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勤怠管理とは?必要性や目的、管理項目と課題、法律の基礎知識も解説

最終更新日:(記事の情報は現在から173日前のものです)
勤怠(きんたい)管理とは、従業員の勤務状況や労働時間を記録し、管理する業務のことです。この記事では、勤怠管理とは何か・なぜ必要なのか、勤怠管理の目的と管理項目、具体的な方法や注意点を法律の規制も交えて解説します。

勤怠管理とは

勤怠管理とは、従業員の勤務状況や労働時間を記録し管理する業務のことです。従業員の出勤・退勤時間、休憩時間、残業時間、有給休暇などを正確に把握します。勤怠管理は労働基準法によって定められた企業の義務です。

近年、過労死やブラック企業の問題がメディアで度々取り上げられ、勤怠管理の重要性があらためて注目を集めています。36協定の時間外労働の上限規制改正の影響もあり、勤怠管理や働き方について、あらためて研修を行っている会社もあるでしょう。

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勤怠管理と就業管理の違い

就業管理とは、従業員の出勤時間と退勤時間、欠勤状況、休暇の取得状況などを把握して、法令や就業規則の遵守について管理することです。

勤怠管理は労働時間に関する記録や管理を行うのに対し、就業管理は従業員の全体的な労働状況を管理するという違いがあります。

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勤怠管理の必要性

適切な勤怠管理が求められている背景として、主に次のことが挙げられます。

長時間労働の是正

日本では長らく長時間労働が横行し、過重労働による健康被害や過労死などの深刻な問題が発生してきました。適正な勤怠管理により、従業員の労働時間を適切に把握し、長時間労働を防止することが求められています。

また、長時間労働は必ずしも生産性の向上につながらず、かえって従業員の疲労を招きマイナスの影響を及すことが多いです。勤怠管理による労働時間の適正化は、従業員のワークライフバランスの改善とともに、生産性の向上にもつながることが期待されています。

働き方改革の推進

政府は「働き方改革」を掲げ、長時間労働の是正や多様な働き方の実現を目指しています。適切な勤怠管理は、労働時間の把握と適正化を通じて、この改革を後押しする重要な取り組みとなっています。

コンプライアンス遵守

労働基準法では、法定労働時間を超える時間外労働に対する割増賃金の支払いが義務付けられています。勤怠管理なくしては、時間外労働の実態を正確に把握できず、賃金の不払い残業といったコンプライアンス上の問題が発生する可能性があります。

勤怠管理の目的

勤怠管理の目的には次に挙げるものがあります。

正確な給与計算

勤怠管理は、正確な給与計算を行うために欠かせない要素です。

勤怠管理によって勤務時間を正確に記録し、必要に応じて残業代を支払ったり、休暇を提供したりします。適正な給与が支払われないと、従業員の間に不満が生じるだけでなく、法律違反となる可能性も高いです。

とくに、残業代の未払いは従業員の労働意欲を低下させるだけでなく、訴訟に発展するリスクもあります。この未払いが労働基準監督署の定期監査で発覚するケースも少なくありません。そのため、勤怠管理と給与計算を常に正確に行い、従業員の就業状況を把握することが基本中の基本です。

長時間労働の防止

過労死問題で、長時間労働を防ぐことが企業で求められるようになりました。

勤怠管理には、長時間労働を防ぎ、より働きやすい環境をつくる目的もあります。働きやすい環境づくりを進めるうえで、勤怠管理は非常に重要です。勤務時間を把握すると、長時間労働が常態化している従業員がわかります。まずは働きすぎている従業員を把握し、業務の配分を見直したり、特定の従業員に業務が集中する原因を見つけたりすることが、長時間労働を是正するための労務管理の基本です。

働きすぎている従業員をケアしていく過程で、企業全体の労働環境に対する改善策も打ち出せるでしょう。

また、勤怠管理システムでは、勤務時間が長すぎる従業員や、勤務と勤務のインターバルが短い従業員がいると、管理者にアラートを表示するシステムもあります。

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有給休暇や休日の設定

勤怠管理には、従業員に適切な休日・有給休暇を与えるための目的もあります。年間の休日数は法律で厳密に規定されています。また、年次有給休暇は勤務期間によって付与されるものです。従業員が休日出勤をしているならば、出勤した分の代休や振替休暇も出さねばなりません。

この振休や代休は月をまたぐと、月の所定労働時間が変わります。この点の調整が勤怠管理システムで行うと便利に、そして正確になります。

公平性と透明性の確保

勤怠管理を適切に行うことで、従業員全員に対して公平で透明性のある労務管理が実現します。すべての従業員に対して同じ基準で勤怠を管理し、適切な賃金が支払われることで、従業員の信頼を得ることにつながります。また、不正な勤怠記録を防止できる勤怠管理システム導入も、公平性と透明性の確保に役立つでしょう。

勤怠管理の管理項目

勤怠管理で管理する主要な項目について解説します。

出勤時間と退勤時間

出勤時間と退勤時間の記録は、基本的な勤怠管理の項目です。これにより、従業員の実際の労働時間を正確に把握できます。同時に、出勤日と欠勤日も記録できます。

一般的には、タイムカードや勤怠管理システムを使用して、出退勤の打刻を行っていることが多いです。

労働時間

労働時間は、出勤時間と退勤時間の差から算出されます。これには、休憩時間を差し引いた実労働時間も含まれます。労働時間の正確な管理は、残業代や休暇の計算にも影響するため、非常に重要です。

時間外労働(残業)時間と深夜労働時間

1日の法定労働時間(通常は8時間)を超える労働が発生した場合、その時間は時間外労働時間もしくは残業時間として記録されます。残業時間の管理は、労働基準法にもとづく適正な労務管理と従業員の健康管理のために不可欠です。

所定労働時間を超える時間外労働には、その分の残業代を支払う必要があります。一口に「残業代」と言っても、残業の内容によって計算方法は変わります。たとえば、22時~翌5時の時間の残業なら深夜手当を加算しなければなりません。そのため、正確な勤怠管理をするには働いた時間数だけでなく時刻も正確に記録する必要があります。

時間外労働の賃金での扱いについては、次の記事で紹介しています。

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有給休暇とその他の休暇

従業員が取得した休暇や有給休暇の日数も勤怠管理の一部です。休暇の種類(育児休暇、介護休暇、病気休暇など)や有給休暇の消化状況を正確に把握し、適切な管理を行うことが求められます。

とくに年次有給休暇の取得日数は、法律で決まっているため、取得状況をしっかりと把握する必要があります。また最近は、有給取得率を就職の際の判断基準としてチェックする求職者が増えているため、企業側から積極的に有給取得を促しましょう。

休日出勤

通常の勤務日以外に働いた場合、その時間は休日出勤として記録されます。休日の日数は法律で規制されているので、もし従業員が休日出勤した場合は、振替休日や代休を出さねばなりません。

遅刻・早退

予定された勤務時間に対する遅刻や早退の記録も必要です。また、遅刻時刻や早退時刻から労働時間の正確な把握が可能となります。もし遅刻が多いようなら、指導をする必要があるでしょう。

適切に遅刻や早退に対応しないと、従業員内で不公平感が生まれて、組織のチームワークや生産性に悪影響を及ぼしかねません。

勤怠管理の方法

勤怠管理の方法 勤怠管理の方法

勤怠管理は次の方法で行えます。

  • タイムカード
  • 出勤簿
  • Excel管理
  • クラウド型の勤怠管理システム

タイムカード

勤怠管理システムの登場までに、最もメジャーだった方法はタイムカードです。現在でも、中小企業でタイムカードで勤怠管理を行っている企業は少なくないでしょう。タイムカードは、タイムレコーダーに専用のタイムカードを入れて、打刻を記録するものです。

これを手入力でExcelで記録して、それをもとに給与計算を行います。

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出勤簿

タイムカードと並んでメジャーだった方法が出勤簿を利用した方法です。

紙もしくはExcelで作成した出勤簿に日々の勤務時間を記入し、上長の承認を得て締め切ります。そして、この出勤簿をもとに給与計算を行います。

Excelで作成された出勤簿はそのまま給与計算に使えますが、紙のものでは、給与計算用のExcelシートに手打ちで入力しなければならず、業務負担が大きくなるのがデメリットです。

Excel管理

Excelを使用した勤怠管理は、手軽でコストを抑えた方法です。

Excelを使った勤怠管理は、基本的な操作と数式を活用することで簡単に行えます。インターネット上で無料のテンプレートが公開されているため、コストをかけずに導入可能です。

一方で、Excelの入力は従業員任せになるので、入力ミスや不正申告も起こりやすく、適正な勤怠管理にふさわしい方法とはいえません。法改正のたびに設定してある数式を見直す必要がある点もデメリットです。

出勤簿や勤怠管理表のExcelテンプレートは、こちらから無料ダウンロードできます。

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クラウド型の勤怠管理システム

今までの方法を解決する形で登場したのが勤怠管理システムであり、近年、多くの企業が導入しているのが、クラウド勤怠管理サービスです。

タイムカードのようにだれでも打刻することは難しいため、正確な労働時間を把握できます。

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勤怠管理システムのメリット

勤怠管理システムの導入で得られるメリットは次のとおりです。

  • コスト削減
  • 法令遵守の強化
  • 不正打刻防止
  • 業務効率アップ
  • 労務管理の迅速化
  • 給与計算との連携

コスト削減

勤怠管理システムの導入により、手動による勤怠管理にかかる時間と労力を削減可能です。

月末の集計作業が自動化されることで、人事総務担当者の負担が軽減され、他の重要な業務に集中できるようになります。また、正確な労働時間の記録により、過剰な残業手当の支払いを防げるため、長期的なコスト削減にもつながります。

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法令遵守の強化

労働基準法にもとづく労働時間管理は企業にとって必須です。

勤怠管理システムは、法定労働時間や残業時間、休憩時間を自動的に計算し、法令に違反しないように管理できます。勤怠管理システムには、自動的に1日8時間、週40時間を超える労働を検出し、アラートを出す機能があります。これにより、企業はコンプライアンスリスクを低減し、労働基準監督署の監査に対する準備も万全となるでしょう。

不正打刻防止

勤怠管理システムの打刻方法には静脈・指紋認証といった生体認証システムを活用したものや、顔認証システムを活用したものがあります。これならば本人以外の打刻は不可能なので、不正打刻を完全防止できます。

また「GPS打刻機能」では打刻と同時に位置情報も記録してくれるので、外回りの多い営業部門での不正打刻防止が可能です。

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業務効率アップ

勤怠管理システムにより作業効率がアップするのは、人事総務部門だけではありません。

多くの勤怠管理システムではスマートフォン専用のアプリを提供しており、外出先や自宅からの打刻に対応しています。つまり、従業員が出退勤打刻のためにいちいち出社・帰社したり、翌日打刻修正依頼を出したりする必要がなくなります。

これらの業務効率化を総合して1日5分でも時間を短縮できれば、1年間で2.5日間も時間を短縮できます(1日8時間労働、年間休日120日の場合)。

労務管理の迅速化

勤怠管理システムは、従業員の出退勤状況をリアルタイムで把握可能です。労務管理者は迅速に問題を発見し、対応できるようになります。

また、データは自動的に集計され、月次や年次のレポートを簡単に作成できるため、労働時間の傾向分析や人員配置の最適化にも役立つでしょう。特定の時期における残業時間の増減を分析し、適切な人員配置や労働時間の調整も可能になります。

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給与計算との連携

多くの勤怠管理システムは、勤怠データを給与計算ソフトに連携可能です。つまり、勤怠管理から給与計算まで一連の作業の自動化が可能になります。

ただし、導入する勤怠管理システムによって連携可能な給与計算ソフトや連携方法が異なるので、選定のときは確認が必要です。

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働き方による勤怠管理の注意点

現代の働き方は多様化しており、従来のオフィス勤務とは異なるスタイルが増えています。さまざまな働き方に対応するための勤怠管理の注意点を解説します。

パート・アルバイト

パートやアルバイトの勤怠管理においては、シフト制を採用する企業が多いため、シフトの調整や確認が重要です。勤務時間が不規則になりがちなパート・アルバイトは、シフトの変更や追加が頻繁に発生することが多いです。そのため、従業員が利用しやすい連絡手段を整備し、システム導入を含め迅速に対応できる体制をつくることが求められます。

また、労働基準法にもとづき、パートやアルバイトも正社員と同様に残業時間や休憩時間を管理する必要があります。とくに、週20時間以上働く場合は、社会保険の適用が必要となるため、労働時間の記録を正確に行うことが重要です。

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テレワーク

テレワークの勤怠管理は、従来のオフィス勤務とは異なる課題があります。テレワーク環境で、勤務開始・終了時間を管理するためには、クラウドの勤怠管理システムを利用するとよいでしょう。クラウドシステムであれば、従業員は自宅からでも正確な勤怠記録が可能です。

労働時間の管理に関しては、通常の勤務時間を設定し、定期的に従業員とコミュニケーションを取ることが重要です。たとえば、1日の業務時間を9:00から18:00と定め、毎朝のチェックインミーティングを行うことで、働きすぎやサボりの防止につながります。

また、テレワークではコミュニケーションの不足が問題となることが多いため、定期的なWeb会議やチャットツールを活用し、チーム全体で情報共有を図ることが重要です。これにより、リモート環境での孤立感を防ぎ、従業員同士の連携がスムーズに進むようになります。

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扶養控除内希望者

扶養控除内での勤務を希望する従業員に対する勤怠管理は、税制上の要件を理解したうえで行うことが必要です。「扶養控除内」には、所得税が発生する「103万円の壁」や、配偶者の社会保険の扶養から外れる「130万円の壁」などがあります。そのため、従業員の希望に反しないように、厳密な労働時間の管理と調整が求められます。賞与や特別手当なども年収に含まれるため、これらの支給タイミングや金額についても注意が必要です。

従業員が希望する勤務時間と所得額を明確に把握し、その範囲内でシフトを調整することが重要です。とくに、年末に向けては所得が増加する傾向があるため、年間の収入見込みを随時確認し、必要に応じてシフトを調整することで、扶養控除内に収まるよう管理します。勤怠管理システムを利用して、従業員の勤務時間や給与をリアルタイムで確認できるようにすることで、迅速かつ正確な調整が可能となるでしょう。

また、扶養控除内希望者は家庭の事情や他の収入源とのバランスを考慮する必要があるため、柔軟なシフト調整も求められます。従業員とのコミュニケーションを密に取り、常に最新の状況を把握することで、安心して働ける勤怠管理が行えるようになります。

フレックスタイム制

フレックスタイム制は、従業員がみずからの勤務時間を柔軟に設定できる制度で、ワークライフバランスの向上や生産性の向上に効果的です。基本的なフレックスタイム制は、コアタイムとフレキシブルタイムに分かれています。コアタイムは、全従業員が勤務しなければならない時間帯で、フレキシブルタイムは、始業や終業の時間を従業員が自由に選べる時間帯です。

フレックスタイム制の導入にあたっては、勤怠管理システムの導入が不可欠といえます。従業員が自由に出退勤時間を設定できるため、その記録を正確に管理し、法定労働時間内に収める必要があるからです。フレックスタイム制では、月間の総労働時間を基準に管理し調整することが必要となります。

また、フレックスタイム制では従業員同士のコミュニケーションが取りづらくなることがあるため、定期的なミーティングや情報共有の場を設けることが推奨されます。グループウェアやWeb会議ツールを活用し、リモートでもリアルタイムで連絡が取れる環境を整備することが大切です。これにより、プロジェクトの進行状況や業務の問題点を早期に把握し、迅速に対応可能となります。

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