and Self Control」の略称で、日本語では「目標管理」と訳されている人事評価方法です。目標を設定してその達成度で評価を決める評価方法のことで、1954年にピーター・ドラッカーが提唱した組織マネジメントの考え方です。

設定した目標(Plan)を実行(Do)し、定期的にその達成度合いを確認(Check)します。当初の目標が実行できていたか、成果に結びついたのかを検証・評価するうえで、明らかになった課題や問題点の改善策を検討、改善(Action)することで、次の目標につなげます。このようにMBOは、目標達成のためにPDCAサイクルを回す人事評価方法になっています。

会社と社員のベクトルを合わせて目標を設定し、組織の目標の中に社員自身の目標を見つけるので、会社の成功に貢献している参画意識を持ちやすく、人材のモチベーションアップが期待できる人事評価手法です。

MBOについては次の記事で詳しく解説しています。

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OKR

OKRとは、「Objectives and Key Results」の略で「目標と成果指標」を意味する目標管理の方法です。インテルで誕生し、GoogleやMeta(旧Facebook)といったシリコンバレーの有名企業が取り入れていることで、注目を集めています。

OKRの特徴は、企業や団体のトップが決めた目標に対して、部署やチーム、個人単位へと目標を細分化することです。企業が定めた目標をもとにして従業員は指標を作成するため、企業の果たすべき成果に違うことなく目標を定められます。また、1つの目標に対してそれぞれいくつかの定量的な指標を定めるため、どれくらいの進捗かを測ることも可能です。OKRは、MBOよりもスピード感があることが特徴で、個人のパフォーマンス評価は短期間のうちに行われフィードバックされます。

OKRについては次の記事で詳しく解説しています。

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コンピテンシー評価

コンピテンシーとは、高い業績を継続的に上げる社員の行動特性のことを言います。業績が高い人たちの共通の行動を評価軸として設定することで、社員全体の行動の質を上げていこうという人材育成につながる人事評価方法です。

コンピテンシー評価は、具体的な行動で評価するので、評価される側はどうすれば高い評価を受けられるのか理解でき、基準が明確になることから評価者が評価しやすいメリットがあります。

一方で、企業の成長フェーズや市場環境が変わると、業績を出すための行動特性も変わってきます。適宜、コンピテンシーを見直すことも必要となるでしょう。

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360度評価(多面評価)

360度評価(多面評価)とは、上司だけでなく、部下や同僚などから多角的に評価を得る方法です。複数の評価者からの評価にもとづき、客観的かつ公平な評価を目指します。

360度評価は、部下が上司を評価する場合もあり、管理職の育成にも用いられます。自己評価と他者評価の違い、部内評価と部外評価の違いに気付き、上司の評価だけでは見えない強みや弱みが見えるので、人材の能力開発につながるともいわれています。

また、コンピテンシー制度で用いられる企業ごとの評価ポイントが反映されることも多く、成果だけでなく行動特性も重視されます。

一方で、評価トレーニングを受けていない評価者が含まれるため、客観性・公平性が欠けた評価となることもあります。多面評価を導入するには、評価者のトレーニングと評価者を増加させる施策も鍵となるでしょう。実施する際には、考課や査定、賞与に響かない部分での人事評価に留めることがポイントです。

360度評価・多面評価とは何か、次の記事で詳しく解説しています。

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ノーレイティング

ノーレイティングとは、Google、P&Gなどのグローバル企業が導入している人事評価の方法で、社員にA、B、Cなどのランクを付けることをやめています。

等級制度を廃止しているので、管理者の裁量により給与は決定されるため、人事評価のために1on1ミーティングを月に数度行うことになります。

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ピアボーナス®

ピアボーナス®とは、社員同士で贈り合う新しい評価方法のことです。周りの従業員に感謝する際、景品や賞与と交換できるポイントも同時に渡す仕組みです。普段いいづらい感謝をポイントという形でお返しすることで、自然な形にて気持ちを伝えられます。

ピアボーナス®とは何か、次の記事で詳しく解説しています。

※「ピアボーナス®」はUnipos株式会社の商標です。商標権者から使用許諾を得ています。

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人事評価制度の作り方の手順

では、実際にどのように人事評価制度を導入すればよいのか、人事評価制度の作り方の手順を紹介します。主な手順は次のとおりです。

  1. 評価基準の決定
  2. 目標の設定
  3. 進捗の確認
  4. 評価
  5. フィードバック面談

1. 評価基準の決定

まずは、人事評価制度の評価基準を明確にします。たとえば、「課長」ではどのような職責や役割を求められるのか、どのような能力・行動を求められるのかといったことです。評価基準を各職位・等級ごとに決めておきましょう。

また、評価時に「実はあなたに求められた能力・行動は」といった後出しにならないよう、事前に期待される能力・行動の基準を明確にする必要があります。

中小企業の場合や規模の小さい企業の場合、人事評価制度が整っていない場合も多くあるでしょう。より詳細な手順は、こちらの記事で解説しているのであわせて活用してください。

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2. 目標の設定

人事評価制度の業績評価の目標は、会社の目標(計画値・方針)から、部門目標、組織目標、部署目標、個人目標と細分化していきます。この順序で目標設定がなされないと、個人の目標は達成されたのに、部署の目標は達成できていないというおかしな状況になります。

個人目標を決める際に、注意すべきポイントがあります。それは、属する職位・職責に平均的に期待される目標を課すことです。

優秀な従業員には高い目標、一般的な従業員には低い目標を設定すると、優秀な従業員はより高いハードル、一般的な従業員には低いハードルとなってしまいます。これでは、公平感のある人事考課や昇格・昇進の判断がしづらくなります。個人への目標設定はやりがちなので注意しましょう。

3. 進捗の確認

人事評価制度では、評価期間中に必ず目標達成の進捗を確認しましょう。業績評価の目標は、どこまで進んでいるのか、何か困っていることはないか、上司のサポートが必要かなどを、定期的に面談で確認すると達成しやすくなります。

4. 評価とコメント

評価基準と進捗にもとづき、人事評価制度の業績評価では、「できたかどうか」の事実を評価します。「この社員は頑張っていたけど、運が悪くて目標が達成できなかった」といった場合は、業績評価では目標を達成できなかったとして評価します。「頑張っていた」部分は情意評価で評価するので問題ありません。

人事評価制度の情意評価では、評価時に「行動を取っていた」「行動を取っていない」といった水掛け論にならないようにしましょう。そのため、評価者は逐一記録をとりましょう。また、悪い行動はその場で注意、良い行動もすぐにほめて本人に都度伝えていくことで、社員はより早く成長できるようになります。

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5. フィードバック

人事評価制度で人事評価を終えたら次の目標達成のために、部下に良かった部分、足りなかった部分のフィードバック面談をします。良い行動は継続させつつ、足りない部分を認識させることが目的です。

また、能力評価と情意評価で、能力が身についているのか、行動できているのかを確認し、現状をフィードバックしましょう。とくに悪い行動についてはその場で注意し、是正を促す必要があります。良い行動についてはほめることで定着化を図ります。

人事評価の結果を受けたフィードバックのコメント例文とやり方については、こちらの記事で詳しく解説しています。フィードバック面談の適切な方法がわからない担当者の方は、ぜひ参考にしてください。

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人事評価制度で注意すべきポイント

人事評価制度は次のポイントに注意して運用しましょう。人事評価制度をせっかく導入したのにもかかわらず、うまく定着しなかったり、不満が増えたりしてしまうようであれば、制度の導入は失敗に終わってしまいます。

評価期間内のみで評価する

人事評価制度では、評価対象期間の行動のみを評価対象とします。評価期間外の行動を混同しないのがポイントです。たとえば、「この社員は数年前に大きな失敗をして、部署の業績に大きなマイナスをつけた」というのはNGです。評価期間外の結果や行動で評価してはいけません。

職務行動のみを評価する

人事評価制度では、職務行動のみを評価対象とします。不公平にならないよう、職務外の行動を混同しないことがポイントです。たとえば、「この部下は終業後にいくら誘っても一緒に飲みに行かないので、協調性がないため評価を下げる」とするのは、職務外の行動評価が査定に影響を及ぼしています。

ただし、職務外の行動が結果として職務に影響した場合は評価の対象とします。たとえばTVゲームのやりすぎで、遅刻した場合は評価の対象になります。

特定の行動を過剰評価しない

目立った行動、その従業員の特徴的な行動に対して大きくプラスの評価、マイナスの評価をつけるのは、人事評価として好ましくありません。これはハロー効果とも呼ばれ、特定の行動や業績に評価が大きく影響されることを意味します。

>>ハロー効果の詳細はこちら

一律の評価基準を設ける

人事評価制度で部下への評価を甘くつけすぎるのも注意が必要で、一律の評価基準を守り公平な評価になるように心がけることが大事です。温情的な人事評価が、必ずしも部下のためになるとは限りません。また、あまりにもひどい評価の場合は評価者の資質を問われます。

先入観や偏見は排除する

人事評価では先入観、偏見、個人的感情を取り除くことが大事です。とはいえ、完全に主観を交えないのは困難でしょう。評価者が、自身の下した評価が先入観や偏見、個人的感情にもとづいていないかを確認するだけでも改善されるでしょう。勤務態度や業績にもとづいて、客観的に評価するようにしてください。


人事評価制度の成功事例が知りたい方は、次の記事を参考にしてください。

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